RE: 金属活字での行の調整?

木田さん

> 考えてみればあたりまですが、写植機って複数のレンズを備えていたんですね。対象の距離が固定なのでズームレンズでも性能を出しやすいでしょうね。

1980年代に写研がリリースしたテレビのテロップ専用手動写植機がズームレンズを採用していました。ただ、これは特殊用途でした。一般の手動写植機は複数のレンズを持っていました。

1970年代は、手動写植機にステッピングモーターと電子制御が導入されて、印字作業がそれ以前に比べると、極めて行いやすくなりました。行長・行送り量・文字サイズを指定すると、印字していって行末に達すると自動的に改行してくれます。字送りも手作業だった時代には、打鍵する力を一定にして印字しないと、ラチェットの爪が一定の歯数で噛み合わなくて字送り量が狂うことがありましたが、モーターで自動的に送ってくれるので、その心配がなくなりました。また、旧来の完全手動の写植機では、欧文の字送り量も、文字ごとに字幅ユニット数 ÷16×文字サイズを計算して送り歯数を設定する手間がなくなりました。(写植機に欧文書体ごとの字幅データを内蔵する方法や、光学式で欧文書体の字幅データをカードから読み取る方法などが用いられました。)

1980年代の中頃になると、さらに高度な機能が搭載され、斜体ライン揃えの印字位置の計算の自動化(それまでは、ライン揃えすると、例えば正斜体の文字を一文字印字するごとに、次の文字は横組みだと上方向に一定歯数上げた位置に印字する必要があるので、上げる歯数を関数電卓か三角関数表を使って計算する必要がありました)。

斜体ライン揃えの行は、斜めになってしまうのは、文字の像を回転できないためでしたが、1980年代にリリースされた一部の手動写植機では、プリズムを使って文字像の回転が可能となり、斜体ライン揃えの部分だけ、後で切り貼りする必要がなくなり、他の通常の印字の部分と一緒に印字することができるようになりました。また、そのような写植機の多くは、印字結果をCRT画面上に表示することができ、印字結果を現像する前に確認しながら印字していくこともできるようになりました。さらに、仮印字機能(印画紙に露光せずに文字をCRT画面上だけに、あらかじめ仮に印字して表示し、その文字の印字位置を記憶させておく)も使えるようになったので、行頭行末揃え、植木算(均等組み)、詰め組みなどが効率的に行え、やはり修正の切り貼り作業を少なくすることができました。

参考まで。

山本太郎

Received on Tuesday, 18 March 2025 01:41:40 UTC