- From: Taro Yamamoto <tyamamot@adobe.com>
- Date: Sat, 2 Sep 2023 08:43:19 +0000
- To: 木田泰夫 <kida@mac.com>
- CC: Tatsuo KOBAYASHI <tlk@kobysh.com>, JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
- Message-ID: <BL3PR02MB806830065173CB16E1715BE9CEEBA@BL3PR02MB8068.namprd02.prod.outlook.com>
木田さん、もうすこしコメントを追加します。ただ、基本的に小林さんが先のメールで述べられたことと類似した内容になってしまうかもしれません。 * 可変レイアウトではあらかじめ行長がわかりませんから、ワーストケースである短い行を考慮に入れる必要があります。例えば携帯電話の縦向きやウェアラブル端末で読まれる場合です。 行長が短い場合にはおそらく、その目的の違いによって、次の三つの場合が考えられます。 1. 多段組にすることで、1ページの収容可能文字数を最大化したい場合。典型的には新聞や雑誌です。広告スペースを効率的に配置する上でも、ページ上の隅々にわたって行を配置でき、ページレイアウトのオプションが増えるため多段組が有効と思われます。また、新聞の場合は速報性と作業効率が優先されます。 2. デザイン上、機能的あるいは様式的な要求から多段組にする場合、これは紙面をグリッドに分割して、文字が組まれる領域、図版の領域、何もない空間の領域とを、ダイナミックに紙面上に構成することを可能にするためです。グリッドをレイアウトのデザインのツールとして積極的に利用する場合です。写真や図版とを有機的に構成して視覚的な効果を高めようとする場合ともいえます。このような場合には、文字組のスペーシングは一貫性があって、一定のリズムがあり破綻がないことが重要視されます。 3. 見出しや小見出しで、通常は一行だけの場合が多く、複数行の場合でも、適当なところで改行して、ジャスティファイを行わない組み方をする場合。 1.の場合には、できるだけ全角及び半角の欧文・数字のグリフを用いることで、ジャスティファイした場合でも字間調整が発生しにくくする、発生したとしても調整量を最小化しようとするはずです。全角欧文や全角・半角の数字グリフの形が、プロポーション的に歪んでいてLatin文字のデザインの観点からは醜くなってしまうことは、さほど問題にはなりません。 2.の場合には、仮名ツメテーブル(GSUBテーブルの’palt’)を使った疑似的なプロポーショナルで組む、写植時代なら手で詰める(写植機上で詰めるか、切り貼りで詰める)、あるいは、ベタで組む場合には、改行位置の決定は段落単位ではなく一行単位で行い、禁則処理を追い込み優先(またはInDesignの場合であれば、調整量優先)にして調整量ができるだけ少なくなるようにするでしょう。参考までに、実際にこのように組んだ例を次のURLに画像で示します。 https://flic.kr/p/2oZr9Ho この印字見本の、下部の左右2つの違いは、禁則処理の方法が追い出し優先か追い出し優先(または調整量優先)の違いを示しています。 ここで、ベタで組む場合が、次の点に関係します。 * 私はまた次の疑問を提起しました。行の調整が入ると程度の違う字間の広がりを持つ行がバラバラ混在することになるが、それは許容できて、行長が整数倍でないことによる統一的な字間の広がりが許容できないのはなぜか、後者の方がまだマシな問題に思える。という問題です。この点についてはまだ理解できていません。文によっては欧文単語が多く挟まります。「ジャスティファイしても一切ばらけないのが常態」だからこの問題は無視できるとは全く言えないと思います。 欧文が挿入された場合には、「無視する」のではなく、無視せざるをえなくなるのです。しかし、ジャスティファイする場合でも、上の2の下線部で述べた方法で組めば、欧文が挿入されず、禁則が発生しない行になりさえすれば、ベタ組に復帰します。しかし、行長が文字サイズの整数倍でない場合には、ベタ組に復帰する可能性が完全に失われるのです。つまり、欧文が挿入されていようといまいと、どちらの場合も、その書体の書体デザイン本来のスペーシングで組むことが不可能になるのです。「行の調整が入ると程度の違う字間の広がりを持つ行がバラバラ混在することになるが、それは許容でき」る理由は、そのバラバラ混在する状態が、例外的な状態であることが原理的に認識されているからであり、ベタ組に復帰することが常に可能であることが保証されているからです。行長を文字サイズの整数倍にすることで、そのことが保証されます。日本語の文字の組み方を考える場合に、和欧混植の例を基準に考えることはできません。それは、禁則処理が例外的に発生する状況に対する措置であるのと同様に、和欧混植は、日本語の組み方にとっては例外なのです。(もちろん、その例外が発生した場合にどうすべきかは、それはそれで重要であることは言うまでもありません)。 当然、疑似プロポーショナルで、いわゆる「ツメ組」をする場合は、ベタ組はありえないので、現在の議論の範囲外で、上の3.の場合も行ごとに強制改行されてジャスティファイされないので調整量が発生しないため、直接的には現在の議論の範囲外でしょう。(ただし、ジャスティファイしない場合でも文字サイズの整数倍で行長を指定した方が良いと考えられます。なぜなら、行頭揃えからジャスティファイに行揃えの方法を切り替えた時に、ベタ組が実現できるからです。文字サイズの整数倍で行長を指定しないと、行頭揃えの行をジャスティファイした途端に、ベタ組ではなくなってしまいます。とすれば、ジャスティファイしてベタ組を行うのが日本語の組み方の基本であることを考慮すれば、文字サイズの整数倍で行長を指定できることは、ジャスティファイするかしないかに関係なく、重要なことだ言えるでしょう)。 山本太郎
Received on Saturday, 2 September 2023 08:43:32 UTC