Re: 全角という用語の使用状況

敏先生、

考えを整理するのに大変有用なまとめ、ありがとうございます。コメントをインラインで。

> 2024/07/09 17:03、Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>のメール:
> 
> 木田泰夫 様
> みなさま
> 
>  小林 敏 です.
> 
> 全角という用語の定義が問題となりましたが,その使用状況は,主に以下.
> 
> 1 段落先頭行の行頭を全角下ガリ

それがデジタルで正しい方法かどうかは議論が必要ですが、全角下がりは全角スペース文字の最も頻繁な用途の一つでしょうから、フォントを設計する際、全角スペースの幅の設計はその使い方が考慮されるでしょう。すなわち、プロポーショナルなフォントにおいても、デザイナーが意図した行頭の下がりの標準的な幅は、そのフォントの全角スペースの幅だと言って良さそうです。

> 2 分かち書きでは,単語又は文節の字間(語間)として全角アキ

これはそもそも全角スペースである必要はあるのでしょうか? 私の感覚ですが、全角スペースの幅は広すぎるように感じます。もしくは、それが視覚障害者のために行われるなら、固定幅ではなく調節可能である必要があるかもしれません。

同様な例ですが、苗字と下の名前を全角スペースで区切る場合があります。私はこれも広すぎるように感じます。例えば私の名前は「木田泰夫」であって「木田 泰夫」ではないよ、と。首をちょん切られたようです。苗字と下の名前を判別するために何らかのセパレーターが必要ならば、仕方がないから「木田 泰夫」くらいならギリ一体に見えるので仕方がないか、という感じの感覚です。

全角スペースしかなかったから、もしくは行の調整を避けるためにそれが最適だったから、という理由で、全角や半角の単位が使われている、のかもしれない場合が他にもあるかもしれません。

> 1と2は,プロポーショナルな全角スペース(以下,“変”という)でよい.つまり“変”ということで矛盾なく,全角という用語は使用できる.
>  
> ただし,ここの箇所では,プロポーショナルな場合,又は字詰め方向の字幅を一律に変更した場合は,全角スペースと同じアキを確保するという言い方にすれば,これまでの定義の“全角”という用語は使用できるし,誤解を与えることもない.
> 

> 3 括弧や句読点の字幅は全角と考える.
> 
> この3がむつかしい.プロポーショナルな場合,全角スペースと括弧の字幅が同じとは保証されない可能性がある.また,プロポーショナルな場合の括弧の連続はどうするの,という点では,共通理解はできていない.

共通理解ができていないというのはとても重要な点ですね。jlreq-dでは共通理解があると合理的に判断できる範囲の記述するしかありません。

3, 4は、そもそも基準を示す必要があるのか、何らかの基準を示す必要があるとしたらそれは何か、という基本に立ち戻った議論をしても良いかもしれません。

英語ではどうなっているんでしょう。例えば、英語の組版規則の中に、括弧はem widthの1/3とか書いてあるんでしょうかね?

> となれば,この約物の字幅と,その連続の問題は,あくまで文字の外枠が正方形の場合に限定するという説明を入れれば,よい,その場合,プロポーショナルな場合は,それなりに,他とのバランスをとり詰める必要があるよ,いうことだけ書いておくという方法もありえる.

内容自体は単なる例ですが、逆に一般的な場合を主にしてこんな風に書くのはどうでしょう?

「開き括弧は、前の文字との間に空間が必要であって、タイプデザイナーはその空間をボディーに含める必要がある。それが行頭に来たり連続する場合にはその空間は削除する必要がある。その量をフォントの機能(halt/chws)により指定する。和字が等幅の場合にはその空間は全角スペースの幅の半分が標準的である。もしくは、括弧の字形の幅と同じ幅が標準的である」

ここでは、プロポーショナルであっても長体でも扁平隊でも全角でも共通に言える普遍的な考え方をまず説明しています。その後に、典型的な場合について、具体的な量を記述しています。

> 4 連続した場合,その字間を二分だけ狭くする(二分詰める)
> 
> これも3と同じ
> 
> 約物の字幅と半角(字幅を二分)と考えた場合,その間は二分アキ
> 
> これは,補足説明なので,そのように書くことは可能.
> 
> 5 ラテン文字と和文文字の間は,四分アキ,八分アキ
> 
> これは,プロポーショナルな場合は,“変”でよいが,全角スペースの幅の1/4,1/8という言い方もできる.

これは全角スペースの幅、もしくは他の何らかの幅でも良いのですが、を基準としてコレコレが標準的、とか言えますね。この場合は全角は単に長さの基準として使われているだけで、他の量を基準としても全く問題がないと言えます。

> 6 行間は,二分アキとする例がある.これは文字サイズの1/2という表現で代替できる.

これは、文字の行送り方向の幅の半分、という意味でしょうか? 文字サイズと言ってしまうと常に縦方向の幅ですので、縦書きにとっては文字送り方向、横書きにとっては行送り方向の大きさになってしまいます。これが問題となるのは長体や扁平体の場合ですが、これらの場合には、どうなるんですか?

とても基本的な質問ですが:従来の組版規則はフォントにある和字のグリフが統一した大きさの正方形であることを前提に書かれています。しかし、デジタル以前にも、長体や扁平体がありました。これらは従来の組版規則の埒外の存在だったのでしょうか? それともそれらを正方形の形に仮に変形させて、その上で組版を行い、そして元の比率に戻す、と言った考えだったのでしょうか?

> 何が言いたいかというと,新たな全角の定義はやめることもができる,ということ.そうなればJLReqの“正方形の文字の外枠をもっている文字”の定義も,jlreq-dでも利用できる.

新たに「全角」は定義しようとは言っていません。私が提案したのは「全角幅」です。もちろん、別の言葉でも良いと思います。例えば「全角スペースの字送り方向の幅」とか。

> ただし,現在の私の原稿では,“正方形の文字の外枠をもっている文字”という意味では全角という用語は使用していない.すべて言い直している(あくまで“言い直しているつもり”).
> 
> ただ,新たな定義をしない場合,5の問題が残るが,プロポーショナルな場合は,全角スペースの字幅の1/4又は1/8という言い方を付加すれば可能になる.
> 
> どうも“全角幅”という言い方,“馬から落馬した”みたいな印象があり,ちょっといやだな,という感覚があり,5を考えると,“二分”,“四分”や“八分”も連動するので(二分は英語では“en”で,二分の定義が変われば,“en”の定義も変わる).英語の定義を変えたくなければ,“二分幅”,“四分幅”や“八分幅”といわないといけないと思うのです.
> 
> 全角の定義を変えるというのはいいように思ったのですが,英語のemの定義を変えないということになれば新たに“全角幅”という用語を作ることになる.それはそれでいいのですが,ただ,新たな用語を作ることは,その理解を得るのにけっこう苦労する点もあるのも,少し気になります.


私の問題意識は、従来の組版規則が、統一した大きさの正方形を強く前提としていて、扁平や長体でさえ扱っていないのは問題である、ということです。記述は共通理解の範囲内ではありますが、もっと一般化されるべきで、そのために、字送り方向の幅(および別個に行送り方向の幅)の基準を作りたいということです。

木田

Received on Wednesday, 10 July 2024 01:21:25 UTC