RE: 行への文字の配置の実際

各位



コメントします。



I.

> 字送り=文字サイズ+字間
. . .

> なお,基準点はフォントによるが,文字のボディの縦組では文字の上端,横組では文字の左端が多い(これでOKか?).字間の大きさとしてマイナスの値となる場合,字送りの大きさは,文字サイズより小さくなる.



上記は一般的には言えないのではないでしょうか。なぜなら、文字サイズはEMボディの大きさ(Units Per EM)で規定されますが、隣接する二文字のベタでの字送りは、前の文字の字幅で決まるからです。そのため、字送りは次のようになるはずです。



字送り = 字幅 + 字間



  1.  基準点の位置はフォントだけでなく、書記体系に依存します。なので、次のように、日本語で使う文字の場合の事例を挙げるのにとどめるのが良いと考えます。



基準点の位置は書記体系と個別フォントに依存する.日本語のテキストでは,縦組みではボディの上辺の左右方向の中央位置,横組みではボディの左辺の上下方向の中央位置に基準点が置かれる場合が多い.



  1.  上記1.で述べた理由で、字送りと文字サイズとは無関係で、字幅と字間にだけ依存しています。したがって、次のように言うのが適切と考えます、



                隣接する文字の字間の大きさが負の値となる場合,それらの文字のボディは重なる.



II.

以下、下線の部分のような説明文を追加した方が良いと考えます。



  *   プロポーショナル幅を持った和文文字の配置は,ボディを密着させて配置する点では全幅等幅での配列と同じであるが,個々の文字により字幅がプロポーショナル幅である点が異なっている.従来,書籍などの長文の本文テキストでは日本語の和字を等幅にするベタ組が多用され,プロポーショナルの字幅で日本の文字を組むことは,視覚的に比較的均等に字間を配分できるため,主に見出しや商業印刷物などで用いられてきた.



III.

  *   こうした視覚的な文字間の空白や縦・横画線のコントラストを調整する方法としては,次のような方法がある.利用できる環境や,文章の目的,表示の状況などにより適宜選択して利用するとよい.



この部分では、フォント側で対応する場合と、組版の段階で対応する場合とをはっきり区別した方が良いと考えます。また、フォント側での対応よりも組版側での対応を優先すべきと考えます。なぜなら、このオプティカルスケーリングに対応したフォントでは日本語フォントにはまだほとんど皆無だからです。以下の下線部のように変えました。



  *   このような,文字の大きさの変化に応じて,視覚的な大きさを最適化するために,文字を組む段階で調節する方法と,書体デザインをフォントとして実装する段階で対応する方法とがある.またその両者を組み合わせる場合もある.利用できる環境や,文章の目的,表示の状況などにより適宜選択して利用するとよい.



  1.  - アプリケーションの字間処理の最小単位を細密にして,文字を配置する段階で微妙に字間を空ける,あるいは詰める処理を行う.これにより,書体デザインの作成時点で想定されていた文字サイズと異なる文字サイズの字間の最適化を行う.現在のデジタルフォントの字間(または字送り)調整の単位としては,文字サイズの1/1000又は1/2048が広く用いられている.



ただし,この方法で改善できるのは字間だけであって,縦線と横線の比率など,文字サイズに最適な文字のデザインが利用できるわけではない.また,テキスト全体に適用すると,仮名だけでなく漢字の字間を調整されるので,フォントによっては漢字の視覚的な字間が詰まって見えることもあるので注意が必要である.



注 漢字と仮名の字面のサイズ 漢字と仮名の平均的な字面のサイズは,特に一般的な明朝体においては,漢字にくらべ,仮名の方がいくらか小さくデザインされていることが多い.日本語の文章の中では,主要な意味の表現には漢字が使用され,仮名はどちらかといえば,補助的な役割を果たしている.漢字と仮名の字面のサイズが異なる,あるいは,その他,線や字画の性質もやや異なることにより,漢字がいくらか強調され,単語の区切りを読み取る助けにもなっている.


  1.  書体デザインの段階において,複数の異なる画線の太さのバリエーション(以下,“ウェイト”と呼ぶ)のフォントから構成されるファミリーを作製する.これを使用状況の中で適宜選択する.通常,ウェイトが細いフォントは通常の大きさのテキストに,太いフォントは見出し用,つまり,細いウェイトのフォントは小さな文字サイズでの使用が,太いウェイトのフォントは大きな文字サイズでの使用が想定されている.



この想定する文字サイズに応じた最適化した書体デザインを行う方法は,主に写真植字やコンピュータ写植で採用されてきた伝統的な方法である.



ここで下線部を変えました。なぜなら、活字の場合、パントグラフの機構を用いるベントン父型・母型彫刻機が用いられる以前の、サイズごとに字形のデザイン自体、字形のボディ内での相対的な大きさの両方がサイズごとに変化する活字の場合と、それ以後の活字とによって、差異があるとはいえ、基本的には、活字はサイズごとに供給されるものなので、述べない方が良いと考えます。



  1.  想定する使用文字サイズの範囲を決めて,その範囲ごとに,最適化したデザインの異なるフォントを作成し,文字サイズに応じて使い分ける.この方法は,日本語フォントに比較して収録文字数が少なくてすむ欧文フォントで主に採用されてきた.



図〓に示したGaramond Premier Proの例で,キャプション,本文,見出しの3つのレンジごとに最適化したデザインのフォントが用意されている.



図〓 Garamond Premier Proの例


  1.  3.で述べた文字サイズの範囲ごとに最適化されたデザインのフォントを用いる方法では,文字サイズの範囲は限られてしまうため,連続的な文字サイズの大きさの変化に対して連続的に文字のデザインを最適化して変化させることができないという,欠点がある.この欠点を克服するために,バリアブルフォントを利用する方法がある.バリアブルフォントでは,1つ又はそれ以上の文字の形の属性に対応した可変軸をもつフォントを用いる.これによれば,文字サイズに最適化したデザインの文字を生成して利用できることになる.



この方法の単純な例としては,小さな文字サイズに適したデザインを可変軸の一方の端に位置づけ,大きな文字サイズに適したデザインをもう一方の端に位置づけ,それらの中間の形状を自動的に計算によって生成する方法がある.こうした方法は,バリアブルフォントの技術で実現可能である.



下線部で、バリアブルフォントを用いる利点をより分かり易く説明しました。



以上、私見まで。



山本

アドビ

Received on Thursday, 11 September 2025 06:47:14 UTC