Re: 3章と4章(ルビ)のドラフト

木田泰夫 様
みなさま

 小林 敏 です.

  木田泰夫 さんwrote

>敏先生、山本さん、

>3.3.3.4に反応しましたが、私がお送りした1,2,3の例は実際には「3.3.1 漢字や仮名等の字間処理の種類」「3.3.2 字形に応じた詰め組の基本的な処理」あたりの内容ですね。3.3.1のc/dあたりに該当します。ただ、jlreq-dの第3章以降はノウハウのではないので、まずどのような要件・要求があるかを説明するのが重要かと思います。その要求を達成するために何を行うか、その達成方法が詰め組みだったり、プロポーショナルやカーニングだったりするのだと思います。

前のメールに書いたように,3.3.3と3.3.1の説明内容はダブっている事項もあり,まとめる必要があるかと思います.

>その意味で、詰め組みやプロポーショナルな文字配置はどのような要求に応えるためにあるのでしょう? 私の理解は下の二つですが、これで正しいでしょうか?

>1. サイズによる空きの調整:フォントが意図しているサイズ範囲を超えたサイズで使用すると、字間が開きすぎに見える。またより小さいサイズで使う場合にはより大きな字間が必要。これを補正するため。

>2. グレートーンを揃えるため:読みやすさを重視すると、全角進行のリズムが重要になるが(ほんと?)、フォントによっては特に仮名部分の字間の大きさは不均一となることがある。字間を視覚的に均一にしグレートーンを揃えるために行う

本文組でのプロポーショナルな文字配置は,2ですが,雑誌などでは,グレートーンをそろえる目的があることと,読みやすさを念頭においているものと思います.書籍ではグレートーンをそろえる必要性は,あまりないと思われるので,読みやすさを念頭に選択されているものと思われます.

ただ,実際に読みやすいかどうかは,はっきりしていなく,それぞれの経験の中で,そう思っているのでしょう.そこには読者の経験という要素も入ってくるので,評価は簡単ではありません.

1の問題は,それとは似ていますが,ちょっと異なります.活字では,特にラテン文字では,文字サイズごとに原図を変え,それに応じて母型も異なります.3.3.3にも書いたように,線の太さや,文字幅,サイドベアリングの大きさなど,文字サイズに応じて変えていたのです.こうした事情は和文活字でも同様です.ただ和文活字は文字数が多いので,文字サイズごとに原図を変えることは無理があります.文字サイズに応じ,およそ3段階程度の原図を作成します.母型は文字サイズごとに作成できますので,そこで字面のサイズ等は調整が可能です.

ところが,手動写植やコンピュータ組版,今日のWebでもそうだと思いますが,基本的に元データを文字サイズごとに比例して拡大・縮小します.サイドベアリングも比例します.そうなると,特に大きなサイズになると,字間のアキが空きすぎに見える場合が出てくるのです.(明朝体の漢字の縦線と横線の比率もそのまま比例して拡大・縮小するので,本文では適切でも,大きな文字の見出しでは,画線が細すぎる印象を与えます.)(こうした事情がバリブルフォントが求められることになると思います,)

このことは約物の配置でも出てくる.見出しでは,括弧や句読点の前後の二分アキが目立つのです.そこで見出しなどの句読点,括弧類の前後の二分アキをベタにした例もけっこう目にします.四分アキにした例もあります.

ですから,以下の組合せがあるし,aの書籍は多くはないがあります.bはけっこう目にします.私はc(四分アキ)です.
a 本文も見出しも詰め組
b 本文はベタ組であるが,見出しは詰め組
c 本文はベタ組,見出しはベタ組であるが,括弧と句読点をベタ組又は四分アキにする

>その方法として、下のような方法がある。
>
>>>>> 1. プロポーショナルな文字幅で作られたフォントを用いる
>>>>> 2. 全角幅が基本であるフォントにおいて、プロポーショナルに作られた代替グ
>>>>> リフを使う機能をスタイルで指定する(pwid, pknaのこと)
>>>>> 3.全角幅が基本であるフォントにおいて、全角幅で作られたグリフに対し、文字
>>>>> ごとにボディの横幅を文字間の空間が均等になるように調整する機能を使う
>>>>> (paltのこと)

>大抵のCFF OpenTypeの日本語フォントでは、paltで全角グリフはそのままにプロポーショナル幅にする方法と(3.3.1 d)、pwid/pknaでプロポーショナルなグリフにする方法、また書いていませんが、均一の詰めを適用する方法(3.3.1 c)があります。これら複数の方法がある理由はなんでしょう。目的の差があるんでしょうか?

私はわかりません.山本さんお願いいたします.

ただ,歴史的な経過があったのでしょう.ただ,全角で配置する仮名は,全角ベタ組で配置することを前提に文字を設計しています.その文字のサイドベアリングの値を変えることでプロポーショナルな文字配置を実現している.これに対し,pwid/pknaでプロポーショナルなグリフにする方法は,プロポーショナルな文字配置を前提に文字を設計できますから,それが適切にデザインされているのであれば,よりよい選択ができる可能性がある.また,横組と縦組用に適切な文字を設計し,それでプロポーショナルな文字配置ができれば,それはよいことでしょう.

ところで,プロポーショナルな文字配置以外に,均一の詰めを適用する方法は,過去のいきさつからいえば,自動処理でプロポーショナルな文字配置が技術的にできなかったので,その代わりに利用されていたという事情はあります.(ただ,均一な詰め組は,プロポーショナルな文字配置が可能なんだから,それはよくないと山本さんは主張されています.)

なお,見出しなで,字割といって,少ない字数の際にバランスを考え,字間を空けることがあります.この場合に均一なアキの処理を行うことがあります.

また,DTPですが,あとちょっとどこか詰めるうまくいくんだがな(無理な調整や行数を減らせる等)というケースでは,仮名部分を,ほんの少し均等に詰めるという処理は,私はけっこうやっていました.

さらに,書名や主な見出しで,文字の組合せに応じ,個別に字間を調整する場合は,いろんな手法を組合せて,調整することも行ったきました.

Webでも,本文は無理でも,大きな見出しなどでは,個別に字間を調整することはけっこうやっていると思います.その場合,Illustratorで,まず調整し(見た目で確認できる),その結果を書きだして,CSSの指示を行うということもやっているようです.

Received on Sunday, 7 July 2024 04:41:31 UTC