- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Wed, 01 Oct 2025 15:32:52 +0900
- To: Yasuo Kida <kida@mac.com>, JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
木田 様 3.5.2と6.2.5および3.5.5と6.2.5を合併しました.以前の内容はほんの少し変えているが,大筋は変えていません.説明の順番や表現は多少はいじってある.3.5.2と3.5.5をそっくり以下と入れ替えればよい.GitHubにも掲載しておきました. ------以下が3.5.2の全文------ ### 3.5.2 アラビア数字の扱い 縦書きにおけるアラビア数字は,以下のような3つの表示方法がある. - A 個々の数字を通常の文字と同様に正常な向きで表示する(以下,“正立”という). - B 縦中横処理という機能(〓〓参照)を用いて通常の文字と同様に正立して表示する. - C 文字を時計回りに90度回転させ,横向きで表示する(以下,“横倒し”という) Aの個々の数字を正立させる方法は二通りある。 - プロポーショナルなアラビア数字を使用し,アプリケーションの機能で正立させる. - 全角のアラビア数字を使用しする. Bの縦中横の機能を利用して正立させる場合はアプリケーションの機能を利用する. Cはプロポーショナルなアラビア数字を使用すると、デフォルトで横倒しになる。 次に原則としてアラビア数字を使用する方針の場合の縦書きにおけるアラビア数字の配置方法の1つの選択例を示す. - 1桁のアラビア数字は,A/Bとする. - 2桁のアラビア数字は,Bする. 3桁以上のアラビア数字は,Aする. - 小数点(中点)を含む場合,小数点の前又は後ろが2桁以下のときは,その部分をA/Bとする.小数点の前又は後ろが3桁以上のときは,その部分をAとする. - アラビア数字に上付き又は下付きがつく場合は,Cとする. - 横倒しのテキスト中に現れるアラビア数字は、周りのテキストと同様にCとする。理工系のテキストで数式に近い扱いの場合にもCにする。 なお,箇条書き又は注記番号のアラビア数字が3桁となった場合もBとする方法がある.また,小数点(中点)をを含む場合,どんな場合もAとする方法もある. > 注記 縦書きのアラビア数字の向き 縦書きおいてアラビア数字を正立させるか,横倒しにするかは,上記のようにするのが一般的な方法であるが,その考え方を解説しておく.なお,ここでいうアラビア数字と用語は,全角かプロポーショナルかということは問題としていなく,文字種だけの違いを意味している. > 注記つづき 縦書きにおいて,アラビア数字を正立させても,また横倒しにしても,読むことが可能かどういう点では,どちらも可能である.つまり,読むことが可能かどうかというレベルで考えれば,どちらも選択できる.しかし,読みやすさの点では異なるので,どのようにするか選択する必要がある.具体的には,次のどちらを優先させるかという問題である. > - a 文字は正立した状態で読むのが通常である.この点から考えれば,正立させる方法が勝っている(以下aという). > - b アラビア数字は,本来は横書きにするのが原則である.この考えからは横倒しにするのがよいことになる(以下bという). > 注記つづき 1字の場合は,正立させてもaもbも満たしている.したがって正立させればよい.他の箇所とそろえるなど特別の必要がない限り正立させればよい. > 注記つづき 2字以上の場合,縦中横は,aもbも満たしているから,最も望ましいともいえる.しかし,文字数が多くなると,行間にはみ出してしまう.行間へのはみ出しを禁止する必要はないが,ある範囲にとどめておいた方がよい.はみ出しが大きくなると,見た目のバランスも悪くなり,はみ出し量によっては,行間の調整も必要になる.通常は2字程度であれば縦中横が選択できる.ただし,注番号など最大桁数が3桁の場合,2桁以下と表示の形式をそろえるために,少し無理をして縦中横が選択できる.もっとも,アラビア数字には,フォントによって字幅を文字サイズの1/2,1/3および1/4にした字形をもっているものがある.これを使用すれば2桁,3桁および4桁のアラビア数字でも,行間にはみ出すことなく縦中横は使用できる. > 注記つづき ところで,縦書きの数字表記は,大きく分けると漢数字を原則として使用する方針とアラビア数字を原則として使用する方針がある.この後者におけるアラビア数字の向きはについては,従来行われていた漢数字の使用状況とも関連してくる.アラビア数字は,左右に並んだ数字の位置が数字の位を示しているので,原則としてbにしないといけない.一方,漢数字は,位を示すには十,百,千などの単位語を使用するのでaの考え方でよい.今日では,漢数字であっても単位語を省略する方法が増えており,万,億などの単位語だけを使用する表記法が多くなっている.この場合でも,縦書きでは個々の文字を正立させる方法である.