Re: 行長は全角の整数倍であらねばならないか

木田泰夫 様

 小林 敏 です.

  木田泰夫 さんwrote

>とすると、文字が正方形の場合にだけ「全角」という概念が存在して、等幅でも長体や新聞文字のような扁平体には「全角」という概念が存在しないことになりますか?

そうです.全角とはいえません.新聞でいえば,その扁平の文字枠が1行の行長の基準になります.以前は新聞は三分二倍角と時代があったと思いますが,三分二倍角が行長の基準となり,その整数倍に行長を設定します.その考え方は全角と似ていますが,それは全角とはいえません.

なお,いえば,JLReqでは,その前提として仮名と漢字は全角の文字を前提することはドキュメントの冒頭で説明しています.ただし,文字が変形され長体または長体の文字はあることは,どこかで触れていたと思います.

>組版のさまざまな記述で、例えば「全角アキ」「二分までかけて良い」などのように、字幅の量を表すために「全角」やそれから派生する二分、四分という用語が用いられています。

これは,まったく問題ないと思います.全角にはアキ量の基準としての概念と,文字の外枠が正方形という2つの定義があり,長さの場合は,前者です.そして,全角という長さは文字サイズですから,二分は文字サイズ(そこで使用されている文字サイズ,そのことが暗黙の前提になっています)の1/2です.ですから正確には9ポイントの二分というところですが,文字サイズを添えていうことは一般にない.そして,9ポイントの二分は4.5ポイントという長さ(アキの大きさ)を意味します.そこには,あいまいさはありません.

>長体や扁平体の組版は、正方形の文字の組版と概ね同じかと思いますが、この場合に全角という概念が存在しないとすると、組版の記述に全角という用語を使うべきかどうか、議論の余地があるかもしれません。常に「字幅、字幅の1/2、字幅の1/4」などの表現を使うべき?

長体や扁平体に全角という用語の適用は,これまでなかったと思います.

JLReqでは,前提として仮名と漢字は全角の文字を前提とすることが説明されていますが,jlleq-dで,そうはいかないでしょう.ですので,jlleq-dで私が書いている限りでは,全角の文字ということを明示的に示し,説明しています.

なお,長体や平体の組版は、正方形の文字の組版と似ていますが,全角というと,それは正確な説明ではありません.そのそも二分や四分という言い方は,そこではできないので,別の表現が必要になります.

例えば,横組で長体とした際には,句読点や括弧の前後のアキは二分とはいえません(平体では二分や四分といえる).例えば,80%(計算しやすいので)の長体の場合,句読点括弧類の字幅は文字サイズの40%となり,その前後のアキは文字サイズの40%ということになる.

>もしくは「全角」の意味を拡張して、プロポーショナルでない和文書体の字幅のことである、と言ってしまうか。

いや,それは混乱の元ですから,拡張しない方がよい.そもそも“プロポーショナルでない和文書体の字幅も全角”といえば,多くの人が,それは何と思うでしょう.


いってみれば,以下の3つを説明でしっかり行っていけばよい.
1 全角の文字を前提とし,字間をベタ組にする場合
2 全角の文字を前提とするが,字送りを全角としない(文字サイズと同じ字送りとしない)場合
3 統一的に変形した文字を前提とする場合
4 プロポーショナルな組版

Received on Thursday, 5 October 2023 04:14:41 UTC