- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Thu, 07 Sep 2023 09:53:11 +0900
- To: MURATA Makoto <eb2m-mrt@asahi-net.or.jp>, JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
MURATA Makoto 様 みなさま 小林 敏 です. 漢字が読みにくい場合,簡単には文字サイズを全部大きくしてもよいかもしれません. それから,たしかに指摘されているように仮名と漢字の黒味は一様ではありませんが,活字組版では,昔から,そのバランスに苦労してきたともいえます. まず,仮名と漢字,このバランスですが,仮名をやや小さくすることで,主要な語句を漢字にし,その他を仮名にすることから,いくぶん差を付けてきました.ただ,新聞のように,その差があまりない例から,イワタ明朝オールドのように,それなりに差を付けた例があり,その対応は一様というか,多様です.新聞は,もともとが小さいので,仮名も小さくできないという事情はあったのでしょう. 漢字も例えば,“口(くち)”という文字は,イワタ明朝オールドはとても字面が小さい,これに対しリュウミンはとても大きい.(つまり対応は一様でない) *ちなみに,最近の中公新書の本文は,イワタ明朝オールドを使っており,岩波新書は決まっていませんが,リュウミンという例もある(ヒラギノが最近は多い).(ついでに講談社の現代新書は秀英明朝) 次に,漢字の黒さです.これもけっこう苦労していたのです.現在でも,テキストを読んでいて,何か違和感を感じる文字があります.位置やサイズ,黒味などが他の文字とバランスを欠いているという例です.1950年ころの本を読むと,けっこうあり,最近でも少ないですが,“えっ”と感じる例はあります. そこで,活字では,デジタルなフォントと比べ(これも考え方如何ですが),けっこう手直しができ,その作業も行われてきてのです.日常的に校正作業で滅字の校正記号がつく字があり(傷がついた文字だけでなく,他の字とのバランスがこわれた文字にも記号を付けられた例がある),そこで母型が手直しされていたのです. また,特別に字間ベタ,行間ベタに文字を組み,全体を眺めると,異質なものが目に入ることがあります.こうした検査も行われていたのです. つまり,明朝体が主ですが,長い時間を掛けて,全角でベタ組の文字に対応できえる文字として鍛えられてきたのです. デジタルとなり,いろいろの選択肢が可能になったのですから,これからは,全角でベタ組の以外のいろいろな文字配置が考えられてよいと思います.ただ,これは一般的な言い方でなく,具体的にこのような配置が考えられ,そこにどんなメリットがあり,どんなことが問題となるか,それを具体的に考える必要はあると思っています.それが我々の課題かと思っています. その第一候補は,日本語のプロポーショナルな文字を前提にした組版です.ここでは,約物のアキがまず問題になります. MURATA Makoto さんwrote >仮名と漢字と句読点に限っても、全角領域のなかで前景色と >背景色の割合がぜんぜん一定しないというのは、果たして >どうなんでしょう。なお、漢字がすべて真っ黒な四角に見える >ディスレクシアがいるようなんですが、画数が多い漢字は >大きくたって良いんじゃないか、そのほうが読みやすいんじゃ >ないかと思ったりします。
Received on Thursday, 7 September 2023 01:03:04 UTC