文字サイズが異なる約物が連続した場合の処理

木田 様
みなさま

 小林 敏 です.

文字サイズなどが異なる約物が連続した場合の処理

約物が連続し,字間の調整を必要とするケースは,大きく分けると,以下の3つがある.
A 句読点や括弧類(以下,句読点と括弧類を併せて括弧類等という)が連続する場合
B 中点類と括弧類等が連続する場合
C 全角スペースと括弧類等が連続する場合

BとCは,原則として,中点類や全角スペースの前後に配置される括弧類等の後ろ又は前にあるアキを削除して配置すればよいので,文字サイズ等の差異があっても問題とはならない.なお,プロポーショナルの中点類でアキがない場合も,同様に,その前後に配置される括弧類等の後ろ又は前にあるアキを削除すればよい.

問題はAである.ただし,Aは以下の4つのケース(実例が考えられるのは3つ)があるが,問題はaのケースだけである.(なお,句読点は“終わり”に含める.)
a 終わりの括弧類等の後ろに,始めの括弧類等が連続
b 始めの括弧類等と,始めの括弧類等が連続
c 終わりの括弧類等と,終わりの括弧類等が連続
d 始めの括弧類等の後ろに,終わりの括弧類等が連続

dは,実例はほとんどない(あれば2つの括弧類等の字間をベタにすればよい).bとcは,前又は後ろの括弧類等のアキを削除すればよいので,文字サイズ等の差異があっても問題とはならない.

以下は,aに限り,その処理を考えてみる.aの場合は,前又は後ろの括弧類等との間にアキを確保する必要になり,文字サイズ等の差異があった場合,そのアキの大きさが問題になる.

なお,aのアキを詰めない処理(全角アキとなる)は,bやcの処理を行わない(二分アキとなる)と比べると,いくぶん,見た目のバランスの悪さは低いと考えられる.ベタとアキのある場合の差異は誰でもが気がつくが,アキの大きさは,注意しないと気がつかないこともある.例えば,早川書房の書籍では,bやcの調整は行っている(ベタにする)が,aの調整は行わないで,全角アキを許容している.(このことからいえば,aの調整したアキの量は,ある意味,許容範囲があるので,厳密に決めなくてもよいのかもしれない.)

文字サイズ等が異なる場合のaの調整では,前後に配置する括弧類等の後ろ及び前にある括弧類等のアキ(一般に二分)を削除,その間のアキを決める必要がある.このアキを決める基準としては,以下のような方法が考えられる.(なお,プロポーショナルの括弧類等で,アキを確保しない括弧類等を含む場合は,字間の調整は行わない.両方ともにアキがない場合はベタとなり,片方にアキがない場合は,アキのある括弧類のアキをそのまま維持する.)

1 前に配置する括弧類等の文字サイズを基準とした二分アキ,又は,前に配置する括弧類等の文字の後ろにあるアキ(例えば三分)とする.つまり前に配置する括弧類等を基準にする.(これは,書籍等で本文中に括弧書きの後ろに,文字サイズを1段階小さくした括弧書きが連続するケースが一般的であったことによるものと思われる.JIS X 4051で規定する方法は,この考え方にしたがっている.)

2 その段落の文字サイズの二分とする.前後に配置する括弧類等の文字の後ろにあるアキが小さい場合(例えば三分)も同様とする.

3 前に配置する括弧類等の文字の後ろのアキの1/2,及び後ろに配置する括弧類等の文字の後ろのアキ1/2とする.例えば,括弧類等の文字の前後のアキが二分で,前が10ポイント,後ろが12ポイントの場合は,アキは5.5ポイント.文字サイズは両方とも12ポイントであるが,片方の文字のアキが三分の場合は,6/2+4/2=5の計算から5ポイントとなる.両方の文字の平均をとるという方法である.

4 文字サイズの大きい方又は文字のアキの大きい方を基準とする.例えば,前後のアキが二分で,前が10ポイント,後ろが12ポイントの場合は,アキは6ポイント.文字サイズは両方とも12ポイントであるが,片方の文字のアキが三分の場合は,アキの大きい方を基準にして,アキは6ポイント.両方の文字のアキが三分の場合は,4ポイント.

前述したように,aのケースのアキは,ある意味で,許容範囲があるので,1-4のいずれでもよいと考えてもよいが,3又は4が,ある種の合理性を持っていると思われる.見た目では,優先的な(つまり大きな文字サイズ)の文字のアキが確保される,ということを考えれば4ということになろう.

Received on Tuesday, 5 October 2021 02:53:51 UTC