- From: Taro Yamamoto <tyamamot@adobe.com>
- Date: Sun, 15 Oct 2023 08:30:11 +0000
- To: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>, 木田泰夫 <kida@mac.com>
- CC: JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
(全体としては同じことを仰っているようにも感じますが、もう少しだけコメントする必要があると感じたので、コメントいたします) > アラビア数字の場合は,“文字の高さ”という定義は,横向きであろうが縦向きであろうが,うまく説明が付きます.しかし,“文字の高さ”という定義は,文字を変形した,又は変形したフォントの場合は,うまくいきません.長体のときは“文字の高さ”が文字サイズになりそうだ.ところが,平体のときは,たぶん“文字の左右”が文字サイズになりそうだ. 文字のデザイン自体が矩形のボディをもつ場合であれ、変形した場合であれ、どちらの場合でも、横組と縦組との両方に対応する必要があるにもかかわらず、長体を水平方向の圧縮、平体を垂直方向の圧縮と考えることに無理があります(そのこと自体が、横組と縦組とで、字送り方向が90度変わることを無視しているからです)。日本語において、これまで長体フォントが主に横組用に用いられ、偏平の新聞書体が縦組用に用いられてきたことは、欧文において、condensed/expandedの書体デザインのバリエーションが字送り方向での圧縮と拡張であることと整合しています。(この理由の一つには、Natが述べたように、字送り方向と行送り方向の両方ともを文字サイズとの制約から解放してしまうことに伴う不便さを避けたことがあるかもしれません)。 そして、文字サイズは、字詰め方向にも、字送り方向と直交する方向(行送り方向)にも仮想的に設定されますが(なぜなら縮小・拡大の比率は横も縦も同じなので)、書体やグリフによって字幅の変化が想定される場合には、特に、字送り方向と直交する方向(行送り方向)が文字サイズとある程度は等しいと考えた方が便利だから、(実際のグリフの形からは独立して、無関係に)そう見做しているわけです。 そう見做しているから、現状の縦組に対応していない長体フォントを縦組で組むと、横組用と同じグリフが(そのグリフしかないので)、同じ大きさで、各文字の横幅が全角よりも狭い状態のまま、縦方向に組まれるのです(縦方向の字幅は横組と同じく正方の全角の寸法と同じで)。 字送り方向と直交する(行送り方向)における実際のグリフの図形の寸法が、上に述べたような日本語の長体フォントや偏平新聞書体のように、その設定した文字サイズの寸法とある程度整合する場合もあれば、欧文フォントにおけるように、書体デザインによって(ascender, descender, x-heightやcap. heightが書体デザインごとに変化するため)大きくばらつく場合もありますが、字送り方向と直交する(行送り方向)に文字サイズを関係づけることが、特に日本語において問題になるとは考えられません。 もし将来、欧文書体のように、字送り方向と直交する(行送り方向)においても、文字サイズとの対応関係(または制約)から完全に自由になって開放された日本語書体がデザインされるようになった場合に初めて、現在欧文組版の場合に、最初の行の行送り方向での開始位置を、どこに定めるかをレイアウトソフトウェアが選択可能にしているように(例えば、InDesignの場合はテキストフレーム設定で行送り方向の開始位置をx-height, Cap. heightなどから選択可能にしています)、日本語組版でも利用者がそのような設定を行う必要が生じるかもしれません。しかし現時点では、そのような状況にはないと思われます。 山本
Received on Sunday, 15 October 2023 08:30:23 UTC