- From: Ishii Koji <kojiishi@gluesoft.co.jp>
- Date: Sat, 17 Jul 2010 13:28:23 -0400
- To: "MURATA Makoto (FAMILY Given)" <eb2m-mrt@asahi-net.or.jp>, "public-html-ig-jp@w3.org" <public-html-ig-jp@w3.org>
> いまのままだと、日本語縦書きという > たった一つの要求について、しかもmargin/padding/borderにだけの偏った > 議論ではないかとまた思われるのではないかという気がするのです。 おっしゃる通り、より正しく理解してもらうため、説明の仕方を工夫することはとても大事だと賛同します。 個人的な考えになりますが、日本文化としての縦書き、世界における縦書き、論理プロパティ、という三つの事柄は、深く関連していますが、それぞれの事情も持っています。それをきれいに分けるのは大変な調査が必要になるかもしれませんが、可能な限り分けることで、村田さんの感じていらっしゃる「偏り」を減らすことは可能ではないでしょうか? 世界における縦書きは、当然ご存知のこととは思いますが、村田さんが表現されている言葉が少し卑下気味ではないかと思われるくらいに、もっと広いものです。EPUBにも採用されるHTML/CSSであれば、Unicodeがそうであったように、現代文書だけではなく古文書の表現も必要になりますから、漢文古文書というだけで膨大な出版物があると思いますし、モンゴル古文書も入ってきます。今はまだPCを持っていない人も多いエリアがあり、W3Cへの参加人数比としては低いかもしれませんが、10年後にその人たちにもPCが行き渡る可能性を考えれば、世界の人口比として少なくとも10%くらいの人が必要とする機能ではないでしょうか? CJKの人口だけで、正確な数字はよく知りませんが、5億〜6億人。それに世界のチャイナタウンで中国語を話す人を含めれば、10%は超えると思います。 論理プロパティについては、以前村田さんのご質問に村上さんが答えられていたように、margin/padding/borderだけの話ではなく、すべてのleft/right/top/bottom/width/heightを名前の一部に持つプロパティが影響を受けます。そしてこの部分については、村田さんのおっしゃる通り、若干の細かい相違はあるにしても、原則としてはRTLを仲間とした方がいいと思います。 あまりよい例ではないかもしれませんが、最近気が付いた余談をさせてください。日本語化された株取引ソフトを使っていて気が付いたのですが、「終値」のところに「閉じる」と表示されていました。もうお分かりかと思いますが、「閉じる」は「Close」、「終値」は「Close Price」で、これがおそらく元の英語ソフトで「Close」と省略されたため、両方とも「閉じる」に翻訳されてしまったのだと思います。英語において、意味が違うが同じ単語のものがソフトの中で一つになってしまっているため、どちらも「閉じる」に翻訳されて、不思議なソフトになってしまう。これを直すには、まず元の英語ソフトで二つの「Close」を分けてもらうしかありません。ソフト翻訳の業界用語では、英語ソフトで意味の異なる「Close」を二つの「Close」に分けることをグローバリゼーションと呼び、そのそれぞれを正しく翻訳しなおすことをローカリゼーションと呼びます。 「Left」も同じだと思っています。「左余白」と「字下げ」が英語では両方とも「Left」だったため、CSSでは同じ単語を割り当てていますが、これを分けないと、正しいグローバリゼーションにはなりません。アラビア語で「字下げ」を何と呼ぶかは知りませんが、Wordでアラビア語の文書を開き、「字下げ」コマンドを実行すると、右に余白が空きますので、原則の事情としては同じことが言えると思います。 こういったことから、論理プロパティについては、縦書きのためだけ、という位置づけではなく、英語に少し寄ってしまっている今のCSSに対して、正しいグローバリゼーションを施すものだと私は認識しています。そして、正しいグローバリゼーションが行われれば、それを使って、正しいローカリゼーションが行えます。これは、対象人口としてもRTLが入るためさらに広いですし、正しいグローバリゼーションという大義名分も付きますので、理解してもらえるまで根気強く説明していくのは、けして偏った議論ではないと思います。 これらの世界対応があった上で、日本市場により適したソフトを作るには、それに加えてこういうものが必要だ、という議論は、もちろん日本に偏ったものになりますが、「日本でも必要となるグローバリゼーション機能」と「日本専用ローカリゼーション機能」を分けることで、村田さんのお話を聞かれる方も、それぞれにどの程度の対応をするのが正しいか、というご判断をいただけるのではないかと思います。 ちょっと雑感的なメールで申し訳ないですが、村田さんが制作されている文書のヒントくらいにでもなれれば、と思い、返信させていただきました。 素晴らしい文書が仕上がることをお祈りしております。 -----Original Message----- From: public-html-ig-jp-request@w3.org [mailto:public-html-ig-jp-request@w3.org] On Behalf Of MURATA Makoto (FAMILY Given) Sent: Saturday, July 17, 2010 5:50 PM To: public-html-ig-jp@w3.org Subject: Re: MozillaとWebkitのlogical property 札幌会議の準備でヘロヘロです。 > こういう使い方は、村田さんのおっしゃる通り「行数を減らすため」かもしれませんが、 >それでも大事と思われる方もいらっしゃるのではないか、とも感じる部分があ >ると思います。 私が聞いた相手が、CSS標準のプロパティを使うべきで、ベンダー拡張を使うの は好ましくないという立場の人でした。人によっては、行数が減ることが命かも しれませんね。 なお、縦書きと横書きの両方に対応するスタイルシートも、alternate styelsheetとするのでよければ、つまり完全に二つスタイルシートを用意 するのなら、今の仕様のままでも対応できます。これではあんまりだと 思うコンテンツ作成者は多いですか? 私はdirectional-modeについてはまだ納得していませんし、検討する時間も 取れていません。しかし、特定の仕組みを検討する前に、もっと要求の体系的な 整理が必要ではないかと感じています。いまのままだと、日本語縦書きという たった一つの要求について、しかもmargin/padding/borderにだけの偏った 議論ではないかとまた思われるのではないかという気がするのです。 途中で放り出していますが、http://lists.w3.org/Archives/Public/public-html-ig-jp/2010Jun/0006.html のスレッドは日本語縦書きについてだけでも、もっと体系的な要求の洗い出しを したいという意図でした。(もう、全然手が回らない。) RTL言語については、日本語縦書きと違って、書いている時点からかならず RTLなことは決まってますし、LTRで表示するなんていうのは無意味でしょう (本当かどうか100%の自信はない)。縦書きと横書きについては、すくなく とも縦から横へのフォールバックはまったく実行時に定まるものです。どうも いろいろ違うんじゃないかと思います。 -- 国際大学 村田 真 <EB2M-MRT@asahi-net.or.jp>
Received on Saturday, 17 July 2010 17:28:59 UTC