Re: EPUB 日本語組版拡張仕様の試案を公開しました

村上です。

CSS3の論理プロパティ(margin-before など)の議論について、追記です。

W3C CSS WG 内で、CSS の生みの親であるホーコン・リー氏(Opera CTO)が
これまで論理プロパティに抵抗していたのですが、それが変わってきました。

論理プロパティを実のプロパティではなく、書字方向によって物理プロパティに
変換されるエイリアス(direction-dependent aliases, DDAs)としてなら
メモリーも消費しないので良いだろうと:
http://lists.w3.org/Archives/Public/www-style/2010Jun/0006.html
CSSにエイリアスのメカニズムを定義するのが正しいアプローチだろうとも。
私もまったく同じ考えです:
http://lists.w3.org/Archives/Public/www-style/2010Jun/0079.html

これで、CSS の標準に論理プロパティが入るのは確実になったと思います。

今、議論になってるのは、DOM でエイリアスである論理プロパティにアクセス
したときにどうなるかということです。エイリアスだからといって、DOM では
使えないのでは不便なので、DOM でアクセスしたら、実プロパティ
(物理プロパティ)へと変換されてアクセスできるようになると思います。
関心のあるかた、直接議論に参加したい方は www-style ML をチェックしてください。
http://lists.w3.org/Archives/Public/www-style/2010Jun/thread.html#msg3

-- 
村上 真雄 (MURAKAMI Shinyu)
http://twitter.com/MurakamiShinyu
Antenna House Formatter:
http://www.antenna.co.jp/AHF/
http://www.antennahouse.com


MURAKAMI Shinyu <murakami@antenna.co.jp> wrote on 2010/06/01 17:54:16
> 村上です。
> 
> 村田真さんと私による EPUB 日本語組版拡張仕様の試案を公開しました:
> 
> EPUB仕様の日本語組版拡張を目指して(Version 0.8)
> http://nadita.com/murakami/epub/epub_JapaneseTextLayout_ja.html
> 
> この試案で、最も議論になるだろうところは、次のところかと思います。
> 
> 3. 縦書きと横書きに共通のスタイル指定
> 3.1 論理的方向指定
> 3.2 論理的プロパティ
> 3.2.1 論理的 margin プロパティ: margin-before, margin-after, margin-start, margin-end
> 3.2.2 論理的 padding プロパティ: padding-before, padding-after, padding-start, padding-end
> 3.2.3 論理的 border プロパティ: border-before, border-after, border-start, border-end, etc.
> 3.2.4 論理的 width/height プロパティ: logical-width, logical-height, min-logical-width, etc.
> 
> CSS3 Text Layout 仕様で標準化を目指している論理的プロパティを使う
> としています。
> 
> この議論については前にも紹介しています:
> http://lists.w3.org/Archives/Public/public-html-ig-jp/2010May/0020.html
> 
> また、今も www-style@w3.org ML 上で議論が続いています:
> 
> Re: [css3-text-layout] New editor's draft - margin-before/after/start/end etc. 
> http://lists.w3.org/Archives/Public/www-style/2010May/thread.html#msg33
> http://lists.w3.org/Archives/Public/www-style/2010Jun/thread.html#msg3
> 
> ホーコン・リー氏と同じく CSS 仕様に margin-before, margin-after,
> margin-start, margin-end, ... などたくさんのプロパティを追加するなんて
> 無茶だと思う人もいるかと思います。しかし、これが CSS 標準で縦書きを
> 使えるものにするためには不可欠のものだと私は思っています。
> 
> (縦書きだけではなく、アラビア語やヘブライ語のような右から左に書く
> 言語のスタイル指定においても、絶対方向指定しかできない今の CSS 仕様は
> 問題があり、そのために *-start/end についてはずっと前から提案されていて、
> WebKit と Mozilla では独自拡張として実装されてます)
> 
> 最近出てきている縦書き対応のEPUBビューワーなどを試すと、
> どれも縦書きモードでは margin-top が右を指すという90度回転方式
> がとられていて、このままではそのような非標準CSS実装が、日本だけで
> ひろまるということが起きそうです。
> (EPUB仕様は XHTML と CSS を使うものなので、そのビューワーは、
> Webブラウザと同じで (X)HTML+CSS の組版エンジンからなります)
> 
> W3C CSS WG では、margin-top は縦書きだろうが絶対に上を指すという
> ことが前から決定しています。
> (そのことが再確認された3月のCSS WGの議事録)
> [CSSWG] Minutes and Resolutions 2010-03-24
> http://lists.w3.org/Archives/Public/www-style/2010Mar/0539.html
> (この議事録でも、ホーコン・リー氏(howcome)と他の人々による *-start
> などの議論があり、興味深いです)
> 
> ですので、margin-top が右マージンになるような縦書きの実装は CSS 標準
> から外れて問題なのですが、margin-before などが使えない現状では、
> 過渡的な縦書き実装として、やむを得ないものではあると思います。
> 
> そのような縦書き実装のひとつで「ブログ出版局」による実装を最近知りました。
> 公開されているそのドキュメントには、CSSのプロパティの設定を90度回転
> させるということが書かれています。
> 
> ブログ出版局サポートサイト - 本文スタイルの反映(HTML, CSS)
> http://blog.print.cssj.jp/?itemid=197
> 引用:
> 	……また、単に本文が縦書きになるだけでなく、スタイルが90度回転
> 	されます。例えば、<div style="border-top: 1px solid">... のよう
> 	にCSSで上に境界線が指定されたボックスがあった場合、縦書きレイア
> 	ウトでは境界線は右側に表示されます。この規則はテーブルの境界線や、
> 	幅、高さ、マージン、パディング、にも適用されます。そのため、横書
> 	きのスタイル指定の趣旨を壊さずに、縦書きにすることが出来ます。
> 
> これは、現時点で HTML+CSS で縦書きを実現するための、現実的な方法だとは
> 思います。縦書き用に、スタイルシートを、margin/border/padding など方向が
> 関係するところをすべて直して作りなおさなければ、縦書きにできないという
> のであっては、あまりにも不便だからです。
> 
> もしも margin-before など論理的プロパティの標準化ができなければ、
> 90度回転方式の非標準CSS縦書きのEPUB実装が永続化することになります。
> そうするとCSS3の縦書きの標準化は破綻します。
> CSS3 ドラフトの writing-mode プロパティでの縦書きの指定は、
> top/bottom/left/right の方向を変えるということは意図されてません。
> writing-mode: rl-tb (direction: rtl と同じ)で left が右側になったり
> しないのに writing-mode: tb-rl で left が上を指すようになるのでは
> 仕様の整合性がなくなります。
> 
> 私は、margin-before など論理的プロパティが標準化されて、実装も進み
> いずれそれを使ってスタイルシートが書くことが普通になることを
> 願っています。
> 90度回転方式での縦書きは、それまでの過渡的なものとしての役割であれば
> よいなと思います。
> 
> 
> -- 
> 村上 真雄 (MURAKAMI Shinyu)
> http://twitter.com/MurakamiShinyu
> Antenna House Formatter:
> http://www.antenna.co.jp/AHF/
> http://www.antennahouse.com
> 

Received on Thursday, 3 June 2010 04:37:19 UTC