RE: 行長は全角の整数倍であらねばならないか

(コメントします)
> 1 どのような状況の中で内を定義するのか.フォントとして定義されるのか,個々の文字か,あるいは文字グループか.

完全なプロポーショナルでない等幅の漢字・仮名・日本語の約物類グリフを含む文字が対象で、それを含むフォントが、フォント全体をについての附属的情報として持つものと理解しています。

> 2 それは何を説明するために必要とするか.また,その説明はjlreq-dで出てくるのか.

JLREQ-Dでいわゆる「長体フォント」(つまり一般的にはcondensedまたはexpandedな正方でない基本的に等幅の日本文字グリフを含む日本語フォント)の組み方について説明する場合には、全角の概念の一般化が必要と考えます。それについて述べる必要がないのであれば、必要ないということになります。

> 3 変形は対象になるのか,ならないのか.なるとすれば縦組と横組で変わってくるのをどう説明するか.それから斜体は,どう考えるか.(斜体はいろいろ考えがあり,異論がでそう.私の気持は,あまり近づきたくない.)

変形にも適用することができますが、既存のフォントに変形を掛ける場合には、フォント側の附属情報ではなく、組む側がその情報(例えば正方の全角の情報)を上書きして再設定することになるのではないでしょうか。残念ながら、日本語フォントの従来の経験は、この点についてまだ深く議論されてこなかったと理解します。とはいえ、次のことは言えると私は考えます。

縦と横とで同じcondensation/expansionの比率(例えば-20%、写植風にいうと 横では長体2号、縦では平体2号の場合)は、その一般化された「全角」情報は、仮想ボディが矩形であるため、縦・横同率のcondensed/expandedフォントの場合と同じく、一組だけで足ります。(現時点では、OpenTypeフォントの'ideographic em box'では異なる変形率の日本文字の仮想ボディ(矩形)が存在する場合には対応していませんが、そういう場合はこれまでのcondensed/expandedフォントには存在しないはずです。また、現時点では縦組に対応したcondensed/expandedグリフを持つ日本語フォントですら、いまだ存在していません)。

加えて、斜体は、本文における組み方が確立しているとは言えないのではないでしょうか。そのため、ご指摘のとおり、触れる必要はなさそうに思えますが。

> 4 変形が対象となれば,半角カタカナも,その字幅は,上でいう“全幅”となると考えられるか.

半角カタカナも本文における組み方が確立しているとは言えず、ここでのcondensed/expandedや長体の議論では、触れる必要がないように思えます。

> 5 和文フォントには,等幅のアラビア数字を含んでいる.この場合の“全幅”とは何か.

日本文字に対するcondensed/expandedは日本語組版でしか通常用いない全角英数字にも適用されると考えられるため、拡張された「全角」においては、condensedの場合であれば、condensedの字幅を持ち、字送り方向と直交する方向のボディの両辺の距離は、文字サイズと等しくなると考えます。

> 6 和文フォントには,プロポーショナルなラテン文字を含んでいる.この場合の“全幅”とは何か.

この「全角」(あるいは「全幅」)概念は日本文字(及び主に日本文字とだけ用いられる文字)以外には適用されないでしょう。したがって、通常の正方形の全角の情報について、字送り方向と直交する方向のボディの両辺の距離=文字サイズの情報として解釈するの意味しか持たなくなると考えます。字送り方向については、個別のプロポーショナルの各グリフの仮想ボディが適用されます。(プロポーショナルラテン文字の文字サイズは、全角の寸法に等しいですが、字送り方向については、個別のグリフに依存することは、現在の日本語フォントの場合でも同じです)。ただし、日本文字の全角との比例でスペーシング量を決める場合には、日本文字の全角情報が参照されるでしょう。

> 7 和文フォントにも数は少ないが,プロポーショナルなフォントがある.この場合の“全幅”とは何か.

その「全角」(あるいは「全幅」)が、字送り方向と直交する方向のボディの両辺の距離=文字サイズの情報を持つことは変わらないでしょう。
しかし、字送り方向については、先にも述べましたが、そのプロポーショナルのデザインに依存して、そのようなグリフをスペーシングする場合に、最適な比率のcondensed/expandedの比率の矩形の仮想ボディを想定して、その比率が設定されることになるでしょう。それがcondensedであれば、正方よりも字詰め方向には狭く、expandedであれば、正方よりも広く設定されるはずです。正方のままで良い場合もデザインによってはあるはずです。そして、プロポーショナルのフォントにおいては、日本文字のグループのグリフが等幅であることを想定する必要がないため、その拡張された「全角」の情報が持つ字送り方向の寸法値と、まったく同じ寸法の仮想ボディをもつグリフが含まれている必要もまたないはずです。

> 8 OpenTypeでいう二分字形,四分字形の場合の“全幅”とは何か.

従来の日本語フォントに関しては、正方形の全角に対して、字送り方向の幅が0.5または0.25の幅の仮想ボディを意味します。文字サイズとの相対的な長さを示す情報としては、従来と変化はないと考えられます。ただし、字送り方向について、拡張された「全角」との関連では、字送り方向については、その拡張された「全角」(または「全幅」?)に対する相対的な比率(0.5, or 0.25)の幅を表すことになると考えられます。

ここでの「一般化した全角」(その呼び方を変えるか変えないかは別にして)の概念は、日本語フォントにおけるcondensed/expandedフォントを考える上で必要となると考えられますが、必ずしも、従来、日本語フォントの開発においては十分な数の実装上の経験が蓄積されているわけではありません。従って、今後さらに議論が深化することで、さらに修正・変化・拡張されることになるかもしれません。

> 9 “全幅”と二分,四分という概念とは,どう関係するか.

上記のとおりだと考えます。

> こう考えてくれば,それぞれの文字が保持して字幅(“文字の外枠”の字送り方向のサイズ)を空間を空けず(ベタ組)で一般に文字を配置する,というだけでは説明できないか.

それだけでは、個別のグリフの字幅情報を超えて、日本文字のスペーシングを行う際のスペーシングに必要な情報が得られないため、condensed/expandedといった多くの日本文字グリフが(正方全角の文字の通常のフォントの場合と同様に)等幅でありながら、主要な日本文字が正方全角でないグリフを含むフォントについては、全角概念の拡張が必要になるのではないか、という主旨だと理解しています。

> さらにいえば,一般化した“全幅”で二分,四分という定義を相対化したいということが最初の目的ではなかったか.その目的と,現在の説明は変わってきている.

主要な日本文字のグリフがcondensed/expandedのフォントを用いた場合に、全角が正方であることを前提にしていては、正しく主要な日本文字グリフをスペーシングができないため、その目的で、附属的な一般化された「全角」情報が必要になるのだと理解しています。そのようなフォントを用いる場合には、一般化された「全角」情報から、スペーシングにおける二分や二分四分の情報は、派生的に計算・取得される必要があると思います。

山本

Received on Monday, 9 October 2023 07:55:19 UTC