数字が並んだ部分に限れば桁数が最大で4桁ということもあり,正立させる方法でも数字の位を読むことが可能であり,読者もその方法に慣れている.いってみれば,縦書きにおけるアラビア数字の使用は,こうした漢数字の表記法をアラビア数字に置き換えたもので,年月日などの一般的なアラビア数字を使用する場合,漢数字の配置方法にならいaの考え方を優先させているのが現状であるといってよい.なお,この縦書きの中でのアラビア数字では,一般に万,億などの単位語だけを使用する表記法である.ただし,理工学分野等での数値表記が優先される場合は,bになろう.また,参照文献で参照ページを示す場合も,アラビア数字を横倒しにしている例が多い.なお,漢数字を原則として使用する方針の場合,括弧の中に,参照文献を著者名と刊行年で示すときや,個人の生年や没年を括弧に入れてアラビア数字で示す方法があり,こうした限定してアラビア数字を使用するときも,一般にアラビア数字は横倒しにしている. ------以下が3.5.5の全文------ ### 3.5.5 ラテン文字の扱い 縦書きにおけるラテン文字は,原則としてアラビア数字と同じ扱いであり,くりかえして示せば次のようになる. - A 個々の数字を通常の文字と同様に正常な向きで表示する(以下,“正立”という). - B 縦中横処理という機能(〓〓参照)を用いて通常の文字と同様に正立して表示する. - C 文字を時計回りに90度回転させ,横向きで表示する(以下,“横倒し”という) Aの個々の文字を正立させる方法は二通りある。 - プロポーショナルなラテン文字を使用し,アプリケーションの機能で正立させる. - 全角のラテン文字を使用する. Bの縦中横の機能を利用して正立させる場合はアプリケーションの機能を利用する. Cはプロポーショナルなラテン文字を使用すると、デフォルトで横倒しになる。 縦組におけるラテン文字の配置方法の1つの選択例を示す. - ラテン文字が1文字の場合は,A/Bとする. - ラテン文字が2文字以上で,すべて大文字の場合は,1文字1文字をAとする.ただし,すべて大文字の場合でも,語間を含むとき,又はイタリック体のときは,Cとする. - ラテン文字が2文字以上で,小文字を含んでいる場合は,Cとする. - ラテン文字に上付き又は下付きがつく場合は,Cとする. なお,“fMRI”や“SDGs”のように小文字を含んでいる場合でも,略語的に使用されるときは,Aとする方法もある.また,2文字の場合で,その2文字の合計の字幅が大きくない場合はBとすることもできる. また,1文字1文字を正立する場合で小文字を含んでいるときは,デセンダーやアセンダーにより字間が均一にならない場合がある.OpenTypeなどの字間の調整機能を使用すれば調整が可能である. > 注記 縦書きのラテン文字の向き ラテン文字については,日本語の中で大文字を使用する場合は,主に“OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development)”のような頭字語である.しかも,OECDは“オー・イー・シー・ディ”のように1字1字読んでいく.したがって,前述したアラビア数字の注記で述べたbでなくaの考え方でよい.ただし,頭字語の中には“OPEC(Organization of the Petroleum Exporting Countries)”のように単語のように“オペック”という読み方をする例もある.しかし,頭字語は4字程度の例が多く,また,大文字だけの欧文は,そもそも読みやすいものではなく,bということにつながらないとも考えられる.こうしたことから,大文字の主に頭字語は,正立させている.しかし,字数が多くなる,あるいは単語のように読む場合は,横倒しにするという肌理の細かい選択も考えられようが,多くの場合,そのような方法は採用されていない.ただし,大文字で単語を表示する例が多い場合は,横倒しにする方法の採用も考えられよう. > 注記つづき これ以外の主に小文字のラテン文字は,通常はbの考えを優先させて,横倒しにしている.これは,“layout”のような単語は,1字1字の認識は行うが,主に語全体をまとめて読んでいく.このような読み方をする限りはbの考え方が優先され,横倒しにして配置している.ただし,“Windows”のように見慣れた語の場合,正立させる方法も採用されていないわけでないが,あまり読みやすとはいえない. > 注記つづき ただし,縦書きにおいて単語や文の場合,正立させるより横倒しの方が読みやすいとはいえ,日本語を含め,全体を横書きにした場合と比べ読みやすいとはいえない.長い文の場合など,書籍では,簡単に本を横転させて読むことが可能であるが,デジタルテキストでは,特にパソコンで読む場合,横転させることは,そう簡単ではない.そこで,横倒しした箇所をポップアップで横書きにして表示するといった機能はあってもよいかもしれない.
Received on Wednesday, 1 October 2025 06:57:00 UTC