フォントと表示アプリの間の契約が必要

みなさん、

この前、口頭で話したことを書いてみました。あとで、
CITPCJの資料もお送りします。

フォントと表示アプリの間の関係を整理し、きちんとした
原則を立てるべきだと私は考えています。そうでないと、
オープンなモバイル環境での文書交換に対処できないと思
います。

現状: フォントが提供するGSUBなどはただのヒントでしか
ない。つまり、フォントはGSUBなどを提供する義務はな
い。提供されていても表示アプリにはそれを尊重する義務
はない。

フォント提供側からすると、表示アプリによってどの情報
が使われ、どの情報が無視されるかは分からない。

表示アプリ側からすると、どの情報がフォントの一部として
提供され、どれが提供されないかは分からない。

これまで何とかなったのは二つの理由による。

- オープンな文書交換をしない(表示アプリもフォントも決め打
  ちでき、他での再生は考えなくてもよかった)。

- AJ1が規範として機能してきた。

問題点

モバイルでの文書交換が頻発する今日では、どの表示アプリ
が用いられ、どのフォントが使われるかはその場になって
みないとわからない。とくに、AJ1フォントになるのか、
TrueTypeフォントになるのかわからない。

こうした変化によって問題が顕在化してきた。日本語EPUB
だと、どの文字が寝るのか、どの文字が正立するのかは、
やってみないとわからない(文字情報技術推進協議会で調
査中)。

EPUB文書作成側は画像埋め込みによって問題に対処してきた
(アクセシビリティ最悪)。

縦書き年賀状アプリには、文字コードを使うことをきっぱ
り諦めてグリフIDを直接使うものすらある。

あるべき姿(村田意見):

フォントと表示アプリの間の契約を確立すべき。

フォントは何を指定しないといけないかが決まっている。
その義務を果たさないフォントは適合しないものとして扱
う(存在を認めないと言っているのではなく、普通の契約
に従わないからオープンなモバイル環境での文書交換に使
えないというだけ)。

表示アプリは、フォントが提供するものを尊重しなければ
ならないことが決まっている。(尊重しないものは、普通
の契約に従わないのでオープンなモバイル環境での文書交
換に使えない)。

全部が全部ガチガチにはできないとは思いますが、少し
ずつ義務化がされていくべきと思います。CSS Writing
Modesも、vertを使うこと(the OpenType vert feature
must be enabled)と書かれています。
-- 
 --
慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授
村田 真

Received on Thursday, 11 March 2021 06:38:15 UTC