RE: 10.1 日本語組版の読みやすさ

Taro Yamamoto 様

 小林 敏 です.

コメント,ありがとうございます.

木田さんが10章で読みやすさも含めたいという意向でしたので,何か書かないといけないということで結論のない書き方ですが,少なくとも課題だけでも示せればよいと思ってまとめたものです.ですので,jlreq-dに入れるどうかから議論する必要があります.

読みやすさの問題は,心理学の世界でいろいろと実験もされて,その報告もあります.小林潤平さんの論文もありますが,正確に読めていないかもしれませんが,私がそれらを読んだ限りでは,よくわからい,というところです.そして,我々実務家が具体的な指針となる段階までのものは少ないように感じています.

そもそも,読みの過程がどうなっているのか,音読(黙読も含め)は文字を認識する過程の前提条件か,また,英語はどうも単語単位に認識しているようだが,日本語はどうなっているのか,よくわからない.

山本さんの指摘した字画の多い文字の認識などもよくわからない.ただ,ちゃんと認識していなくても読めるようにも思える.例えば,“祟”と“崇”など,校正で字形の似た漢字を見逃す例は多い.見逃さないためには,それなりの訓練が必要になる.かなりいいかげんでも認識できるようだ.文脈も理解の助けになる.

そして山本さんの指摘した“紙面(または画面)から人間の目までの距離”も重要な問題かと思います.

例えば,文庫本のA5では小さい字(最近は,かなり大きくなった)でも可能なのは,版面が小さいだけでなく,人間の目までの距離までも,多少は影響しているかと思っています.

個人的な経験(私は極度の近眼です)をいうと,かつては眼鏡を掛けて本を読んでいた.つまり,普通の読み方をしていた.このときはかなり小さい文字の文庫本は読むのに苦労していた.だいぶ前からは眼鏡をはずして,本を目に近づけて読むようになった.そのため,かなり小さい文字の昔の文庫本も読めるようになっている.

  Taro Yamamoto さんwrote

>1点だけコメントします。
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>> - 文字サイズ 印刷物では,ある程度の読みやすい文字サイズという共通の認識はあった.これに対し,モニタでは,表示の文字サイズは変更できるので,読者が選択できればよいということでよいのか.その際に問題となるのは,表示できるテキストの分量とのバランスもあり,このことを考慮し,さらに画面サイズに応じた選択の方法を考える必要はないのか.前述したように読者は努力して読んでしまうので,与えられたものを変えることはしないことが多い.そこでどのような選択肢を示したらよいのか,その方法を考える必要がある.
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>普通に言われる「読みやすい文字サイズ」は、あくまで紙面(または画面)から人間の目までの距離(reading distance)が、平均的な場合であることを前提条件にしていると思います。その距離は通常、25 cm〜40 cmの範囲内と言われていて、標準的には25 cmが使われるようです。また、平均的な視力の持ち主を想定しているでしょう。
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>ここには、かなりの曖昧さと大雑把さがありますが、可読性の研究を行っている心理学者でもなければ、あまり精密な議論はしていないのが現状ではないでしょうか。また、実用的な世界で、そのような学術的な精密さが必要かどうか、適切かどうかについても、はっきりしないのではないかと感じます。
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>とはいえ、平均的な条件下で、また平均的な組み幅と行長、行間における、読みやすい文字サイズの範囲が分かったと仮定したとしても、目から紙面(または画面)までの距離が倍になれば、最適な文字サイズの範囲も倍になり、距離が半分になれば、最適な文字サイズの範囲も半分の大きさになると考えられます。
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>ところで、通常の書籍の場合、本文の文字の大きさは、大きなサイズの本でなければ、多くの場合8 pt〜12 ptの範囲内にあると思いますが、目の解像度は1 arcminute(分角)と言われています。25 cmの距離から本文としては大き目の12 ptの文字を見る場合でも、全角は20分角ぐらいしかありません。ゴシック体の「曇」の文字の横画線の空間は全角の1/18から1/20ぐらいしかないので、視認限界ぎりぎりです。「驫」や「爨」のような文字だと、さらに横画線の間の空間は狭くなるでしょう。つまり、あまり細かい画線の構成が見えなくても、文字全体の形状などから、文字を認識しているということのように見えますが、如何……。
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>山本

Received on Saturday, 4 October 2025 03:51:18 UTC