- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Tue, 12 Jul 2022 13:15:56 +0900
- To: Yasuo Kida <kida@mac.com>, Yamamoto Taro <tyamamot@adobe.com>
- Cc: JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
みなさま 小林 敏 です. 日本語組版では,山本さんの指摘されているように行頭・行末そろえが基本だという意見に,理由を含めて,その通りだと思います. そして,木田さんの指摘されているような実態もあると思います. 日本語組版の行頭そろえは,見た目のバランスが悪いという問題もありますが,なにより,考慮しないといけないのは,多くの行末がそろっているのに,一部だけの行の行末が空いてしまい,それが誤読される恐れもあるという点だと思います.この経験を紙の本では,たまにすることがあります.というのは,字間を全角アキにする例が,たまにあるからです.人名で,性と名の間を空ける例などです.もう1点は,行末が空いているということは,次の行で改行になると理解される恐れもあります. ところで,私は,毎週の土曜日と月曜日に新聞の書評をデータベースで読んでいます.原則として紙面どおりのPDF表示でなく,テキスト表示です.かなり書評は,それなりの分量がありますが,いずれも行頭そろえです.これを読んでいる経験からいえば,全角アキや改行の誤解は意外と経験しないな,ということです.その理由は,よくわかりませんが,紙の場合,紙面全体を見るのに対し,Webのデータベースでは,そこだけを読み,全体というか,ある程度の範囲を目にしないということかもしれません.もう1点は,段落の区切りが,段落間の行間を大きくするという方法が採用されていることが利用として考えられます.(新聞のデータベースのテキスト表示はどうなっていたか,よく覚えていません.これから注意してみるようにいたします.) Yasuo Kida さんwrote >山本さん、 > >> 生の原稿の「テキスト」をテキストエディターなどで、効率的に編集作業を行う場 >> 合などに、左揃えのテキストが用いられる場合があることは、当然で、それは目的 >> に適ったものと考えます。しかし、編集を終えた長文の「記事」や「雑誌」や「広 >> 告」や「商業印刷物」や「書籍」のテキストが左揃えになることは、特別の編集意 >> 図、デザイン上の意図をもって作られる場合を除いて、ありません。 > >山本さんが例をあげられたように紙への印刷のモデルではそうですし、その場合に両 >端揃えがほとんどであることに異論はないと思います。 > >ただ私は、ウェブやメールなど、デジタルテキストの話をしたいんですよ。これらは >国際化システムの上に作られていて、そのデフォルトは左揃えになっています。組む >前のテキストと組まれた作品という区別のない場合がほとんどです。日本語が入力さ >れている部分に対してはこのデフォルトを不十分・未完成として両端揃えに変えるべ >きだとの議論は可能だと思いますが、私は多くのテキストは左揃えのまま残るのでは >と考えています。紙の印刷、DTP の世界では、一つのルールが適用されるマーケット >がほぼ国内で閉じていますが、デジタルは世界共通の一つの仕組みで動いているとい >うのが一つの理由です。日本語をベースラインの上に組むという最悪な手段について >も同様です。もはや良い悪いの問題ではない、その前提で、jlreq-d ではベースライ >ンの上で左揃えで組まれた日本語を今より「まし」にする方法を考えたいのです。 > >デジタルでも、電子書籍や頑張って作られたWebページなど、ある労力を持って作られ >るような場合には両端揃えが現実的に可能ですし、これは残って行くと思います。こ >の場合には従来からの印刷の経験の蓄積を活かせるという点も大きいでしょう。例え >ばウェブで両端揃えがより簡単にできるような提案も可能かもしれません。これらも >議論したいと思います。 > >木田 > >> 2022/07/12 10:09、Taro Yamamoto <tyamamot@adobe.com>のメール: >> >> 木田さん、 >> >> 返信いただきありがとうございます。 >> >> > と言うことは、良い悪いは別として、もしそれが左揃えのテキストだったら、事 >> > 情が変わるということですね。 >> >> 生の原稿の「テキスト」をテキストエディターなどで、効率的に編集作業を行う場 >> 合などに、左揃えのテキストが用いられる場合があることは、当然で、それは目的 >> に適ったものと考えます。しかし、編集を終えた長文の「記事」や「雑誌」や「広 >> 告」や「商業印刷物」や「書籍」のテキストが左揃えになることは、特別の編集意 >> 図、デザイン上の意図をもって作られる場合を除いて、ありません。 >> >> > というのは、これも良い悪いは別として、私が日々目にする日本語は、その大半 >> > が、左揃えなんです。デジタルテキストです。なので、左揃えの日本語が美しく >> > なることに私は大きな関心があります。 >> >> 木田さんが「日々目にする」と言われているのは、テキストレベルでは編集済みか >> もしれませんが「組まれる前の」テキストなのです。日本語の組み方を考える場合 >> に、まだ組まれていない状態のテキストの状態を、日本語の組みの典型例としてみ >> なすことはできません。 >> >> 「左揃えの日本語が美しくなることに私は大きな関心があります」→ これ自体は可 >> 能です。しかし、それは前回のメールに書きましたが、原理的に一般的なルールに >> よって自動化可能ではないと考えます。誰かがそういうアルゴリズムを提案するこ >> とはありえるでしょうし、興味深い課題だとは考えますが、もしそうだとしたら、 >> それ以外のアルゴリズムも種々あり得るでしょう。そもそも「左揃えの日本語が美 >> しくなること」は、個別の事例ごとに著者や編集者との合意を得て手間暇かけて、 >> 作り上げるような事例が、稀に存在するということであって、美しい「左揃えの日 >> 本語テキスト」があり得る、ということが一般的に言えるわけではありません。と >> いうか、歴史的にそういうものは、一般的には、無かったのです。なぜ無かったか >> については、前回説明しました。和文の個々のグリフの字幅に変化がない(あるい >> はほとんどない)からです。一般的に無いものを、一般的に有るかのように考える >> のは危険だと思います。 >> >> 現在「日々目にする」と言われているテキストというのは、Webのことでしょうか? >> 日本語を組むことについて、Webの領域では、これまで不十分・未達成の事柄があ >> ったから、このような場で議論が行われているのだと理解していました。だとすれ >> ば、それがWeb上の日本語テキストのことを仰っているのなら、日々目にされている >> のは、いまだ不十分で未達成の状態のテキストなのだと思います。これは、Webを貶 >> しているのではなくて、DTPの世界でも、20年以上前は、全角ベースの日本語の行長 >> 設定、全角ボディ(及びそれを基準とするグリフ)の正しい位置決め、文字クラス >> の前後関係に依存したスペーシングなどを実現しているソフトウェアは希少でした。 >> だから、まともな日本語がPC上で多くの場合組めなかったのです。DTPの日本語の組 >> みが改善されてきたのと同様、Web上の日本語の組みも改善していくと考えています。 >> >> > この「固定的で硬直した」ですが、もし和欧間の間隔が行長の調節に使えるなら、 >> > 事情が変わることになりますか? >> >> はい。特に和文の中に(複数単語からなる)欧文が含まれる場合には、調整可能に >> した方が良好な結果が得られる場合が多いと予想します。事実、現在の多くの >> InDesignを含む日本語レイアウトソフトウェアでは和欧間のスペースは調整可能と >> なっています(調整不可=固定にすることも可能です)。また、従来の電算写植・ >> 自動写植システムにおいても、和欧間のスペースを調整可能としていた事例につい >> ては、小林さんへのコメントに記しました。 >> >> また、欧文の場合に、「単に段落設定の行揃えをflush leftやragged rightにして、 >> 手間をかけずに自動的に組まれた印刷物も沢山あるのでは?」と言われるかもしれ >> ません。たしかにそうです。「行末の視覚的な状態に無頓着であれば、行頭揃えで >> 組んでも構わない、だから自動化できる」ということには欧文については同意しま >> す(左揃えの完璧な最適化にはならないけれど、自動化は許容可能なクオリティで >> 可能といえるでしょう)。 >> >> しかし、同じことは和文の場合にはあてはまりません。欧文の場合には、字幅は、 >> 小文字のiと大文字のWでは3.5倍ほど違います。現在、和文も主に仮名文字などをプ >> ロポーショナルにして、いわゆる写植時代の「仮名ツメ文字盤」と同等のツメ組が >> 可能になっていますが、その場合でも、通常の(はじめからプロポーショナル書体 >> としてデザインされたわけではない)明朝体などでは「く」の横組みの字幅は >> 「わ」の字幅の85%ほどあります(縦組みの場合にはもう少し比率は大きくなるでし >> ょうが)。この和文グリフの字幅のダイナミックレンジの狭さは、書体のデザイン >> 自体が、例外はありますが、大多数が全角ベースのベタ組を想定して作られている >> からです。このことは、全角ベースの日本語の文字の組み方とそのために作られて >> きた多くの和文書体は、行頭揃えの組み方とは、原理的に、相容れない、というこ >> とを意味していると考えます。 >> >> 「左揃えの日本語を美しく」するには、日本語の書体デザイン、組み方の基本的な >> ルールを含め、あらゆるものを根底から変革する必要があると考えます。おそらく、 >> それは、きわめて興味深い課題ではありますが、現時点でここで取り組む必要のあ >> ることではないように思えます。 >> >> 以上、また長くなりましたが、私見まで。 >> >> 山本太郎
Received on Tuesday, 12 July 2022 04:18:25 UTC