RE: web における和欧間スペース

Taro Yamamoto 様
みなさま

 小林 敏 です.

処理は複雑にしてもよいということであれば,選択肢が多くなります.それはある意味で望ましいことと思います.

もっといえば,和欧間のスペースでも,以下のケースに分けてアキ量を決めたいという意見もでるかもしれない.
 1 1文字
 2 単語
 3 複数の単語
 4 アラビア数字

また,行の調整処理も,多くの選択肢と調整量の範囲を設定できれば,それはそれで望ましいことと思います.ですので,山本さんの意見はもっともだと思います.

ただ,Webでは,ある種の合理化というか,処理の単純化も求められていると考えています.その上での議論が今は求められているように思っています.そうしたことで何が考えられるかということです.

その考えで,どこまでできるかと考えたときに,和欧間のスペースは,これまで私が説明したようなことから,まず固定して単純化してよい.ただし,逆にその値は,フォントの設計がいろいろと出てきて,この値は,単純化はできないよ,ということです.

さらに言えば,以下のような考えもあるからです.

次にアキがある箇所での調整は,結構目立つのではと思っているからです.ですから,句読点のツメも,できれば採用したくないとも思っている.近年の書籍を見ても,例えば,筑摩書房の本ではアキ優先で処理している例が多い.つまり,約物を調整に利用していない.仮名や漢字の字間だけで,結構うまくいっている.

ところで,行の調整処理で仮名や漢字の字間を空ける処理は,私にとっては,すごく気になることです.ベタ組から空けても,詰めても,少ない調整量でも,すく目にとまります.それは,行の調整処理で行う場合でも,ツメ組(アキ組)として,全てのテキストを詰める(空ける)も同じです.これは,そのように文字組を見る目を訓練してきたことであり,特殊ではないかと思っています.それに対し,一般の読者にとって,あまり気にならないのではないかとも思っていることが理由です.それは,身近の人の感想と,短期間ですが校正教育を行った際の受講生の反応からの考えです.ここ字間あいてるよ,と指摘しても,“うーん”という反応もありました.

ですから,行の調整処理は,決まったアキの箇所を使うより,調整箇所の多い仮名や漢字の字間で行えば,処理箇所も多くなり,いいのではないかとも思っています.処理箇所は多くなるが,ルールの一つの単純化です.(こうした処理は活字組版ではできませんでしたが,コンピュータ組版では,それほど困難ではないでしょう.)

