RE: web における和欧間スペース

各位

和欧間のスペースについて、もう少し私の考えを説明させてください。

1.
> 同じテキストに対し、レイアウトによって、空白が必要な場合と不要な場合がある。ゆえこれは文字データではなくレイアウトの問題であるということですね。

そのとおりですが、そのさらに根本の理由は、和文のテキストには用法としてワードスペース(0x0020)が存在していないからなのではありませんか?

活版時代のスペース素材は、テキストでも「文字」でもなく、グリフのスペーシングを物理的に行いながら組版を保持固定する道具だったわけで、はじめからレイアウト上の課題だったわけです。手動写植の歯送りも同じです。電算写植/自動写植のスペースも同じです。欧文のワードスペースは、単語の区切りを示すという目的で用いられる空白が、テキストを構成する一部になっているから、文字としても機能すると言うことができるかもしれません。

しかし和文テキスト中には、ワードスペースははなから存在しないので、それに対応する「文字」も存在しません。だから、テキストの問題ではありません。(手書きの原稿用紙の場合でも、著者が、和欧間にテキストの要素としての「スペース文字」が存在していることを意識して、それを明記することは稀だったはずです。デザイナーや組版者が後から、和欧間の空き量の指定を記入することはあったかもしれませんが、それはテキストの書き手の知らないところで行われることです。)

欧文が含まれるからといって、和文テキスト中の欧文の単語間以外の場所に、欧文のワードスペースに対応する文字を挿入したら、テキストデータを壊してしまうことになる。だから、和欧間を視覚的にはっきりと区切りたいという要求を解決することは、テキスト上の操作では不可能なのだと理解しています。

2.
和欧間のスペースが広がり過ぎる場合があるからといって、その可変量の範囲を狭く限定するのではなく、既に許容されて行われているにもかかわらず、一律に調整不可としなければならない理由が、私にはいまだに良く理解できません。

とはいえ、空き量を固定するオプションも提供することには賛成です。調整不可の方が好ましい場合があることには、まったく異存ありません。
(ちなみにInDesignでは和欧間のスペースを調整不可にすることは、既に可能です。)

3.
和欧間のスペースが空き過ぎる、ということについてですが、小林さんが触れておられましたが、欧文のワードスペースよりも、和欧間の空き量を広くしたいために、二分スペースを和欧間に採用していることもあるとのことです。『新編 校正技術 下巻』(日本エディタースクール、1973年第一版刊行)のp.64の注釈にも同じ記述がありました。

4.
小林さんは以下のように書かれました。

> この点については,JIS X 4051では二分から八分の範囲で,行の調整の際に使用してよいことになっていますが,これには私は反対だということです.
> 理由1:これまでのコンピュータ組版では,そのような調整に使用した処理例はなかった.

1970年代末から80年代に世界的なベストセラーとなったLinotype社(当時)のCRT写植機Linotron 202で組版を行う場合には、同社の組版言語CORA 5を用いてコーディングを行いましたが、その日本語版のCORA 5Eでは、通常のモードでは、和欧間には自動的に「4分ワードスペース」が挿入され、「残余量はワードスペース(SP)と4分ワードスペース、和文と和文との間に割り振りジャストを行う」(『組版言語CORA 5E』(モリサワ、1980年第一版刊行、p. 1-46)とあります。この理由は、和文モードでは欧文の文字が「レタースペース禁止状態」(字間のスペーシングが禁止される)になるためと記載されています(同書p. 1-46)。そのため、CORA 5Eでは、和欧間に挿入される4分ワードスペースは調整対象となっていたと考えられます。

また、このCORA 5Eの場合で、レタースペースを許可して、その上で和欧間のスペースを調整不可とする方が良い、と常に言うことができるかどうかについても、また議論が分かれるでしょう。なぜなら、レタースペースが実行されるのは、ワードスペースが最大値を超えた場合だからです。(欧文を視覚的なスペーシングの微調整やカーニングのためではなく、ワードスペースに余剰分を割り振れなかったから、機械的にレタースペースをして欧文の字間を空けるのは、最後の手段といえるでしょう。欧文としての組み上がりの視覚的な効果が破壊されてしまうからです)。

> 理由2 基準が二分などという,ある程度大きなアキ量は,多少の調整量では,あまり気にならない.これに対し,基準が四分というアキ量を変化させると,けっこう気になる.目立つということ.したがって,四分のアキは固定したい.

和欧間のスペースが空き過ぎるのであれば、その調整量の最大値を二分(50%)から、例えば、33%などに変更することも可能なはずです。
他方で、上に述べたように、InDesignでは、最小値=標準値=最大値に設定すれば、調整不可能にできる方法が既に提供されています。

既に存在している、調整可能な要素を、調整不可能にするのは、スペーシングの最適化を行う際の選択肢を狭めてしまい、好ましくないと考えます。デフォルト値を決めるのは当然として、「広すぎる」または「狭すぎる」という場合には、最小値・標準値・最大値を指定できるようにすることが必要と考えます。和欧間のスペースの場合のように、何が最適値なのか自体が多様で曖昧な場合には、特にそう言えるのではないでしょうか。

以上、私見まで。

山本太郎

Received on Thursday, 30 June 2022 03:41:41 UTC