- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Thu, 13 Mar 2025 13:52:28 +0900
- To: Yasuo Kida <kida@mac.com>, JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
木田 様 小林 敏 です. 活字組版では,字間を調整するスペースという材料を使って字間を空けます. ですから,どのようなスペースが,その印刷所に準備されていたかにより,空ける方法は変わってきます.ですから,行の処理可能な箇所を均等に空けるという方法ではなかった. そして,校正者は,その印刷所で,どのようなスペースが準備されているかを知っている必要があったのです(でも,すべてそうかというと,少々あやしい,印刷所ませということもあったようです). 8, 9, 10ポイントでは,全角未満のスペースとして,二分,三分,四分が基本です.ですから,行の調整処理で,全角分の字間を空ける場合,四分スペースを4箇所に入れていました. その4箇所は,どこかは,いくつか考え方があり, 1)できるだけ行末がよい. 2)漢字より仮名の字間がよい. 3)語句の区切りがよい. 3)の例はあるが,少数派です.一般に1)が多い.その際に2)を考慮するケースもある. ただ,四分は,やはり空きすぎです.そこで,印刷所によっては,八分,あるいは,1ポイントというスペースを準備したところもあります. 8ポイントの場合,1ポイントは八分ですからよいのですが,9ポの場合,1ポイントスペースは,二分の処理ができないので,私の関係した仕事では,八分を使っていました. ところで,1ポイントにしても,八分にしても,金属の材料としては,とても薄いので,扱いがけっこう大変です.そこで,私の関係した仕事では,7ポイントは六分を使って調整していました.ですから二分の調整は3箇所,全角の調整は6箇所にスペースを入れていた.(7ポという文字サイズも,実は,多くの印刷所が準備していたわけではなかったので,これを知っている人は多くなかったのではないかな.) この調整処理は,めんどうな作業ですので,空ける箇所の選択は,初校,つまり最初の段階では,原稿に指定しないで(そもそも原稿段階では,調整箇所を知ることは簡単ではなかった),現場の植字担当者にまかせられていました. 初校で,調整箇所を指定して直させることは,一般にしません.めんどうな作業なので,割り直しはするな!ということも言われていました.ですから,初校で赤字が挿入された結果,字割した箇所は行末から移動しても,それはそれでよいとしていました. ただし,初校や再校で,調整の必要が出た場合,つまり,新たな字割する箇所が出た場合,校正者が,どこを空けろ,という指示をすることはありましたし,私は,原則として,その指示を入れていました(もちろん,詰める調整が可能な場合は,どこを詰めろという指示もしていた). この調整は,活字組版では,個別処理ということですので,こうしたことが好きな校正者(私みたいな人)は,“よし,おれにまかせろ,うまい具合に調整してやる”とはりきったものです. 特に調整量が大きくなり,2字分の調整をする,あるいは,あと1行だけ行数が減るとうまいこといくんだが,といった場合は,よろこんで調整箇所を工夫したものです. Yasuo Kida さんwrote >敏先生、 > >金属活字で行の調整がどのように行われていたかについて質問です。 > >例えば、一行20字の時、全角一つ分のアキが出てしまったとすると、それぞれの文字 >の間に全角の1/19の幅のアキを開ける必要がありますね。これが一行21字なら1/20幅、 >22字なら1/21幅、というふうにいろんな幅のアキが必要になります。が、現実的では >なさそうに思えます。どんな工夫があったんでしょう? > >木田
Received on Thursday, 13 March 2025 04:55:06 UTC