- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Thu, 21 Aug 2025 13:41:12 +0900
- To: JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
みなさま 小林 敏 です. 強調の方法をまとめてみました.ご検討ください.これは,4章以下のどこではなく,3章のテーマかなと思っています.また,ルビと圏点の重なりも,ここに載せたらどうかと思っています.なお,ルビと圏点の重なり問題では,ルビがついた語の圏点を付けないという方法も追記しました.(GitHubにも掲載してあります.) * 3.〓 強調の方法 日本語においてテキストのある部分を強調する方法は,いいろいろとある.しかし,強調する内容と強調の方法との組合せについては,明確に確立された慣行はない.また,強調の度合いも異なってくるが,どれが強い強調かも,一概にはいえない.しかし,ある種の表現では,比較的に多く採用され,慣例といってもよい方法もある.いくつか例を示しておく.なお,ここでは,主たるテキストと差をつけて示す,あるいは強調の逆である補足を説明付ける方法も解説しておく. - 重要な語句,あるいは索引に拾われている用語など,特別に意味を持っている語句を示すために,その語句のフォントを変える.明朝体が主たるフォントであれば,該当の語句をゴシック体にする. - ある用語なり言葉の意味が,一般的でない,あるいは,このテキストの中では特別な意味を持っていることを示すためにカギ括弧でくくる.日本語には“括弧に入れる”という表現がある,つまり特別な意味を持っていることを示す. - 英語を日本語に翻訳する場合,英文中のイタリックを使用して示した書名は,それの翻訳書名を日本語で表記する場合は,斜体にしないで,一般に『』(縦組または横組)や“”(横組)でくくって示す.雑誌の論文名は「」や‘’(横組)でくくって示す. - 英語の場合,行の中で強調や外来語由来の語句をイタリックで示す例があるが,このような場合,日本語では,該当する語句に圏点を付ける,その語句を山括弧〈〉でくくる,なかには,その語句をゴシック体にしている例もある.いずれにしても,イタリックにならい斜体とする方法は,通常は採用されていない. 注 日本語の斜体 日本語フォントにはラテン文字のイタリックに相当するスタイルはない.日本語の斜体はイタリック体とは異なる.ラテン文字のイタリックは,ローマン体とは別にデザインされたものであるが,日本語の斜体は,元になる字形を変形したものである.ラテン文字でいうスラントに該当する. - 逆に補足説明(強調の逆),あるいは追加情報を示すために,それらを丸括弧でくくる.この方法は英文とほぼ同じである.丸括弧でくくった箇所の文字サイズを変えない方法と,くくった箇所の全部または一部を1段階小さくす方法とがある.また,丸括弧でくくったテキストが文中にある場合,後ろの括弧の直前には句点を入れないが,括弧でくくった部分が独立している場合は,句点を入れる方法が多い. - 丸括弧でくくるかわりに,2倍ダーシでくくる,または文末で2倍ダーシで始める方法がある.この用法は英語の全角ダーシまたは二分ダーシで文をくくる用法と似ている. - 文中に引用文を挿入する場合は,かぎ括弧または,横組でコーテーションマークでくくる.引用文を段落を変えて示す場合,一般に字下げなどを行い,執筆者のテキストと区別している.最近はフォントを変える例もある. - 引用する場合において,引用者が引用文に注記・補足を付ける場合,ブラケット[]又はキッコウ〔〕で括る. 注 引用者が引用文の注記・補足 引用者が引用文の注記・補足を示す場合,ブラケット[]を使う方法は英語とほぼ同じである.ただし,キッコウ〔〕はブラケット[]に似せて日本で作成された括弧なので,縦組で主に使用されている.翻訳書では,引用の補足として原著者のものはブラケット[],翻訳者の場合はキッコウ〔〕と使い分けている例もある.このブラケットなどの使用は,凡例等で説明して使用している場合と,説明しないで使用している例がある.したがって,この用法は,ほぼ確立されているとはいえるが,明確に確立された方法とまではいえない. なお,参考までに,強調の方法の例を以下に示しておく. - 括弧でくくる - 山かっこ - かぎ括弧 - 丸括弧(補足説明等) - 隅付き括弧【】(強調) - 文字列の前後に記号を付ける - フォントを変える - ゴシック体 - 太字にする - その他 - 文字サイズを大きくする(小さくする) - 圏点を付ける - 下線,傍線を付ける - 文字に色を付ける - 文字の背景に色を付ける - 字間を空ける なお,ルビが付いた文字列に圏点で強調するという場合があるが,見た目のバランスもよくなく,また,ケースによっては,行間を変更する必要が出るときもあり,望ましいものではない.以下のような代替的な方法が考えられる. - 強調する方法はいろいろあるので,圏点や傍線とは別の方法にする.たとえば,語句の強調であれが該当の語句を山っこ(〈〉)などでくくる.ある程度の長さのある文字列が該当する場合は,ゴシック体などフォントを変える又は太字を使用する. - ルビの代わりに親文字の直後にルビに該当する文字を括弧内に示す. - 圏点を付けたい文字列の途中の語の場合,ルビが付く箇所だけ圏点を付けない.
Received on Thursday, 21 August 2025 04:41:31 UTC