Re: 行間注のマークアップ

村田 様

 小林 敏 です.

別処理ということを文書構造でどう扱うかは,いろいろあり,一つの答えに集約
されない問題かと思います.

ルビと注は文書の構造で異なると考えれば,マークアップで区別すべきとなるし,
行間に配置するという点で考えれば,ルビと行間注は同一マークアップでよいこ
とになります.

ですから,私の立場では,どちらでもよいのですが,ルビは注ではなく,読み方
を示したもので,行間注は,あくまで本文を補足する注だと考えれば,別の方が
よいように思います.

そして,頭注,傍注,脚注が別のマークアップになっていないことは理由になら
ないようにも思います.これらは全て注です.注としてマークアップし,その上
で注をどう配置するかは,注の属性で定義すればよいということになるでしょう.

もちろん,この場合も,注という大きなくくりでマークアップする方法でもよい
し,頭注,傍注,脚注,…,というくくりでマークアップする方法とするかは,
HTML全体の設計思想なり全体の仕組みのなかで判断することで,私は判断できる
立場ではない.

すくなくとも,いえることはルビと行間注は,文書の構造として異なるもと考え
た方がよいということです.(ただ,ルビも補足ですから,それらも大きなくく
りとして1つのマークアップでくくることは可能でしょう.いってみれば,HTML
で最初からルビも注としてマークアップしてあればよかったことかもしれません
が,ルビという形式的なものをすでにマークアップした以上は,整合性をいまさ
ら主張されてもという感じはします.)

ただ,ルビと行間注を区別する決定的な定義は,なかなか難しく,それは原稿執
筆者の判断でしか最終的に決まらないことかと思います.こうした問題は,随所
にあることでしょう.

前のメールへの追加 ルビと行間注で異なる点を活字組版で考えると,以下のこ
ともいえます.

ルビでは使用できる文字は,活字組版では,原則として,平仮名,片仮名,ラテ
ン文字しかありませんでした.これに対し,行間注は文字種は限られていません
(こんな点が文書構造の違いとしての表れかと思います).そのことの結果とし
て,ルビは親文字の1/2が原則ですが,行間注ではそうではありません.本文が9
ポや10ポの場合,そもそも活字組版では親文字の1/2で処理することはできませ
んでした.

以上です.

  MURATA さんwrote

>>ルビと行間注は,行間に文字を配置するという点では似ていますが,内容も組版
>処理の方法も異なります.したがって,別処理が望ましいでしょう.
>
>これが正しく伝わると、こういう反応が返ってくると
>予想します。
>
>HTMLには頭注、傍注、脚注を入れていないのに、なぜ
>行間注だけ入れないといけないのか?
>
>村田 真
>
>2021年4月12日(月) 13:46 Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>:
>
>> 村田 様
>>
>> 小林 敏 です.
>>
>> ルビと行間注は,行間に文字を配置するという点では似ていますが,内容も組版
>> 処理の方法も異なります.したがって,別処理が望ましいでしょう.
>>
>> ルビは,親文字列としては,原則として単語です.ルビ文字列も原則として単語
>> 相当です.これに対し,行間注は,親文字列としては,単語と限られるわけでは
>> ありません.単語もあれば,文もあります.さらには段落全体が親文字列となる
>> 可能性があります(注の対象とする文字列を考えた場合).ですので,ルビでは,
>> 必ず1文字以上の文字列(しかも,ある程度長さも限られている)が親文字列と
>> なります.これに対し,行間注の場合は,1文字以上の複数の文字列を親文字と
>> して指定される場合もありますが,一般に,その文字列の先頭又は末尾だけがわ
>> かればよい場合も多いのです.
>>
>> また,ルビの文字列の字数は,それほど多くなることはないのに対し,行間注で
>> はかなりの字数を必要とする場合もあります(1行の行長を超える場合もありえ
>> る).
>>
>> したがって,配置処理もルビと行間注では異なります.ルビでは,親文字列とル
>> ビ文字列の全長を揃える方が望ましい場合が多いのですが,行間注では,その必
>> 要性も少ないし,また,親文字列と行間注の文字数が極端に異なるケースも発生
>> し,原則として,親文字列も行間注もベタ組を原則とすればよいのです.
>>
>> さらに配置位置は,ルビでは,原則としてルビ文字列と親文字列の中心を揃えれ
>> ばよい(もちろん,これ以外の配置があってもよいが),それに対し,行間注で
>> は,親文字列と中心を揃える方法以外に,それぞれの先頭を揃える,あるいは末
>> 尾を揃える方法も選択できることが望ましいでしょう.
>>
>> これに加えて,行間注では,行間注の文字列について,行を超えて配置する方法
>> (基本的には,配置位置の原則にしたがって,両側,先頭側,末尾側に伸ばして
>> いけばよい)の規定が必要になります.
>>
>> マークアップについては私は意見をいう立場にはありませんが,前述したように
>> 行間注では位置だけがわかればよいので,親文字列を示す方法で,文字列の末尾
>> または先頭という位置だけを示す(いってみれば注の合印を置く位置)ことが可
>> 能になっている必要があるかと思います.
>>
>> 以上です
>>
>>   MURATA さんwrote
>>
>> >日本DAISY Consoritumの技術委員会委員長として書きます。
>> >
>> >現在、ruby要素を使って書かれる情報には、フリガナ
>> >の場合と、行間注の場合があります。読みあげのとき、
>> >フリガナの場合は一度だけ読んでほしいのですが、
>> >行間注のときはrbもrtも読んでほしい。なお、現在の
>> >実装は無条件に二度読みするものがほとんどです。
>> >
>> >JDC技術委員会としては、両者をマークアップで区別すべ
>> >きという意見を持つ人がほとんどでした。具体的に
>> >どんなマークアップにするかまでは議論していません。
>> >
>> >JLREQ TFのご意見をお聞かせいただければ幸いです。
>> > --
>> >慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授
>> >村田 真

Received on Monday, 12 April 2021 23:47:09 UTC