Re: デジタルドキュメントの版面設計

Yasuo Kida 様
みなさま

 小林 敏 です.

  Yasuo Kida さんwrote

>「ラテン文字とは,行間の考え方が基本的に異なる」というところ、詳しく知りたし。
>もっと広く空ける必要があるということですか?

そうです.ラテン文字は,原則として小文字が中心です.小文字の多くはベースラインとミンーンラインの間にある短字が多い.これに小文字の長字と大文字が部分的に入る.したがって,ラテン文字が主な場合,行間は,三分とか四分でよい.極端にいえば,行間がゼロでも,ラテン文字の場合,問題なく読める.

これに対し,日本語の文字は文字の外枠のほぼ一杯に設計されているので,行間がゼロということは,よほど特別な場合でしか選択できない.長い文では,しかも段組の場合であるが,最低でも二分といわれている.(図のキャプションなどでは,行数が少なく,テキストも少なく,また,キャプションとしてのまとまりを考え,行間は四分くらいにしている.また,辞書などページ数を制限したい場合も行間は狭い.ただ,辞書は短い文章なので,しょうしょう読みにくくても,まあ我慢できる.)

縦組の場合,1段組はずっと以前は全角行間が基本であった.紙に印刷する場合,ページ数が問題となるので,特に戦争など紙不足などの機会に,行間が狭くなる傾向があった.今日は,フォントが洗練され,また,オフセット印刷ということもあり,縦組で全角行間は少なくなり,ひどいのは1段組でも二分行間という本もけっこう目にする(これは,それなりに読めるが,私はけっこう苦労している).

ところで,本を読む場合,人は努力して読んでしまう.しょうしょう読みにくくても努力してしまう.それになれ,当然と思ってしまう.例えば,B6や四六版の縦組1段組の場合,以前は,本文9ポの場合,全角行間で15行,8ポイント行間で16行という本は,けっこうあり,それなりに読みやすかった.最近では,こうした本はめったにお目に掛かれない.多くが,行間を6ポとか5ポくらいにして18行という例が多い.なかには19行,20行という本もある.

これは,ある意味,紙の本ではページ数を少なくしたいという目的があるためである.Webでは,それは気にする必要性は少ないと思われる(ただし,1画面に一定のテキストを表示したい,ある程度の分量は見たい,という要求もある).

いずれにしても,行間は,1つのことだけでは決まらない.そのドキュメントやテキストの内容,目的や分量,見た目のバランスなども考慮しないといけないので,ある程度の技能が必要になるといえよう.(ですから,紙の本や雑誌は専門家が選択しているので破綻が,それほど多くないということかと思います.)

>もう一つ考えなければならないのは、和欧混植の場合をどうするか、です。下手をす
>るとどの文字が含まれるかによって行間がバラバラになります。広い方に合わせる?

行中にラテン文字が部分的に入る場合は,問題はない.それは日本語であると考え,日本語での行間で考えればよい.和欧混植では,多くは,こうした例である.

しかし,ラテン文字と日本語が,同じくらい入ってくる例もある.この場合,以下の方法が考えられる.
1 ラテン文字と日本語との両方の中間的な行間にする.ある種の妥協的方法.
2 ラテン文字と日本語が段落単位で分かれていれば,ラテン文字と日本語を別々の行間にする.

2の例は,APLの“日本語書記技術WG報告書”のなかの“Is EPUB part of the web? EPUBはWebの一部ではない?”で採用しています.

Received on Friday, 5 August 2022 07:33:17 UTC