RE: 文字集合の独立性


> このAとBのせめぎ合いが,1949年“当用漢字字体表”以来,続いてきたわけですが,それに決着を付けたのが,“表外漢字字体表”だったわけです.

『常用漢字表』が1,945文字から2,136字に拡張される際(2010年)、多くの場合、追加される文字は表外漢字の内、出現頻度の次に高い文字から選択されるため、『表外漢字字体表』から文字が選択されて追加されることになりました。その場合、『常用漢字表』に追加されると、「表内」になるため、字体を適宜それまでの表内漢字と同様の簡略化された字体を採用した上で表内に取り込むべきだ、という意見がありました。この方法では、今後『常用漢字表』に文字が追加される度に、いわゆる康煕字典に準拠した字体から、簡略化された字体にその代表的な字形が変わる文字が、すべての場合ではないにせよ、多くの場合に出現することが予想されました。JIS X 0213に含まれる、該当するそれまで表外漢字だった文字の例示字形も変更する必要性も、予想されました。このように同じ文字が、『常用漢字表』が拡張される度に、その代表字体が猫の目のようにコロコロと変転することは、日本語の文字による情報交換の信頼性を毀損するのではないか、という危惧を、情報機器における文字による情報交換に関わる多くの人々が共有していたことを記憶しています。

幸いなことに、結果的に『表外漢字字体表』に含まれていた文字が新しい『常用漢字表』に追加された場合でも、いわゆる康煕字典の字体が維持されました。多くの関係者がこのことについて正しい理解を持つことができた結果だったと思います。

>(ただ,フォントによっては,山本さんの画像に示した“JIS 1990”がデフォルトで,IVSを使用しないと“JIS 2004”字形にならない文字があり,現在も両方の字形が出版物では使用されています.私の観察によれば,2つの比率は半々かな(当然,1冊の本の中でも別の漢字ですが混用されている例も多い).

Adobe-Japan1のグリフ集合に基づいたフォントの場合には、JIS 2004の例示字形に基づいた字形を持つフォントは、慣例的にフォント名の末尾に”N”を付けている場合が多くあります。例えば、「小塚明朝 Pr6N R」というように。なお、JIS X 2004で例示字形が変更された文字の範囲内で、Adobe-Japan1が含むグリフの内で、JIS 2004(つまりフォント名の末尾に"N"が付いたフォント)とJIS 90対応フォントのグリフとの間で異なるグリフとして区別される数は168に上っています。参考まで。

山本

Received on Wednesday, 19 June 2024 05:19:52 UTC