- From: 木田泰夫 <kida@mac.com>
- Date: Tue, 7 May 2024 08:31:57 +0900
- To: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Cc: JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
敏先生、ありがとうございます。ずいぶん考えがスッキリしました。 > jlreq-dでは,レイアウトの要素も,組版の要素も含んでいると思います. これですね。組版と(テキスト)レイアウトは同等な、置き換えられる用語というよりは、重なりはあるけれど範囲が異なる。適宜使い分けるのが良い、と言えますかね。 英語でその両方の言葉が使われているのは、無意識的に、もしくは意識的に、使い分けられているのかも知れません。 その意識で、組版と(テキスト)レイアウトの意味を整理すると: 組版:書体を選ぶ、いわゆる行組版のルール、行長、行間くらいまで。行長行間は、テキストの読みやすさという観点であくまでもテキストが視点。それ以上の単位、例えばパラグラフスタイルは含まれない。テキストレイアウトと重なりはあるが、文字から行を組み立てゆく部分。 (テキスト)レイアウト:ジャスティフィケーションするかしないか、行長や行間、パラグラフのスタイル、など。行長行間は空間の中にテキストの四角がどのように配置されるかが視点。組版と比較して、俯瞰して面の中のテキストを見た時の様子を対象とする感じ。 どんなもんでしょうね。 例えば、「リフローを起こすのは、環境に合わせて柔軟なレイアウトがなされるから」が比較的しっくり来るのは、行の中身ではなくて、行の空間への配置的な視点がそこにあるから。 (テキスト)と括弧書きにしたのは、多くのコンテキストで省略して単にレイアウトって書くだろうな、と。 さて、そう理解した場合、一つの大きな課題が。ではさてjlreq-dの日本語タイトルはどうあるべきでしょう? 一言で言ってこれは何を書いている文書でしょう? 英語では text layout と言い、日本語で「組版処理」と言うのは、上の理解の元ではちょっと気持ちが悪いですよね。今すぐ決める必要はないですが、課題として考え続けましょう。 (それとは別に「要件」も結構難しい単語ですよね。もはや記憶が不確かですが、私はこの文書でこの単語に初めて出会った気がします) 木田 > 2024/05/06 13:31、Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>のメール: > > 木田泰夫 様 > みなさま > > 小林 敏 です. > > DTP以前は,“組版”と“レイアウト”は,仕事そのものが分かれていた. > > 組版は,印刷所の仕事で,原稿に指示された組版の指示に従い,“版”または“元になる版”を仕上げる仕事です.原稿に指定された組版指示は完全,すなわち細部まで,くまなく百パーセント指示されているわけではなく,約物の配置法などは,ある種の慣例,または組版現場の慣行に従っていたので,細部に限れば組版設計の一部も担っていたといえないことはないが,組版の担当者は組版設計をしているという意識はなかったでしょう. > > あくまで,与えられた指示に従い,文字や図版等をページに配置し,印刷の元になる版,またはその元になる版を作成する作業です. > > これに対し,“レイアウト”は,今ではほとんど使用されていない“割付”ともよばれ,文字や図版等をページに配置するという設計,デザイン(この言葉も多くに意味を持っているが)の仕事です.この仕事は,かつては出版社の編集者の仕事でしたが,今日では,エディトリアルデザイナー(あるいはグラフィックデザイナー)が担当することが多くなっています. > > DTPでは,2つの方法が考えられる. > a デザイナーがレイアウト(組版設計)を行い,DTPオペレーターが実際の組版作業(DTPの作業)を行う. > b デザイナーがレイアウト(組版設計)を行い,と同時に実際の組版作業(DTPの作業)を行う. > > 私が,少し前まで,依頼で書籍の仕事を何件か行ったことがありますが,全部がbでした.(原稿のリライトから,原稿整理も行うことが多かった.あらかじめテキストエディタで機械的な整理を行い,そのうえで,InDesignで原稿整理をしながら組版も同時に行っていた.) > > さて,デジタルテキストでは,どう考えたらいいんでしょうか? > > レイアウトの意味は,はっきりしています.つまり文字や図版の配置の方針を決めることです.(そして,その設計の結果として実現された配置もレイアウトというでしょう.) > > Webで考えれば,HTMLファウルの構造や,CSSで指示する内容を設計することです. > > テキストエディタとか,その他のメールソフトの場合は,“表示設定”等で指示する内容を決めることです. > > では,組版とは? これがむつかしい.これまでの仕事の分業で考えれば,以下のようにもなる. > Web:HTMLファウル及びCSSファイルを実際に作成する.つまりコーダーの仕事 > *でもコーダーの仕事は,組版といえるかなあ? > テキストエディタとか,その他のメールソフトの場合は,“表示設定”等で指示すること. > *これも組版といえるかなあ? > > こう考えてくると,仕事での分業ではなく,デジタルテキストでは,以下のよう考えることはできるかもしれないが,ちょっと自信はない. > レイアウト:画面に表示される文字・図版等の配置の設計,及び実際に表示された結果 > 組版:文字・図版等の配置の設計に従い,実際に表示が行われるための準備作業及び表示の処理 > > jlreq-dでは,レイアウトの要素も,組版の要素も含んでいると思います. > > 以上は,木田さんの疑問に直接は答えていません.その前提の話.以下で,簡単にコメントしておきます. > > 木田泰夫 さんwrote > >> 組版、とレイアウト、は文字に限定するとほぼ同じ意味でしょうか? さらに、jlreq-dで「組版」という用語を「レイアウト」または「テキストレイアウト」に置き換えても問題ないでしょうか? > > 実際の説明の内容によるので,一般的には答えにくい.前に書いた内容からは,区別が必要にも思われる. > >> 質問の意図は、書いていて、「組版」という用語はどのくらい一般的なのかな、「テキストレイアウト」の方が分かりやすい可能性はある? と思ったことです。例えば、リフローを起こすのは、環境に合わせて柔軟なレイアウトがなされるから、と言った方が分かりやすそう。 > > “レイアウト”は,一般の人でも理解できる用語,“組版”は専門用語,ただし,jlreq-dの読者であれば,知っていると考えてよいのではないか. > > そして,例の問題は,表示された結果も含め,さらにこの文脈では,“環境に合わせて柔軟なレイアウト”は“環境に合わせて柔軟な設計”ともいえるので,レイアウトと言えると,思う.しかも,言いたいことは処理内容ではなく,設計の問題が主のように思うので. > >> 「日本語組版処理の要件」の英語のタイトルの「組版」部分はtext layoutです。また組版にはtypesettingという訳もあります。この二つの似た用語の微妙なニュアンスの差を考えると、jlreq-dの扱う内容全体はtypesettingに近いのかな、と思ったりもしますが。JLReqの英語版ではlayoutという用語とtypesettingという用語が明確な差な使われているように思います。 > > jlreq-dで扱う内容は,第一に“typesetting”だと思うが,設計の要素も含んでいるので“text layout”も含んでいるのではないかな.
Received on Monday, 6 May 2024 23:32:15 UTC