- From: Urayama <urara@peace.ocn.ne.jp>
- Date: Thu, 09 Oct 2025 12:38:09 +0900
- To: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Cc: JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
Received on Thursday, 9 October 2025 03:39:18 UTC
小林先生、皆さま 浦山です。 先日、JLreq-dでは、組版の「読みやすさ」の視点で議論はするが、「美しさ」は取り入れない ことにしました。それに抗うつもりはありませんが、「美しさ」(あるいは「編集者にとって の読みやすさ」)という視点も存在するのではないかとも思っています。 添付したのは、雑誌で組版が美しくないと思われる例です。 右上の講師紹介(「みやけ・ゆたか」で始まる文章)の枠内の文章を見てください。4行目と5 行目の末尾の「。」の位置が微妙にずれています。これは5行目が「ツメ打ち」されている結果 だと考えられます。4行目は普通に組まれていて、たまたま同じ行の「閉じ括弧」と「読点」で 1文字分としたため、それ以降の文字の並びが5行目とほぼ同じ並びになったように見えてい て、余計に「。」のずれが目立ってしまいました。 このずれは編集者の私にとって、とても気になる醜(みにく)さで、組版で何が起こったのか を、文意よりも先に考えてしまいます。これは組版の「読みやすさ」の問題でもあり、「美し さ」の問題でもあるように思っています。 ついでにいえば、この枠(文字の背景を白く抜いた部分)の大きさが、文字組みの領域とほぼ 同じである点も、文字が読みにくく、美しくありません。せめて、文字の領域と枠との間に、 少なくとも行間以上の空きを設けるべきと考えます。 (以下、蛇足) 以下は、かつて私が経験したことです(長文なので、読み飛ばしていただいてかまいませ ん)。 ある零細出版社では、編集者が組版までこなしていました。その編集者は、ある著者の専属 パートナーとして原稿のとりまとめを担当していて、その著者の本を出すにはその編集者を経 由するしかありませんでした。ところが、その編集者には組版の知識と経験が明らかに不足し ていて、たとえば図の説明文と囲みの中の文字サイズを、本文より1〜2級も大きく設定してい ました(本文13級、囲みの中の文字14級、図の説明文15級)。そればかりでなく、書籍1冊分の 文字に関して、33種類のフォントが使われていました。その出版社では、パソコン1台を複数の 編集者が共有しており、別の編集者が使用したフォントのまま、その編集者が文字を打ち込ん でいたので、知らず知らずのうちに文字フォントの種類が不統一になっていたのが原因でした (その編集者も不統一に気がつきませんでした)。最終的には、その編集者がつくった組版 データで印刷することはできず、別の印刷所で、囲みの文字や図の説明文を12級に下げたり、 フォントの種類を整えてもらったりして、印刷・製本・出版まで持っていきました。そのこと をその編集者に伝えたところ、ただ怒っているだけでした。
Received on Thursday, 9 October 2025 03:39:18 UTC