- From: MURAKAMI Shinyu <murakami@antenna.co.jp>
- Date: Tue, 01 Jun 2010 17:54:16 +0900
- To: public-html-ig-jp@w3.org
村上です。 村田真さんと私による EPUB 日本語組版拡張仕様の試案を公開しました: EPUB仕様の日本語組版拡張を目指して(Version 0.8) http://nadita.com/murakami/epub/epub_JapaneseTextLayout_ja.html この試案で、最も議論になるだろうところは、次のところかと思います。 3. 縦書きと横書きに共通のスタイル指定 3.1 論理的方向指定 3.2 論理的プロパティ 3.2.1 論理的 margin プロパティ: margin-before, margin-after, margin-start, margin-end 3.2.2 論理的 padding プロパティ: padding-before, padding-after, padding-start, padding-end 3.2.3 論理的 border プロパティ: border-before, border-after, border-start, border-end, etc. 3.2.4 論理的 width/height プロパティ: logical-width, logical-height, min-logical-width, etc. CSS3 Text Layout 仕様で標準化を目指している論理的プロパティを使う としています。 この議論については前にも紹介しています: http://lists.w3.org/Archives/Public/public-html-ig-jp/2010May/0020.html また、今も www-style@w3.org ML 上で議論が続いています: Re: [css3-text-layout] New editor's draft - margin-before/after/start/end etc. http://lists.w3.org/Archives/Public/www-style/2010May/thread.html#msg33 http://lists.w3.org/Archives/Public/www-style/2010Jun/thread.html#msg3 ホーコン・リー氏と同じく CSS 仕様に margin-before, margin-after, margin-start, margin-end, ... などたくさんのプロパティを追加するなんて 無茶だと思う人もいるかと思います。しかし、これが CSS 標準で縦書きを 使えるものにするためには不可欠のものだと私は思っています。 (縦書きだけではなく、アラビア語やヘブライ語のような右から左に書く 言語のスタイル指定においても、絶対方向指定しかできない今の CSS 仕様は 問題があり、そのために *-start/end についてはずっと前から提案されていて、 WebKit と Mozilla では独自拡張として実装されてます) 最近出てきている縦書き対応のEPUBビューワーなどを試すと、 どれも縦書きモードでは margin-top が右を指すという90度回転方式 がとられていて、このままではそのような非標準CSS実装が、日本だけで ひろまるということが起きそうです。 (EPUB仕様は XHTML と CSS を使うものなので、そのビューワーは、 Webブラウザと同じで (X)HTML+CSS の組版エンジンからなります) W3C CSS WG では、margin-top は縦書きだろうが絶対に上を指すという ことが前から決定しています。 (そのことが再確認された3月のCSS WGの議事録) [CSSWG] Minutes and Resolutions 2010-03-24 http://lists.w3.org/Archives/Public/www-style/2010Mar/0539.html (この議事録でも、ホーコン・リー氏(howcome)と他の人々による *-start などの議論があり、興味深いです) ですので、margin-top が右マージンになるような縦書きの実装は CSS 標準 から外れて問題なのですが、margin-before などが使えない現状では、 過渡的な縦書き実装として、やむを得ないものではあると思います。 そのような縦書き実装のひとつで「ブログ出版局」による実装を最近知りました。 公開されているそのドキュメントには、CSSのプロパティの設定を90度回転 させるということが書かれています。 ブログ出版局サポートサイト - 本文スタイルの反映(HTML, CSS) http://blog.print.cssj.jp/?itemid=197 引用: ……また、単に本文が縦書きになるだけでなく、スタイルが90度回転 されます。例えば、<div style="border-top: 1px solid">... のよう にCSSで上に境界線が指定されたボックスがあった場合、縦書きレイア ウトでは境界線は右側に表示されます。この規則はテーブルの境界線や、 幅、高さ、マージン、パディング、にも適用されます。そのため、横書 きのスタイル指定の趣旨を壊さずに、縦書きにすることが出来ます。 これは、現時点で HTML+CSS で縦書きを実現するための、現実的な方法だとは 思います。縦書き用に、スタイルシートを、margin/border/padding など方向が 関係するところをすべて直して作りなおさなければ、縦書きにできないという のであっては、あまりにも不便だからです。 もしも margin-before など論理的プロパティの標準化ができなければ、 90度回転方式の非標準CSS縦書きのEPUB実装が永続化することになります。 そうするとCSS3の縦書きの標準化は破綻します。 CSS3 ドラフトの writing-mode プロパティでの縦書きの指定は、 top/bottom/left/right の方向を変えるということは意図されてません。 writing-mode: rl-tb (direction: rtl と同じ)で left が右側になったり しないのに writing-mode: tb-rl で left が上を指すようになるのでは 仕様の整合性がなくなります。 私は、margin-before など論理的プロパティが標準化されて、実装も進み いずれそれを使ってスタイルシートが書くことが普通になることを 願っています。 90度回転方式での縦書きは、それまでの過渡的なものとしての役割であれば よいなと思います。 -- 村上 真雄 (MURAKAMI Shinyu) http://twitter.com/MurakamiShinyu Antenna House Formatter: http://www.antenna.co.jp/AHF/ http://www.antennahouse.com
Received on Tuesday, 1 June 2010 08:54:46 UTC