- From: 木田泰夫 <kida@mac.com>
- Date: Wed, 4 Oct 2023 12:49:09 +0900
- To: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Cc: Yamamoto Taro <tyamamot@adobe.com>, JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
敏先生、 用語の定義の解説、ありがとうございます。 とすると、文字が正方形の場合にだけ「全角」という概念が存在して、等幅でも長体や新聞文字のような扁平体には「全角」という概念が存在しないことになりますか? 組版のさまざまな記述で、例えば「全角アキ」「二分までかけて良い」などのように、字幅の量を表すために「全角」やそれから派生する二分、四分という用語が用いられています。 長体や扁平体の組版は、正方形の文字の組版と概ね同じかと思いますが、この場合に全角という概念が存在しないとすると、組版の記述に全角という用語を使うべきかどうか、議論の余地があるかもしれません。常に「字幅、字幅の1/2、字幅の1/4」などの表現を使うべき?もしくは「全角」の意味を拡張して、プロポーショナルでない和文書体の字幅のことである、と言ってしまうか。 木田 > 2023/10/04 12:23、Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>のメール: > > 木田泰夫 様 > > 小林 敏 です. > > 木田泰夫 さんwrote > >> 特に仮想ボディが正方形でない場合、文字の進行方向に対する呼び名はあるんですか? 1.4 ではこれを「全角」と仮に定義し、行長は全角の整数倍、と説明しましたが、この説明で良いのかちょっと不安。 > > JLReqでの用語を整理しておきます. > > 全角:a)文字サイズに等しい長さの相対単位.b)字幅が文字サイズである文字の外枠.この場合,文字の外枠は正方形になる. > aは,全角アキという場合です.全角アキとは,文字サイズの同じ大きさのアキということです.bは,全角の文字などという場合です.正方形の文字の外枠をもった字ということです. > > 文字の外枠は,正常な向きで,文字の高さ(天地のサイズ)と文字の幅(左右のサイズ)を持っています.この高さと幅という際には,縦組,横組関係ありません. > > 縦組では,文字の高さ(天地のサイズ)が字幅です.文字の幅(左右のサイズ)が文字サイズになります. > > 横組では,文字の幅(左右のサイズ)が字幅です(ですから“文字の幅”と“字幅”は異なった概念です).文字の高さ(天地のサイズ)が文字サイズになります. > > いってみれば,“特に仮想ボディが正方形であろうが,なかろうが,文字の進行方向に対する呼び名”は“字幅”です.その字幅が,一般の仮名や漢字は全角であるが,そうでないものもの(約物)もあるということです.二分の字幅のものを“半角”,四分の字幅のものを四分角といいます. > > なお,“文字の外枠”は“仮想ボディ”と同じと考えてよい.仮想ボディは,あくまで文字デザインの際に参照する枠であり,ここで問題とする文字サイズや字幅の基準の枠と考えるのは好ましくないという考え方があり,JIS X 4051やJLReqでは仮想ボディという用語は使用は避けたという経過があります. > > さらに言えば,文字サイズや字幅というものが示しているものは,あくまで“文字の外枠”か,“仮想ボディ”の行送り方向のサイズです.字面のサイズではないのです.ところで,たぶん最近のフォントは“文字の外枠”か,“仮想ボディ”の情報を保持していない可能性があります.では,どうして指定したサイズは実現できるかといえば(これは私の類推ですが),たぶん,元になる字形のデザインがあり,それを指定した文字サイズに応じて拡大・縮小しているかと考えています. > > これは手動写植の考え方で,文字盤は,17級または16級の文字(元になる大きさ)で,これを元にあとは比例計算して,必要な文字サイズを実現していた.ですから,大きな文字サイズになると,字間の調整が必要になった. > > まあ,いってみれば,文字サイズというものは,想定に想定を積み重ねたもので,すこし頼りないもので,それがデジタルになり,ますます頼りないものになってきたということかもしれません.字形という摑みようのないもののが対象だということでしょう.
Received on Wednesday, 4 October 2023 03:49:29 UTC