- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Wed, 07 Apr 2021 14:10:34 +0900
- To: JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
木田泰夫 様 みなさま 小林 敏 です. 木田泰夫 さんwrote >敏先生に質問です >縦書きであってもギリシャ文字もプロポーショナルを使うのが正しかった、とのこと >ですが、縦書きの場合文字の上下方向にアキは入りますか? 和欧文のアキ問題,後で考えのですが,前提を共通に理解していなかったかと思 います.私は横組で考えていた.そこで以下に整理して示します. 横組の場合 A ギリシャを含めラテン文字は,原則としてプロポーショナルな文字を使用す る.全角のラテン文字等を使用することは妨げないが,その場合,和欧文のアキ 処理の対象外である. B 1文字であろうが,単語であろうが,語間を含んだ複数の単語であっても,プ ロポーショナルな文字を使用した場合,和文と欧文の字間は原則四分アキとする. 縦組の場合 A 使用する文字及び処理方法 a 全角のラテン文字等を使用する. b プロポーショナルな文字を使用し,縦中横処理で正常な向きにする.(この 場合も全角の文字を使用してもよいが,あまり使用する意味はない.) c プロポーショナルな文字を使用し,なんらかの書式で1字1字を正常な向きに する.(1字の場合はbと同じ結果であるが,2字以上の場合はbと異なる.aと似 た形になる. d プロポーショナルな文字を使用し,文字を横向きのままとする. この場合,全角のラテン文字等を使用するか,プロポーショナルな文字を使用す るかは,どちらが正しいということにはならない.一般的にいえば,正常な向き の形で処理する方法としては,これまでは全角を使用する例が,コンピュータ組 版でも多かった.ただし,同一文書にdがある場合,aの字形がdと異なる場合も あり,これを避けるということでは,bかcということになる.特にcの処理は, すこし前までは可能でない処理系があったので,全角を使用するという方法が, 処理も簡単であり,一般的であった. なお,活字組版の事情を説明すると,仮想ボディに対し,文字を天地中央に配置 することも活字組版では可能であり,また,縦組で正常な向きに配置する場合, 活字組版ではプロポーショナルな文字を使うのはかなり面倒であったこと,こう した事情から,縦組では多くは全角文字を利用していた.縦組で正常な向きにす るために全角のラテン文字等が考えられたといってよい. 現在は,書式の設定でプロポーショナルな文字を正常な向きにする方法は簡単に できる.したがって,今後はcが増えていく可能性が高いということかもしれな い. B 和欧文のアキ 前後は漢字か仮名の場合に限定すると,和文と欧文の字間は 以下のようになる. a ベタ b ベタ(これは仮想文字クラスを設定すれば,縦中横処理した文字列と和文の 字間はベタという規定で解決できる. c ベタ d 四分アキ ここで,和欧文のアキを四分とした設定した場合,cでもそれが適用されてしま う問題がでる.ラテン文字等の行送り方向と和文が接する場合はベタである,と いうことで解決できるかもしれない. 実際にも,最近の書籍では,cで,和文との字間を四分にした例を,少ないが何 回か見かけたことがある.これは意識的な選択か,処理系で勝手に処理して,そ のままとした結果なのかはわからない.たぶん,後者だろうな,と思っている. 最後にbやcがベタでdが四分アキかの問題 これは,ラテン文字等は,字送り方向(文字を並べていく方向)の仮想ボディと のアキはわずかであり,これらの文字が単語として並んだ場合,各単語を構成す る字間が均一に見え,アキ過ぎにならないように文字は設計されている.この単 語間の字間がラテン文字等の設計では特に注意されている.したがって,この単 語を構成する字間を空けること(レタースペーシング)は,特別の場合(例えば 強調やヘッダーに使うという場合)を除き,避けることとされていた.したがっ て,和文と欧文を並べると,和欧文間が狭くなるので,四分アキが行われてきた. これに対し,ラテン文字等の行送り方向の設計は字送り方向と異なり,ある程度 のアキがあるので和欧文間が狭くなる例はないわけではにが,その必要性は少な いということになる. 以上です.
Received on Wednesday, 7 April 2021 05:32:35 UTC