- From: Taro Yamamoto <tyamamot@adobe.com>
- Date: Fri, 13 Oct 2023 09:46:42 +0000
- To: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>, 木田泰夫 <kida@mac.com>
- CC: JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
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(コメントします) たしかに、活字も写植もデジタルフォントも、定型化された文字を複製するための技術であるという意味では、被写体のサイズがどんなに大きくても、小さくても、被写体の大きさに関係なく複製するという意味では、写真・カメラと同じです。被写体の大きさと無関係の何か別の大きさの「サイズ」には、その意味では、何の意味もありません。同様に、一般化した原理としては、「文字サイズ」もまた、具体的な文字の形の寸法でも何でもないので、文字との関係では、意味がない、と言えるでしょう。フォントを利用する際に、文字サイズは拡大・縮小率を計算するために利用されはしますが。 他方で、文字サイズが指定される実際について言えば、印字結果の文字の大きさが、常識的に想定される許容範囲内で、指定した文字サイズとほぼ同じ大きさになることが期待されます。そして、大多数の日本語の書体は、仮名や漢字が全角正方形の範囲内にデザインされるだけでなく、漢字の場合には約90%以上の領域を文字の形が占有します。そして、その仮想ボディの各辺及び中心線は、行長や印字位置の指定の基準位置となります。そのため、日本語の印刷用の文字は、印字されるべき正方形の大きさを文字サイズと見做して指定する、何世紀にもわたって採用されてきた文字サイズの指定方法と、比較的良く整合していると言えます。もちろん、書体のデザインごとの大きさのバラツキはありますが、欧文の場合よりも、そのバラツキは軽微です。 * 文字の外枠について,行送り方向(縦組でいえば左右サイズ,横組でいえば天地サイズ)が文字サイズという言い方をしています.これは,単純にラテン文字組版に従ったもので,和字については,なんら合理性はありません. それは違うのではないでしょうか。 たしかに、正方形のボディの大きさを文字サイズの指定に用いるのは、欧文の活字に由来します。emは小文字のmの活字のボディが正方であったために、そう呼ばれ、行長をpicaの大きさのemの数で指定することも行われています。しかし、写真植字が導入されて以後、物理的なボディの制約が無くなったため、欧文書体の文字の大きさは、それまで以上に多様になりました。そのため、他のところで議論があったように、欧文では同じ文字サイズを指定しても、書体による大きさのバラツキがきわめて大きくなりました(下図参照)。 図1 同じ文字サイズを指定して異なる欧文書体を用いて組んだ例。 [cid:image002.jpg@01D9FE05.9982AD70] 指定された文字サイズと、実際に印字される文字の大きさとの差は、和文の方がはるかに小さいのです。もちろん、日本の既存の書体でも、字面の大きさの違いによって、文字サイズや行間の指定を微調整する必要が出てくる場合はあるでしょう。しかし、欧文ほどにバラツキは大きくはありません。 日本語フォントの場合でも、プロポーショナル書体であれば、全角の仮想ボディから字送り方向にも行送り方向にも大きく食み出たり、極端に広かったり、背が高かったり、逆に狭かったり、低かったりする文字をデザインすることは可能ですし、現実のプロポーショナル日本語フォントでも、従来の正方の書体よりは、指定した文字サイズと実際に印字される文字の大きさとの乖離は大きくなるでしょう。 しかし、だからといって、指定した文字サイズと印字される文字の大きさとの関係を一定の範囲内に抑えて書体をデザインする、という「常識」が書体デザイナーにあれば、大きな問題にはならないはずです。もし、文字サイズが完全に無意味になるとすれば、それは、書体デザイナーが、文字サイズと一致する仮想的な正方形を完全に無視して、好き勝手な大きさでデザインを始めた時です。しかし、これは、現実的ではありません。10 ptで文字サイズを指定しても、実際に印字される時に、文字のの大きさがすべて24 pt以上になる、というようなフォントは実際には実用的でなく使えないからです。 原理的に一般化して考えればまったく無意味な文字サイズというものを、現実的に役に立たないものにしてしまうかどうかは、どのような大きさで文字をデザインしフォントに実装するかということに依存しています。そして、現実には従来の正方形の仮想ボディに基づく日本語フォントでは、漢字の場合、ほぼそのボディの90–95%あたりの大きさでデザインされています。そして、長体や平体の日本語フォントは普通は字送り方向にだけcondensedにデザインされてきました。 他方で、金属活字にあった物理的なボディが無くなって以後、欧文フォントの場合には、プロポーショナルなので文字によって字送り方向の字幅が異なるだけでなく、字送り方向と直交する方向で寸法を制約するものも無くなってしまいました。Cap. heightやx-heightは書体デザインに依存するので、文字の大きさを絶対的に制約するものではありません。欧文において絶対的な基準として残っているのはベースラインだけではないでしょうか。その意味で、欧文におけるemの概念、そして正方形の大きさを文字の大きさと見做す文字サイズの指定方法は、機能的ではなくなっていると言えます。(しかし、先に述べましたが、これに対する解決策としてCap. heightやx-heightを文字サイズとする提案は1980年代に一部のCRT写植機で実装はされましたが、広く受け容れられることはありませんでした)。 * というのは,文字を並べる場合,文字サイズは,あまり関係してきません.その文字の字詰め方向の幅(字幅)がわかればいいわけで,文字サイズはわからなくてもよい.ましてや,行送り方向では,ベタ組ということはありませんので,文字の行送り方向の文字サイズはわからなくてもよいのです.何が必要かというと,文字の中心から(中心でなくてもよい,決まっていればよいが,位置が異なれ,位置計算はやや変わってくる),次の文字の中心までの距離が指定されていればよい.つまり文字サイズは計算に入れる必要はない. これは、まさにそのとおりだと思います。やや逆説的に感じられるかもしれませんが、このことは、(極端な場合を除けば)必ずしも上で述べたことと矛盾してはいません。つまり、日本語書体のデザインは字送り方向にはプロポーショナルとしての可能性が残されていて、同時に、文字サイズとは独立に、字送り方向と直交した方向においても、今までのように暗黙のボディの枠内に囚われることのない、自由な書体デザインの可能性が残されていると考えられるからです。 山本
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Received on Friday, 13 October 2023 09:46:55 UTC