Re: フォントと表示アプリの間の契約が必要

みなさま

 異論はないですが、現場の立場からの補足として、フォントの挙動でEPUB制作側として一番困るのは「挙動が統一されておらず、閲覧者が表示フォントを切り替えたら内容の意味合いが変わってしまうこと」です。意味合いが変わってしまう典型的な例としては、例えば矢印「→」の縦書き時の向きが90度回ってしまう、などがあり、これは実際一部のTrueTypeフォントからAJ1準拠のフォントに変えた際に向きが変わるのを経験しています。
 こういったフォントごとの振る舞いの違いは、DTP等で紙を最終出力先とする場合にはあまり問題になりませんでしたが、WebやEPUB等では大きな問題になる可能性があるものと思います。何らかの基準を設けての統一を望みます。

> 2021/03/11 15:37、MURATA <eb2mmrt@gmail.com>のメール:
> 
> みなさん、
> 
> この前、口頭で話したことを書いてみました。あとで、
> CITPCJの資料もお送りします。
> 
> フォントと表示アプリの間の関係を整理し、きちんとした
> 原則を立てるべきだと私は考えています。そうでないと、
> オープンなモバイル環境での文書交換に対処できないと思
> います。
> 
> 現状: フォントが提供するGSUBなどはただのヒントでしか
> ない。つまり、フォントはGSUBなどを提供する義務はな
> い。提供されていても表示アプリにはそれを尊重する義務
> はない。
> 
> フォント提供側からすると、表示アプリによってどの情報
> が使われ、どの情報が無視されるかは分からない。
> 
> 表示アプリ側からすると、どの情報がフォントの一部として
> 提供され、どれが提供されないかは分からない。
> 
> これまで何とかなったのは二つの理由による。
> 
> - オープンな文書交換をしない(表示アプリもフォントも決め打
>   ちでき、他での再生は考えなくてもよかった)。
> 
> - AJ1が規範として機能してきた。
> 
> 問題点
> 
> モバイルでの文書交換が頻発する今日では、どの表示アプリ
> が用いられ、どのフォントが使われるかはその場になって
> みないとわからない。とくに、AJ1フォントになるのか、
> TrueTypeフォントになるのかわからない。
> 
> こうした変化によって問題が顕在化してきた。日本語EPUB
> だと、どの文字が寝るのか、どの文字が正立するのかは、
> やってみないとわからない(文字情報技術推進協議会で調
> 査中)。
> 
> EPUB文書作成側は画像埋め込みによって問題に対処してきた
> (アクセシビリティ最悪)。
> 
> 縦書き年賀状アプリには、文字コードを使うことをきっぱ
> り諦めてグリフIDを直接使うものすらある。
> 
> あるべき姿(村田意見):
> 
> フォントと表示アプリの間の契約を確立すべき。
> 
> フォントは何を指定しないといけないかが決まっている。
> その義務を果たさないフォントは適合しないものとして扱
> う(存在を認めないと言っているのではなく、普通の契約
> に従わないからオープンなモバイル環境での文書交換に使
> えないというだけ)。
> 
> 表示アプリは、フォントが提供するものを尊重しなければ
> ならないことが決まっている。(尊重しないものは、普通
> の契約に従わないのでオープンなモバイル環境での文書交
> 換に使えない)。
> 
> 全部が全部ガチガチにはできないとは思いますが、少し
> ずつ義務化がされていくべきと思います。CSS Writing
> Modesも、vertを使うこと(the OpenType vert feature 
> must be enabled)と書かれています。
> -- 
>  --
> 慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授
> 村田 真

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Received on Thursday, 11 March 2021 07:12:06 UTC