Re: 10.1 日本語組版の読みやすさ

Urayama 様
みなさま

 小林 敏 です.

“読みやすさ”と“美しさ”は,関係が深いと思います.ただ,その関係をむつかしく,“読みやすさ”は,ある程度,客観的にものが言える(現状は,とてもそう言えることは多くない)が,“美しさ”というと,そうではないという気持もあり,そういわないだけだと思っています.

ところで,浦山さんの挙げていただいた例は,私もいま悩んでいて,どうしたもんだろうと考えています.つまり,それは行末の句読点や括弧類の配置です.これには,いくつかのやり方がある.

1 ブラ下ゲ組で,行末の約物の後ろは行の調整処理でベタにしてよい.この場合,3つの行末が発生します.
 1)行末に全角の約物
 2)行末に二分の約物
 3)ブラ下ゲの句読点

2 行末の約物は全部二分の約物

3 行末の句読点はすべてブラ下ゲ

1の例は多いが,1をきらい,2が出たのでしょう.

まず,前提の考え方

行頭は揃っていないと気持が悪い.注意が行き届くから.
行末は,それほどでもない.こうしたことから1が行われているものと考えられる.というのは,行末は,それほど注意が行き届かない.横組よりは縦組の方が,より注意が行き届かないのでは,と私は思っています.

ここまではいいとして,私が問題にしていることは,行の調整処理で行末の約物を調整する場合,二分詰めるといういう選択肢だけです.活字組版では,材料の問題と,縦組にかぎれば行の調整処理の調整量としては二分が多かった.ですので,それでよかった.

しかし,コンピュータ組版や,いま我々が問題としているデジタルテキストでは,行の調整処理の調整量としては,二分ということにはならないで,さまざまな値になる可能性がある.

とろで,注意が行き届かない,という考え方からいえば,この行末の約物の調整量は二分限りでなくてもよいのではという問題です.こんなことを言う人は現在は私くらいだけでしょう.で,悩んでいるんのです.どう思いますか?

浦山さんが挙げていただいて例は,枠があるので,目立つが,枠がない場合,どうなんだろう.許容できないか? という問題でもある.

  Urayama さんwrote

>先日、JLreq-dでは、組版の「読みやすさ」の視点で議論はするが、「美しさ」は取り入れないことにしました。それに抗うつもりはありませんが、「美しさ」(あるいは「編集者にとっての読みやすさ」)という視点も存在するのではないかとも思っています。
>
>添付したのは、雑誌で組版が美しくないと思われる例です。
>
>右上の講師紹介(「みやけ・ゆたか」で始まる文章)の枠内の文章を見てください。4行目と5行目の末尾の「。」の位置が微妙にずれています。これは5行目が「ツメ打ち」されている結果だと考えられます。4行目は普通に組まれていて、たまたま同じ行の「閉じ括弧」と「読点」で1文字分としたため、それ以降の文字の並びが5行目とほぼ同じ並びになったように見えていて、余計に「。」のずれが目立ってしまいました。
>
>このずれは編集者の私にとって、とても気になる醜(みにく)さで、組版で何が起こったのかを、文意よりも先に考えてしまいます。これは組版の「読みやすさ」の問題でもあり、「美しさ」の問題でもあるように思っています。
>
>ついでにいえば、この枠(文字の背景を白く抜いた部分)の大きさが、文字組みの領域とほぼ同じである点も、文字が読みにくく、美しくありません。せめて、文字の領域と枠との間に、少なくとも行間以上の空きを設けるべきと考えます。
>
>(以下、蛇足)

苦労していますね.

Received on Thursday, 9 October 2025 05:26:30 UTC