Re: 行長は全角の整数倍であらねばならないか

小畠です。

本文の詰め組みについて

当時のの日本語本文の詰め組みは、本文組版内に散見される文字間の白い小さなスペースを少しでも減らして、ページの印象をフラットなグレートーンに近づけたいという思いが働いていなかったでしょうか?

スイススタイルが見せている版面の平坦なグレートーンを良しとする評価に憧れがあったのではないかと想像しています。かくいう私も何の疑いもなく本文一歯詰めを利用していた一人ですが、刷り上がったページのグレートーンにあこがれというより、それを目指した記憶があります。

当時のグラフィックデザイン界全体がそうだったのか、その点に関して実際のところは分かりませんが。

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小畠正彌

On 2023/08/31 12:27, Taro Yamamoto wrote:
> さらに少しコメントいたします。
> 
>   * 従前の活版組版から、杉浦康平さんを中心とする写植の詰め組への移行、中
>     村征宏さんのナール(詰め組が不要な本文書体)の開発という流れを踏まえ
>     れば、行長が「全角の整数倍であらねばならない」などということは、ぜ〜
>     んぜんない、ということは明らか。
> 
> 杉浦康平氏は写植組版の中心にいたわけではなくて、写植における組版の可能性 
> の極限を探求した人々の内の一人だと思います(他にも、方向性は異なります 
> が、清原悦志氏や勝井三雄氏、田中一光氏などが写植のタイポグラフィの可能性 
> を追求しました)。1960–80年代に活躍したデザイナーはみなツメ組を行い(も 
> ちろん長い本文の場合にはベタで組んでいました)、ナールやゴナ、新ゴシック 
> といった字面が大きい詰める必要がない(というよりは詰めるのが比較的容易 
> な)書体を使う場合も特に見出し用途ではありました。しかし、ツメ組は基本的 
> には、見出しか、本文の場合は、商業印刷物、比較的文章量の少ない印刷物(商 
> 品のパンフレットや年次報告書、会社案内等)、あるいは文字サイズが大きめの 
> 記念出版物や美術書・豪華本などに限定されていました。やはり本文の主流は写 
> 植時代もベタ組だったと思います。このことは組版効率の上からもコストの面で 
> も合理性があります。
> 
> 適切に組めば(つまり適切に、詰めることを前提として文字のサイズと行間・行 
> 長を設定すれば)ツメて組んでも読みやすさを著しく減じることはありません 
> が、部分部分をランダムにアクセスする読み物(雑誌や商業印刷物)の範囲を超 
> えて、1ページ目から最終ページまでをシーケンシャルに読まなければいけない 
> 文芸書などの場合には、ページ数が増えると、やはりベタ組の方が読みやすく感 
> じるのではないかと思います。
> 
> 山本太郎
> 

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Received on Thursday, 31 August 2023 04:27:05 UTC