- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Mon, 18 Mar 2024 14:12:28 +0900
- To: 木田泰夫 <kida@mac.com>, "TAMURA, Kent" <tkent@google.com>
- Cc: JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
田村 様 木田 様 小林 敏 です. どのように検討されてきたのか不明なので,熟語ルビについては,処理方法の基本的な考え方を説明しておいた方がよいようです.熟語につけるルビと,語単位につける異言語(主に片仮名)で付けるルビ(グループルビ)では,考え方や問題のあり方は異なるということです. そこで,2字の熟語の例について,少し補足説明をしておきます(説明は,主に横組で中ツキを原則とし,ルビ文字サイズは親文字の1/2とし,前後の文字にどうかかるかは,ここでは問題としない.あくまで親文字とルビだけの関係とします). 例:師匠 ルビ:ししよう(又はししょう) 以下では師匠の例という 峡谷 ルビ:きようこく(又はきょうこく) 以下では峡谷の例という 輪廻 ルビ:りんね 以下では輪廻の例という 主に師匠と峡谷について説明する. 師匠にルビを付ける場合に,実際に行われている例を示す. 方法1 師に“し”を左右中央(以下では,特に示す以外は親文字列とルビ文字列の左右の中心をそろえる),匠に“しよう”を付ける.この配置は,いってみれば個々の漢字ごとにルビを対応させルビを付ける方法です.この場合は,別のルビの指定になるので,親文字間では分割ができる. 方法2 師匠に“ししよう”を付ける.この場合,親文字全体に対してルビを対応させる.いわゆるグループルビです.現在の組版システムでは,分割はできない. 方法3 師に“し”を対応させ,さらに匠に“しよう”を対応させ,さらに師“し”と匠に“しよう”の組合せの全体を1つのまとまりを付ける.いわゆる熟語ルビです.親文字列の分割もできる(現在の組版システムで,これをサポートしている例はないようです).この場合は,行中では方法2と同じになるが,親文字間で分割する場合,師に“し”を左右中央(以下では,特に示す以外は親文字列とルビ文字列の左右の中心をそろえる),匠に“しよう”を付ける.つまり方法1と同じになる. 紙の書籍の現状をいえば,活版印刷では方法3が主流でした.しかし,コンピュータ組版では,これがうまく自動処理できないので,方法1にする例もやや増えているように感じています.方法2は,これまでは,ほとんど見掛けないのですが,熟語全体に付けるという点では方法3に近く,たぶん,入力も簡単なので,これにしている例が見掛けるようになっています.この方法2は,輪廻で,これ全体のルビを“りんね”を対応させ,しかも,ルビ文字列の字間と全体の前と後ろに字間を空けるていることでわかる. なお,方法3は分割される場合は自動処理できないので,たぶん手動で直しているものと思われる.私がDTPで組版する場合も,そうしています. 峡谷の場合も同様に考えられるが,方法3とした場合は,処理方法は1つでなく,いくつかの方法が考えられます.どれも誤りとはいえません(活版時代にも採用されていた方法です). 例1 方法1と同じ(つまりモノルビ的処理) 例2 方法2と同じ(つまりグループルビ的処理) 例3 親文字列もルビ文字列もベタ組にし,それぞれの文字列の中心をそろえる(活版時代の横組はこれが多かった). 例4 これ以外に,縦組で行われていた方法ですが,親文字列はベタ組,峡に“きよ”を対応させ,谷に“うこく”を対応させます.そのうえで“く”を下側にはみ出させます.多くは峡の後ろは平仮名なので,その平仮名にルビの“く”を掛けるのです.ここが漢字の場合は,別の配置になります. 漢字の読みを示すルビは,縦組が多く,この縦組での“渓谷”のルビの配置は活版時代もコンピュータ組版時代も例4が主流でした. 以上は,以下の考え方によります. 原則1 熟語に付けるルビは,1字1字の読みを示すので,親文字とルビの対応は,それを考慮して決めるようにする. 原則2 熟語に付けるルビは,熟語を単位として読んでいくので,熟語としてのまとまりも重視して決めるようにする. 原則3 熟語にルビが付かない場合は,熟語の字間で分割が認められている.したがって,ルビが付いた場合でも,親文字間で分割する. このような考えから,師匠の方法3のような配置方法や,峡谷の方法3の例4の配置処理が主に行われていたのです. ですから,デジタルテキストでは,これを根本的に変え,方法1または方法2にしてもよいという考え方はなりたつ可能性はあります.つまり原則1と原則3を実現するのであれば方法1(モノルビ的な処理),原則2を重視し,原則3はできないくてよいと考えれば方法2(つまりグループルビ的な処理)を選べば,とりあえず問題は回避できるということです. しかし,従来の熟語のルビの処理方法は,そんなに難しいのか,コンピュータは,それはできないのか,何か工夫は考えられないのか,という思いもあり,私は,いってみれば抵抗しているのです. というわけで,熟語に付けるルビの分割の問題と,グループルビの分割の問題は,別の問題です.グループルビは,熟語のルビの原則1はなく,親文字列に対しルビ文字列を全体というか平均というか,まとめて対応させるということです.(こういう事情があるので,親文字列の分割がグループルビでは出来ないということが受け入れられやすかったのです.) ただし,熟語は,主に2字です(なかには3字や4字もないわけでないが).これに対し,グループルビの親文字列は,3字や4字は多く,それ以上になる例も多いのです.このようなグループルビで,行頭・行末そろえ(ジャスティファイ)を選ぶと,グループルビが分割できないと,2字以上の字間の調整が出てきて,これが字間の乱れにつながり,読んでいく際に違和感を与える可能性があり,見た目の印象も悪くするので,避けられれば避けたい,ということです.このことからグループルビでも,分割も選択肢としてあるのではないか,ということです. 以上です. 木田泰夫 さんwrote >短いルビ、特に一番基本的な、二文字熟語に読みをつけるといった典型的で基本的な場合にはやはり折り返さずに、という要求は強いと思います。もしBでブラウザが判断を行わない場合、二文字熟語でも行末にかかると分割されてしまうという動作になるとしたら、Aがより好ましいと思います。境界値の1/10はぱっと見適切なように思えますが調整が必要かもしれませんね。
Received on Monday, 18 March 2024 05:15:04 UTC