RE: BudouX – 日本語の行の折り返し自動化

みなさま

 小林 敏 です.

ラギット(行頭そろえ)について

語単位での分割を基本とするラテン文字組版と,比較的分割位置が自由な日本語組版では,ラギット(行頭そろえ)の問題は,かなり異なります.そこで,ここでは日本語組版に限定したいと思います.

日本語組版のラギット(行頭そろえ)では,以下の2つに分けて考えた方がよいかと思います.

A 一定の禁則文字を除外して,それ以外の2行にわたる分割位置は,どこでも可能とする.

B 語または文節を単位に2行にわたる分割位置を決める.(この方式はアクセシビリティの対応から,このような方法を選択できることが望ましいでしょう.)

*なお,児童書等における分かち書きの場合.Aの方法も,Bの方法も行われている.

まずBから,この場合,ラギット(行頭そろえ)しか選択肢はないように思われる.

なぜなら,ラテン文字の場合は,語単位であるが,語間という調整箇所がある.これに対して日本語の場合,字間が主となる.日本語組版において,例えば1行の行長が40字の場合,行の調整を行う際に,字間を空ける調整量が,2字程度(本文文字サイズの2倍)であれば,まあ,それほど目立たない(組版を見慣れている人にとっては,2字程度の調整量は,かなり気になるかもしれない,ですので,活字組版では複数行での調整を行っていた).ましてや,語または文節での分割で行頭・行末そろえ(ジャスティファイ)にすると,かなりの長さの調整を字間で行う必要があり,字間の不ぞろいが目立ちすぎる,ことになる.

この方式の場合に,問題となるのは,一般的な段落の先頭行の行頭を1字下げるという処理では,改行位置で誤読というか,ややとまどいが生じる可能性がある,ことである.

この解決方法として,段落間を空ける方式が考えられる.この段落間を空ける方式は,短いテキストであれば,それほど大きな影響はないように思われるが,長いテキストの場合にどうかということを考える必要がある.というのは,最近,以下の本を読んだが,この本は(ラギット(行頭そろえ)ではなかったと思う),段落間(すべての段落ではないが)で,ほぼ段落単位で,その間を1行アキにしていた.この本は,流れよく読んでいけないように感じた.なにか,つっかえ,つっかえ読んでいるように感じた(つまり,段落間のアキの印象が強すぎる).それは,私の慣れの問題が大きいのかもしれない.
 岡嶋裕史著“Web3とは何か NFT、ブロックチェーン、メタバース”,光文社(光文社新書),2022年12月刊

次にBの場合,分割位置は,単語か文節かという選択の問題がある.この問題は,ローマ字書きを行うことから,以前は,かなり議論されていた.私は,実際の各行の長さが,あまり極端に差がでないように,教科書など教育的な配慮を必要とする場合を除き,単語の単位の方が望ましいのではないかと考えている.(ローマ字書きの分かち書きでも行われていた方式であるが,助詞は,前の単語に付属させるという折衷的な方式がよいように思います.折衷的な方法には,東大方式とよばれていた方式がある)

Aについて
この方式で全角文字をベタ組とする場合,多くの行で行末位置が揃う.したがって,一部で行末が空いていると,やや読んでいく場合は,その行末のアキが何を意味するか,とまどいがでる可能性がある,という点が問題となるように思います.ですから,可能であるならば,行頭・行末そろえ(ジャスティファイ)がよいといえるかもしれない.

ただし,プロポーショナルな文字を用いた場合は,事情が異なるので,行頭・行末そろえ(ジャスティファイ)にしなくてもよいかもしれない.

ですので,テキストの内容,読書対象,組版の選択等で変わってきますので,それに応じて方式を選択してくしかないでしょう.

なお,読みやすさについて,一般的なこと

1 読みやすさの評価は,多くは,読むスピードが問題とされるが,それも問題であるが,特に長いテキストを読む場合,疲労度が大きな問題のように思います.ですので,行長の長い場合や行間が狭い場合,読むスピードが,短い行長や適度な行間と比べて,それほど差がなくても,疲れやすさで大きな違いがあるように感じています.

2 人は,読みたいものは努力して読んでしまうので,少々の読みにくさは,問題としないかもしれない.

ですので,短いテキストでは,小さい字で行間を詰めても,少々読みにくくても,問題とならない.

Received on Monday, 17 April 2023 05:06:51 UTC