RE: 全角幅送りの議論

(コメントします)

  *   しかし、写植の技術が導入されるとともに、正方形を基準とする文字の並べ方が必須のことではなくなった。杉浦康平らが広告などのグラフィカルな表現で始めたいわゆる詰め組が、本文組にも反映されるようになった。また、新聞等では、本文そのものに、やや扁平な文字を用いることも多くある。

写植がグラフィックデザイナーによって利用され始めたのは、戦前の恩地孝四郎や山城隆一によってであり、以後1960年代までに原弘、亀倉雄策、細谷巌、田中一光、清原悦志、勝井三雄などがグラフィックデザイナーとして活躍しますが、彼らは皆写真植字を積極的に利用していて、その中には詰め組も含まれていたと考えられます。たしかに杉浦康平の実験的なタイポグラフィの取り組みもまた詰め組を含む写真植字の技術を駆使したものでしたが、写真植字と日本のグラフィックデザインを考える場合に、一人だけを取り上げるのは妥当ではないと思います。「日本のグラフィックデザイナーたちが……」とするのが妥当と考えます。


  *   以後の議論においては、この漢字や仮名を収める一意の幅と高さを持った方形を《基本方形》と呼ぶこととする。

スペーシングにおいては、括弧類と句点類を含めて考える必要があります。また、「基本方形」は必ずしもそれらの具体的な個別グリフのもつ仮想ボディと一致するとは限りません。そのため、次のような文にしてはいかがでしょうか。

以後の議論においては、日本語で用いる主要な文字(漢字、仮名、括弧類と句点類)を組む(配列する)ときに基準となる方形を《基本方形》と呼ぶこととする。この《基本方形》は、字送り方向の長さと、字送り方向と直交する方向での長さによって定まる矩形領域を示す。《基本方形》の字送り方向の長さから「二分」や「二分四分」などの字送り方向のスペースを導くことが可能となる。なお《基本方形》は、あくまで文字を整列し組む(配列する)上で参照するための情報であって、それはフォント固有の情報として各フォントに格納することが必要となる場合もあるが、必ずしもフォントに含まれる具体的な個々の文字の形状が、その《基本方形》と一致するとは限らない。



  *   通常、方形幅はフォントサイズと同一であるが、文全体に変形が加えられた場合、フォントサイズと一致しない場合もあり得る。

フォントサイズという言葉は意味が分かりません。以下のようにすればいかがでしょうか。

伝統的に本文用に設計されてきた日本語フォントにおいては、漢字や仮名は正方形の枠の中にデザインされ、それらの文字の幅はどの文字も等しく設定されていた。このような場合には、方形幅は文字のサイズと等しくなる。それに対して、基本方形の字送り方向と直交する長さは常に文字サイズと等しくなる。基本方形は、それぞれのフォントに固有の属性として設定可能であるが、そのフォントを利用する段階で、変形などの操作によって変更される場合があり得る。


  *   また、いわゆる斜体(スラント)が施された場合も、基本方形概念を拡張することが可能である。

斜体は日本語の本文組版では用法が確立していないので、触れない方が良いと思います。


  *   基本方形に対応する英語としては、basic rectangle、基本方形幅に対応する英語としては、basic rectangle widthを提案する。

basicも良いと思いますが、referential rectangleあるいは、referential rectangle areaも良いのではないでしょうか。

山本

Received on Tuesday, 10 October 2023 07:51:41 UTC