RE: 3章と4章(ルビ)のドラフト

木田さん


  *   1. 異なるサイズに対して空きを調整する:フォントが意図しているサイズ範囲を超えたサイズで使用すると、字間が開きすぎに見える。またより小さいサイズで使う場合にはより大きな字間が必要。これを補正するため。


それは、オプティカルサイズを補正するという目的ですが、それ以外の目的としては、次の2にも関係していますが、必ずしも2と完全に同じではない目的としては、組み上がりの視覚的効果として、全体により詰まった(tighter)にしたい場合には、オプティカルサイズとは関係なく、詰める場合はあるでしょう。これは広告やパンフレットやパッケージなどのデザインや、写真雑誌などでのコピーなどで、全体のレイアウトのデザインとの視覚的な調和という観点から字間を調整することはあり得ます(見出しの場合が多いでしょうが、必ずしも見出しに限定されないと思います)。これは、木田さんが書かれた3に該当しますね。


  *   2. 視覚的に一貫性のある文字と文字との間の空間を得るため:読みやすさを重視すると、全角進行のリズムが重要になるが(ほんと?)、フォントによっては特に仮名部分の字間の大きさは不均一となることがある。字間を視覚的に均一にするため。

「読みやすさを重視すると、全角進行のリズムが重要となる」とは言えないと思います。なぜなら、ベタで組んだから読みやすくなるとは限らないからです(文字サイズ・行長・行間・書体・紙質などいろいろな要因が読みやすさに影響を与えます)。本文組版で、特に文庫本などの文字サイズが小さい場合には、ベタが読みやすくなるのが通常ですが、これはその本文用書体が本文用として正しくデザインされているからです。

また、画集や写真集や豪華本などで、数十ページにわたる序文などの本文を詰め組みにする場合もあります。比較的大きな文字サイズで、詰め過ぎずにゆるく詰めた場合には、必ずしも読みやすさが減じるということはないと思います(これは私の主観的印象かもしれませんが)。もちろん、和文の本文組版ではベタ組が基本というのは絶対的な原則で、多くの場合にそれが読みやすいのですが、その慣習が確立した理由は、必ずしも読みやすさだけにあるわけではないと考えます。なので、大雑把には「本文ではベタ組が読みやすい」とは言えますが、それは常にどんな場合にもあてはまる一般的な真理であるわけではないと思います。

「フォントによっては特に仮名部分の字間の大きさは不均一となることがある」とありますが、通常の明朝体やゴシック体のフォントの場合には、どんなフォントでも多くの仮名文字の文字と文字の間の間隔は、物理的にも視覚的にもほぼ例外なく不均一です。このことは仮名の文字の形を全角の正方形に合うようにどれだけ歪曲したとしても、限界があるということを示していると思います。


  *   3. 目的の視覚的効果を得るため(new!):例えば商品名やメッセージを目立たせるために、字間を大きくあける、また一塊感を出すために字間を詰める。

これは私が上に述べたこととに該当します。


  *   さて、山本さんの文を読ませていただいた上で、残っている疑問があります。日本語OpenTypeを使うと、文字間をコントロールする方法として非常に多くの手段があります。
a. 全角のまま均等に詰める、広げる
b. palt/vpalで全角文字に対してプロポーショナルな幅を与え、そのまま使う、詰める、広げる
c. pwidやpknaでプロポーショナルな字形にし、そのままつかう、詰める、広げる

  *   これらの長短、目的などう異なりましょう? a.は日本語書体でオプティカルサイジングを実現した場合にも与えられる効果の一つでしょう。つまり、等幅進行はそのままで空間を調節する。bとcは両方ともプロポーショナル幅になるという意味で似ています。

均等に詰めたり空けたりする操作(これはtrackingと呼びますが)は、その対象のグリフが等幅であるかプロポーショナルであるか、ベタ組であるか詰め組であるか、和文であるか欧文であるかに関係なく、行えます。全体に均等に文字と文字との間隔を調整することができます。なので、長短の問題ではありません。字間を詰めた方が良い場合、空けた方が良い場合に、必要に応じてtrackingを行います。必要がなければ行わないだけです。もちろん、字間を詰めた方が良いけれどもベタ組の方を優先したいという理由で、trackingをしない場合も多いと思います。トレードオフがあります。その判断はデザイナーが行います。(デザイナーが判断を間違えると、悪い結果になります。よくあるのは、小さな文字サイズの和文のテキスト全体にtrackingすると漢字が詰まり過ぎることです。和文で写植時代に「1歯詰め」と呼ばれましてtrackingと似たことが行われましたが、例えば本文が12Qの場合に1Hも詰めると、どうしても漢字が詰まり過ぎる傾向があります。それでもタイトに組みたい場合に行われましたが、推奨はできません)。

全角と詰め組の目的や効果の違いは既に上に述べました。pwidとpknaはGSUBなので、メトリクスだけを切り替えるのではなく、グリフもプロポーショナルに適したデザインに切り替えることができます。(ただし、現行のAdobeのフォントでpwidとpknaを使うことで和文の等幅グリフが実際にプロポーショナルになるフォントはなかったと記憶しています。ただし、’pwid’は欧文や数字のグリフをプロポーショナルにする目的では使われていると思います。ただ、この点は記憶が曖昧なので、後でもう少し調べてみますが)。

山本太郎

Received on Tuesday, 9 July 2024 01:00:49 UTC