和欧文のアキ問題

木田泰夫 様
みなさま

 小林 敏 です.

  木田泰夫 さんwrote

>敏先生に質問です
>縦書きであってもギリシャ文字もプロポーショナルを使うのが正しかった、とのこと
>ですが、縦書きの場合文字の上下方向にアキは入りますか?

和欧文のアキ問題,後で考えのですが,前提を共通に理解していなかったかと思
います.私は横組で考えていた.そこで以下に整理して示します.

横組の場合

A ギリシャを含めラテン文字は,原則としてプロポーショナルな文字を使用す
る.全角のラテン文字等を使用することは妨げないが,その場合,和欧文のアキ
処理の対象外である.

B 1文字であろうが,単語であろうが,語間を含んだ複数の単語であっても,プ
ロポーショナルな文字を使用した場合,和文と欧文の字間は原則四分アキとする.

縦組の場合

A 使用する文字及び処理方法

a 全角のラテン文字等を使用する.
b プロポーショナルな文字を使用し,縦中横処理で正常な向きにする.(この
場合も全角の文字を使用してもよいが,あまり使用する意味はない.)
c プロポーショナルな文字を使用し,なんらかの書式で1字1字を正常な向きに
する.(1字の場合はbと同じ結果であるが,2字以上の場合はbと異なる.aと似
た形になる.
d プロポーショナルな文字を使用し,文字を横向きのままとする.

この場合,全角のラテン文字等を使用するか,プロポーショナルな文字を使用す
るかは,どちらが正しいということにはならない.一般的にいえば,正常な向き
の形で処理する方法としては,これまでは全角を使用する例が,コンピュータ組
版でも多かった.ただし,同一文書にdがある場合,aの字形がdと異なる場合も
あり,これを避けるということでは,bかcということになる.特にcの処理は,
すこし前までは可能でない処理系があったので,全角を使用するという方法が,
処理も簡単であり,一般的であった.

なお,活字組版の事情を説明すると,仮想ボディに対し,文字を天地中央に配置
することも活字組版では可能であり,また,縦組で正常な向きに配置する場合,
活字組版ではプロポーショナルな文字を使うのはかなり面倒であったこと,こう
した事情から,縦組では多くは全角文字を利用していた.縦組で正常な向きにす
るために全角のラテン文字等が考えられたといってよい.

現在は,書式の設定でプロポーショナルな文字を正常な向きにする方法は簡単に
できる.したがって,今後はcが増えていく可能性が高いということかもしれな
い.

B 和欧文のアキ 前後は漢字か仮名の場合に限定すると,和文と欧文の字間は
以下のようになる.

a ベタ
b ベタ(これは仮想文字クラスを設定すれば,縦中横処理した文字列と和文の
字間はベタという規定で解決できる.
c ベタ
d 四分アキ

ここで,和欧文のアキを四分とした設定した場合,cでもそれが適用されてしま
う問題がでる.ラテン文字等の行送り方向と和文が接する場合はベタである,と
いうことで解決できるかもしれない.

実際にも,最近の書籍では,cで,和文との字間を四分にした例を,少ないが何
回か見かけたことがある.これは意識的な選択か,処理系で勝手に処理して,そ
のままとした結果なのかはわからない.たぶん,後者だろうな,と思っている.

最後にbやcがベタでdが四分アキかの問題

これは,ラテン文字等は,字送り方向(文字を並べていく方向)の仮想ボディと
のアキはわずかであり,これらの文字が単語として並んだ場合,各単語を構成す
る字間が均一に見え,アキ過ぎにならないように文字は設計されている.この単
語間の字間がラテン文字等の設計では特に注意されている.したがって,この単
語を構成する字間を空けること(レタースペーシング)は,特別の場合(例えば
強調やヘッダーに使うという場合)を除き,避けることとされていた.したがっ
て,和文と欧文を並べると,和欧文間が狭くなるので,四分アキが行われてきた.

これに対し,ラテン文字等の行送り方向の設計は字送り方向と異なり,ある程度
のアキがあるので和欧文間が狭くなる例はないわけではにが,その必要性は少な
いということになる.

以上です.

Received on Wednesday, 7 April 2021 05:32:35 UTC