 Taro Yamamoto さんwrote

>各位
>
>和欧間のスペースについて、もう少し私の考えを説明させてください。
>
>1.
>> 同じテキストに対し、レイアウトによって、空白が必要な場合と不要な場合がある。
>> ゆえこれは文字データではなくレイアウトの問題であるということですね。
>
>そのとおりですが、そのさらに根本の理由は、和文のテキストには用法としてワード
>スペース(0x0020)が存在していないからなのではありませんか?
>
>活版時代のスペース素材は、テキストでも「文字」でもなく、グリフのスペーシング
>を物理的に行いながら組版を保持固定する道具だったわけで、はじめからレイアウト
>上の課題だったわけです。手動写植の歯送りも同じです。電算写植/自動写植のス
>ペースも同じです。欧文のワードスペースは、単語の区切りを示すという目的で用い
>られる空白が、テキストを構成する一部になっているから、文字としても機能すると
>言うことができるかもしれません。
>
>しかし和文テキスト中には、ワードスペースははなから存在しないので、それに対応
>する「文字」も存在しません。だから、テキストの問題ではありません。(手書きの
>原稿用紙の場合でも、著者が、和欧間にテキストの要素としての「スペース文字」が
>存在していることを意識して、それを明記することは稀だったはずです。デザイナー
>や組版者が後から、和欧間の空き量の指定を記入することはあったかもしれませんが、
>それはテキストの書き手の知らないところで行われることです。)
>
>欧文が含まれるからといって、和文テキスト中の欧文の単語間以外の場所に、欧文の
>ワードスペースに対応する文字を挿入したら、テキストデータを壊してしまうことに
>なる。だから、和欧間を視覚的にはっきりと区切りたいという要求を解決することは、
>テキスト上の操作では不可能なのだと理解しています。
>
>2.
>和欧間のスペースが広がり過ぎる場合があるからといって、その可変量の範囲を狭く
>限定するのではなく、既に許容されて行われているにもかかわらず、一律に調整不可
>としなければならない理由が、私にはいまだに良く理解できません。
>
>とはいえ、空き量を固定するオプションも提供することには賛成です。調整不可の方
>が好ましい場合があることには、まったく異存ありません。
>(ちなみにInDesignでは和欧間のスペースを調整不可にすることは、既に可能で
>す。)
>
>3.
>和欧間のスペースが空き過ぎる、ということについてですが、小林さんが触れておら
>れましたが、欧文のワードスペースよりも、和欧間の空き量を広くしたいために、二
>分スペースを和欧間に採用していることもあるとのことです。『新編 校正技術 下
>巻』(日本エディタースクール、1973年第一版刊行)のp.64の注釈にも同じ記述があ
>りました。
>
>4.
>小林さんは以下のように書かれました。
>
>> この点については,JIS X 4051では二分から八分の範囲で,行の調整の際に使用し
>> てよいことになっていますが,これには私は反対だということです.
>> 理由1:これまでのコンピュータ組版では,そのような調整に使用した処理例はなか
>> った.
>
>1970年代末から80年代に世界的なベストセラーとなったLinotype社(当時)のCRT写植
>機Linotron 202で組版を行う場合には、同社の組版言語CORA 5を用いてコーディング
>を行いましたが、その日本語版のCORA 5Eでは、通常のモードでは、和欧間には自動的
>に「4分ワードスペース」が挿入され、「残余量はワードスペース(SP)と4分ワード
>スペース、和文と和文との間に割り振りジャストを行う」(『組版言語CORA 5E』(モ
>リサワ、1980年第一版刊行、p. 1-46)とあります。この理由は、和文モードでは欧文
>の文字が「レタースペース禁止状態」(字間のスペーシングが禁止される)になるた
>めと記載されています(同書p. 1-46)。そのため、CORA 5Eでは、和欧間に挿入され
>る4分ワードスペースは調整対象となっていたと考えられます。
>
>また、このCORA 5Eの場合で、レタースペースを許可して、その上で和欧間のスペース
>を調整不可とする方が良い、と常に言うことができるかどうかについても、また議論
>が分かれるでしょう。なぜなら、レタースペースが実行されるのは、ワードスペース
>が最大値を超えた場合だからです。(欧文を視覚的なスペーシングの微調整やカーニ
>ングのためではなく、ワードスペースに余剰分を割り振れなかったから、機械的にレ
>タースペースをして欧文の字間を空けるのは、最後の手段といえるでしょう。欧文と
>しての組み上がりの視覚的な効果が破壊されてしまうからです)。
>
>> 理由2 基準が二分などという,ある程度大きなアキ量は,多少の調整量では,あま
>> り気にならない.これに対し,基準が四分というアキ量を変化させると,けっこう
>> 気になる.目立つということ.したがって,四分のアキは固定したい.
>
>和欧間のスペースが空き過ぎるのであれば、その調整量の最大値を二分(50%)から、
>例えば、33%などに変更することも可能なはずです。
>他方で、上に述べたように、InDesignでは、最小値=標準値=最大値に設定すれば、
>調整不可能にできる方法が既に提供されています。
>
>既に存在している、調整可能な要素を、調整不可能にするのは、スペーシングの最適
>化を行う際の選択肢を狭めてしまい、好ましくないと考えます。デフォルト値を決め
>るのは当然として、「広すぎる」または「狭すぎる」という場合には、最小値・標準
>値・最大値を指定できるようにすることが必要と考えます。和欧間のスペースの場合
>のように、何が最適値なのか自体が多様で曖昧な場合には、特にそう言えるのではな
>いでしょうか。
>
>以上、私見まで。
>
>山本太郎

Received on Thursday, 30 June 2022 04:41:58 UTC