RE: 10.1 日本語組版の読みやすさ

1点だけコメントします。



> - 文字サイズ 印刷物では,ある程度の読みやすい文字サイズという共通の認識はあった.これに対し,モニタでは,表示の文字サイズは変更できるので,読者が選択できればよいということでよいのか.その際に問題となるのは,表示できるテキストの分量とのバランスもあり,このことを考慮し,さらに画面サイズに応じた選択の方法を考える必要はないのか.前述したように読者は努力して読んでしまうので,与えられたものを変えることはしないことが多い.そこでどのような選択肢を示したらよいのか,その方法を考える必要がある.



普通に言われる「読みやすい文字サイズ」は、あくまで紙面(または画面)から人間の目までの距離(reading distance)が、平均的な場合であることを前提条件にしていると思います。その距離は通常、25 cm〜40 cmの範囲内と言われていて、標準的には25 cmが使われるようです。また、平均的な視力の持ち主を想定しているでしょう。



ここには、かなりの曖昧さと大雑把さがありますが、可読性の研究を行っている心理学者でもなければ、あまり精密な議論はしていないのが現状ではないでしょうか。また、実用的な世界で、そのような学術的な精密さが必要かどうか、適切かどうかについても、はっきりしないのではないかと感じます。



とはいえ、平均的な条件下で、また平均的な組み幅と行長、行間における、読みやすい文字サイズの範囲が分かったと仮定したとしても、目から紙面(または画面)までの距離が倍になれば、最適な文字サイズの範囲も倍になり、距離が半分になれば、最適な文字サイズの範囲も半分の大きさになると考えられます。



ところで、通常の書籍の場合、本文の文字の大きさは、大きなサイズの本でなければ、多くの場合8 pt〜12 ptの範囲内にあると思いますが、目の解像度は1 arcminute(分角)と言われています。25 cmの距離から本文としては大き目の12 ptの文字を見る場合でも、全角は20分角ぐらいしかありません。ゴシック体の「曇」の文字の横画線の空間は全角の1/18から1/20ぐらいしかないので、視認限界ぎりぎりです。「驫」や「爨」のような文字だと、さらに横画線の間の空間は狭くなるでしょう。つまり、あまり細かい画線の構成が見えなくても、文字全体の形状などから、文字を認識しているということのように見えますが、如何……。



山本

Received on Friday, 3 October 2025 09:03:54 UTC