- From: Yasuo Kida (木田泰夫) via GitHub <sysbot+gh@w3.org>
- Date: Thu, 16 Sep 2021 06:39:49 +0000
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> **ご隠居さん:**ありゃりゃ、バカなことするねえ。ま、マンガの吹き出しに使われる「〜」や「〰」なんてのは、活版の時代には思いも寄らなかったからねえ。ま、目くそ鼻くその類だね。 ここのところ、バカなことを、の理由説明がいつあるかいつあるかと読み進んだんですが、ついに説明なし… 一点、〜 と 〰 、現在の実装だと、二つ以上繰り返した場合に前者はつながらず、後者は連続する、という違いがありますね。 木田 > 2021/09/16 11:14、tlk714 ***@***.***>のメール: > > > ちょっと長くなりますが。。落語調第2弾の出だし部分。以前、小形克宏さんがメーリングリストに投げてくださったネタをパクっています。 > > #吹き出しの中の嵐 > **はっつぁん:**ねえねえご隠居さん、面白い話を聞き込んだんだけどさ。某出版社では、マンガの吹き出しの中の「〜」をぜ〜んぶ「〰」に置き換えているんだってさ。 > [https://lists.w3.org/Archives/Public/public-i18n-japanese/2021JulSep/0079.html] > **ご隠居さん:**ありゃりゃ、バカなことするねえ。ま、マンガの吹き出しに使われる「〜」や「〰」なんてのは、活版の時代には思いも寄らなかったからねえ。ま、目くそ鼻くその類だね。 > **はっつぁん:**え〜っ。てえことは、ご隠居さん、この手の問題、前からご存じだったわけで。恐れ入谷の鬼子母神。 > **ご隠居さん:**あたりめえよ。何年この世界で生きてきているとお思いでえ。 > 「〰」と「〜」の問題を語らせりゃあ、ま、半日は持つね。 > **はっつぁん:**え〜〰っ。「〜」と「〰」って、どこがどう違うんで、やんすか。印刷雑誌の記事で、書いてあるからいいようなものの、寄席の高座で口演でやった日にゃあ、何が何だか分かりゃしねえ。 > **ご隠居さん:**そりゃそうだな。もう少し、詳しく説明してやろう。 > 「〜」は、ユニコードでは、WAVE DASHという名前が付いておる。JIS X 0213では波ダッシュ。 > 元々は,“~”は,数学記号でね。戦前の古い印刷の本を見ると,この記号は,数学記号として掲げられている例がある(記述記号には掲げられていない). > これが字形の雰囲気がいいからかねえ、“一八九五~一九六五年”のように範囲や,“東京~京都”の経路を示す約物として使用されるようになってきた.従来は“一八九五―一九六五年”,“東京―京都”というように,全角ダーシが使われていた.横組においてアラビア数字で範囲を示す場合,“1895–1965”のように二分ダーシが使用されることから考えると,ダーシの方がいいように思うがね。 > 先輩の校正者の話だが、“元々“~”は,数学記号なんだから,範囲を示す約物としては適当でない”と主張されておったな。しかし,範囲を示す波形は徐々に増えていて、最近では縦組に限ればダーシはもはや少数派だな。なので、今日では“~”に数学記号という認識はどっかいっちまって。ワシは,古い人間なので、今でも範囲を示す場合,縦組では,全角ダーシを使うね。ま、言葉と同じで約物の用法も変化するので、いまや縦組では波形が多くなっているので,大勢に従うということなら,波形を使用するのがよかろう。 > **はっつぁん:**あれれ、ご隠居さん。何だか、「え〜っ」の話とは、違うような。 > **大家さん:**おやおや、はっつぁん、またご隠居さん相手に、愚痴こぼしかい。 > WAVE DASHがどうのこうのとか、言いながら、時々、「ぐぇ〰〰〰っ」とか絶叫していたようだが。 > 「〜」とか、「〰」とかは、マンガの吹き出しでよく見かけるね。 > おっと、「〰」の方は、WAVY DASH(U+3030)。どっちも、マンガの吹き出しでは、前の音を長くのばすときに、長音記号(ー)の代わりによく使われているね。 > わたしは、何を隠そう、大家業を始める前は、バリバリの雑誌編集者で、マンガとかも担当していたことがあってね。 > **ご隠居さん:**そりゃ、初耳だねえ。人は、見かけによらないもんだなあ。 > **大家さん:**まあ、40年も前の話ですがね。 > 「びっくりした〜」的な表記は、たぶん、マンガの吹き出しに写植(ネームと言っていました)を貼って、1ページ分の凸版やオフセットのために、写真取りをして製版していたのが、一般の印刷物にも波及していったのではないか、と。 > 転んで、石に頭をぶつけたときとかの「◎△×?‼〜」とか。マンガ家が鉛筆で書き込んだネーム(大抵は、原稿にペン入れする前に)を、編集者がコピーして、写植屋さんにバラ打ちしておいてもらって、原稿が完成したら貼り込んでもらっていた。 > このバラ打ちの時に、オペレーターが適当な(形が似ている)写植を文字盤から拾ってきていたわけで > わたしが編集者だったころは、マンガの吹き出しは完全に写植になっていやしたが、吹き出しの外側では、結構手書き文字もあってね。最近の技術では《あ+゜》みたいな字も、出せるようになりましたが、これも、元々は手書き文字から来ているような。 > 写植での切り貼りも結構やっていましたよ。わたし自身も、切羽詰まってやったことがあります。原稿の仕上げが遅いマンガ家の仕事場に、バラウチした写植を持ち込んで、ネーム貼りをやったことこありましたね。後から見ると、張り込みの曲がりが結構目についてね。プロの写植屋さんは、それこそ、ピタッとまっすぐに貼り込んで、そりゃあ、見事なもんでしたよ。 > そのころ写植機メーカーからもらった写植印画紙専用のハサミは、今でも愛用していますよ。 > ガラ刷りが出て、ガラ稿で誤植を見つけると、凸版(鉛版と言っていました)に穴を開けて活字をはめ込んだり(象眼)ね。 > 吹き出しの仮名文字はアンチック体なのに、象眼した部分はゴチックで、ミスの修正が見え見え。 > **はっつぁん:**なんだか、今回は、どうでもいい、昔話が多いなあ。 > **ご隠居さん:**そういうことだよ、はっつぁん。要は、どうでもいい昔話のころに、印刷現場の職人さんやオペレーターが適当にやっていたことが、どういうわけか、印刷文化の伝統みたいな感じで、金科玉条化したことが結構あるからね。 > **はっつぁん:**ってえと、WAVE DASHは、元々は数学用の記号だったのが、見てくれがいいからって、範囲を示す「ー」(DASH)の代わりに使われるようになったり、マンガの吹き出しn中で、「ー」(長音記号)の変形として使われるようになったってことですね。 > **大家さん:**おっ。はっつぁんにしては、よく分かっているじゃねえか。 > はっつぁん:「〰」もマンガの吹き出しの中では、「~」と似たようなもの、ってわけですね。 > **ご隠居さん:**ところで。「〜」には、もう一つ、やっかいな問題があってね。 > さっきも言ったけれど、波形は,もともとは数学記号として用いられていたのが、範囲を示す記号に代用されて定着したみたいなんだ。てえことは、元々活字組版では,横組の字形を90度回転させ,さらに反転させた縦組用の字形はなかった.縦・横で共通.最初の線は左から右という形しかなかった。ま、活字は、普通正方形に鋳込むので、活字の向きを変えるだけで,縦組と横組に使用できたわけ。++ > なので,1980年代までは,縦組に用いる場合,横組字形を単純に90度回転させて字形(最初の線が左から右に)が使用されてる例を見かけるね。++ > 例:下順二「訳」著“木下順二が語る 保元物語”(平凡社(かたりべ草子),1984.1.10,p.56)++ > “世界”(1985.5.1,岩波書店,p.91)++ > ところが,1980年代の中ごろから,90度回転させた字形(最初の線が左から右に)が見られるようになってね、今日では,多くがというか,すべてが反転(最初の線が右から左に)させる字形が使用されている。すくなくとも,2020年以降で刊行された本で,横組字形を単純に回転させた字形は見てねえな。++ > ++ 例:“アステ vol.3”(1986.11.1,p.13) ++ > ++ 宇野功芳著“クラシック名曲・名盤”(1989.5.30,講談社現代新書,p.98)++ > > どうも,手動写植やコンピュータ組版が使用されてきたことに影響されたのではと,思っているんだがね。. > てなわけで、縦組の波形の形は,反転しない形は間違いではないので,使うのはかまわないが,反転した形が定着しているのだから,現在では反転した形を使うのが無難だろうね。 > > **大家さん:**なるほどね、ご隠居さん。これで、ガテンがいきましたよ。例の、Wave Dashの字形の問題と、JISとUnicodeの対応関係の混乱。おっと、はっつぁんの生まれる前のことかもしれねえから、ちょっと昔話をしておくか。 > といっても、話は結構ややこしいのでねえ。簡単に言っちまうと、ある時期、JIS X 2028の波ダッシュ(1区33点)に対応するUnicodeの符号位置に混乱があってね、WAVE DASH(U+301C)に対応付けしたOSとFULL WIDTH TIDLE(U+FF5E)に対応付けしたOSが混在していてた。それに、さっきご隠居さんがいった字形の問題が絡まって、ま、グチャグチャになっていた。今では、だいぶ落ち着いて射るみたいだが、この混乱のきっかけになったいわゆるShift JISが考えられた時期や、Unicodeの始めのころが、ご隠居さんが言っていたような、日本の印刷物で波形の字形が混在していた時期とが重なるわけよ。 > どうも、今に至る記号類の混乱の起源を探っていくと、活字印刷から今のデジタル環境に移行する過程での、写植の時代に起こっているような感じだね。 > **ご隠居さん:**フム。写植のオペレーターのことを悪くいうつもりはないが、昔の印刷屋の職人たちは、採字工にしても植字工(チョクジコウって読むんだぜ、えっ、はっつぁん)にしても、漢字の知識だけでなく、てえへんな教養人がゴロゴロいたもんだ。 > **はっつぁん:**おっと、また、ご隠居さんの昔話が始まった。長くなりそうだから、帰ろっと。 > > ##主要な論点 > 長音記号の変形としての「〜」WAVE DASHと「〜」WAVY DASH > WAVE DASHとFULL WIDTH TILDEの混乱 > 「〜」のさまざまな使われ方 > ##ボトムラインのメッセージ > 記号類にも使われる文脈によってある種のセマンティックがあるよね。 > 活版や写植と違って、電子化文書では、セマンティクスの違いを意識した符号化が必要かもね。 > > > > — > You are receiving this because you authored the thread. > Reply to this email directly, view it on GitHub <https://github.com/w3c/jlreq/issues/298#issuecomment-920520601>, or unsubscribe <https://github.com/notifications/unsubscribe-auth/AH5C6AYE7GD2TI7EG7TNYFDUCFHIFANCNFSM5DIN2EAQ>. > -- GitHub Notification of comment by kidayasuo Please view or 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Received on Thursday, 16 September 2021 06:39:51 UTC