RE: 文字集合の独立性

小林 様

> 問題は,“JIS X 0213”で包摂しているといい,“常用漢字表”で,“使用することは差し支えない”という言い方が同じかどうか,という解釈の問題だと思います.

『常用漢字表』とJIS X 0213その自体は別のものなので、私の個人的な考えですが、同じことを言っているわけではないと考えます。

> ところで,“謎”は,表では2点しんにゅうであるが,1点しんゅうで印刷されていれば,それでよいということについて,“字体の許容”という言い方をしています.これと“使用することは差し支えない”は同じかどうかという問題でもあります.

同じことを言っているわけではないと考えますが、どちらも「使用することは差し支えない」という実際上の便宜的な効果を与えている点では共通していると考えます。

> ですので,山本さんの資料の“JIS 1990”の字形での表示があった場合,それは,“JIS X 0213”では,規定された通りの字形と考えてよいが,“常用漢字表”に規定された通りの字体(“通用字体”)かといえば,“常用漢字表”で“通用字体の扱いに字体上の差異がある”といっているのであるから,“JIS 1990”の字形は,“常用漢字表”に規定された通りの字体(通用字体)ではないと言えるのではないか.

通用字体とは異なると考えます。

> ただ,“情報機器に搭載されている印刷文字字体の関係で”使えない場合は,それはそれでよい,といっているだけだ,という考え方が出る可能性があるということです.言い換えれば,通用字体ではないが,ない場合は,使ってもいいよ,といっているのではないか,そこに包摂とは意味の違いがあるのではないか,ということです.

通用字体でない場合でも使用が差し支えない場合がある、ということを言っているのだと考えます。

> これまでの,歴史的ないきさつがあるので,“JIS X 0213”と“常用漢字表”で,できるだけ一致させるために苦労しているなあ,と思います.それはそれでやむをえないと思います. 

『常用漢字表』は規範的(prescriptive)な文書ですが、JIS X 0213の原案作成は比較的記述的(descriptive)なアプローチでなされたと私は感じています。その意味では、両者は異なる性格をもつ文書です*。ただし、どちらも我が国で存在し参照され利用されている以上、JIS X 0213に含まれる『常用漢字表』に対応する文字に包摂される字体(glyphsあるいはglyphic subsets)が、『常用漢字表』では使用が差し支える字体になってしまう状況を避ける必要が生じ、そのために「付」のように書いて事前にそれを予防したのではないかと、推測します。

>「常用漢字表をJIS X 0213の《きれいな》サブセットと見做しえる」

上でも述べましたが、一方は規範的であることを意図した「字体表」であり、他方は、日本語の情報交換に必要と考えられる文字について、一つまたは複数の字体を包摂し、コードを割り当てた「符号化文字」(coded character)の表であるため、サブセットやスーパーセットの関係は客観的には成り立たないと考えます。(ただし、両文書を作成した当事者の方々が、主観的に、何らかの強い関係性を両者に期待した可能性がないとは言えないでしょうけれども)。

その意味で、小林(tlk)さんが、現実の情報機器の運用における必要から、以下のように書かれたことは、至極自然なことと考えます。

> ぼくの論点は、JIS X 0213:2012は、常用漢字表の文字(字体)と一対一に対応する符合位置を持ち、常用漢字表の全てを符号化して交換できる、といったところでしょうか。

以上、私見を述べました。

山本太郎
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これは私の極めて個人的な考えですが、私にはそもそも『常用漢字表』の規範性の法的根拠がよく分かっていません。つまり、なぜ規範性を帯びなければならないのかという疑問をずっと持っています。

Received on Wednesday, 19 June 2024 00:33:15 UTC