Re: 文字集合の独立性

敏さま、太郎さま、
小林龍生です。

(ぼくが考える)字体と字形の問題について、まだ敏さんにご理解いただけていない、ということが分かって、とても有益。敏さんに理解していただけるような書き方にしないとね。
で、全般的なことは、一連の議論を踏まえて書き直すアーティクルをご参照いただくこととして、以下、インラインで。

2024年6月19日(水) 7:33 Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>:

> 小林 様
> 山本 様
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> 小林 敏 です.
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> 問題は,“JIS X
> 0213”で包摂しているといい,“常用漢字表”で,“使用することは差し支えない”という言い方が同じかどうか,という解釈の問題だと思います.
>
ある時期以降のJIS X 0213原案作成委員会の一員としてですが。
JIS委員会の立場は、国語審議会答申(内閣告示)としての常用漢字表との齟齬を一切排除するということで一致していたと認識しています。
というか、JIS X 0213の改正は、常用漢字表と整合的なものにするために行ってきた、と言ってもいいと思います。
ですから、表現は異なっていても、常用漢字表で言っていることとJISで言っていることは同じです。


>
>
> ところで,“謎”は,表では2点しんにゅうであるが,1点しんゅうで印刷されていれば,それでよいということについて,“字体の許容”という言い方をしています.これと“使用することは差し支えない”は同じかどうかという問題でもあります.
>
これは、とてもいい質問。ぼく自身、じつは、明確な答えを持っていません。
すなわち、JISやUnicodeが包摂したり統合したりしているのは、字形なのか字体なのか、という問題。
さまざまな字形を一つの字体に包摂したり統合したりしているのか、それとも、複数の字体を一つの符合位置に包摂したり統合したりしているのか。
一点之繞と二点之繞やUnicodeの骨などは、それこそ骨格レベルでだいぶ差異があるので、字体の違いと見ることも出来ますが、手書きと明朝体、ゴシック体と明朝体、といった書体の違いは、抽象的な字体という意味では、かなり許容度がありそうなので、単なる字形の違いと捉えることも出来るし。
特に、之繞や糸偏などは、そもそも書体(明朝体と楷書体など)での活字レベルでのデザイン差(楷書体は手書き文字に近い)だったものが、明朝体に浸入してきたという経緯もあるので、ますます厄介です。
とはいえ、この議論は、符号化文字集合という点では、どちらでも問題はありません。要は、複数の字形や字体が単一の符合位置に包摂されたり統合されたりしているわけで、符合位置が同じだ、ということで、情報交換上は何の問題もありません。というか、複数の字体を一つの符合位置に包摂や統合することが問題だ、という反論が出て来そうですが、一点之繞と二点之繞を別の符合位置で符号化しない限りは、実用上何の問題もありません。というか、IVDはこのような問題に対する一つの弥縫策なわけで。以下、ブログの次回にでも。敏さんの先のAnnex
Aのついての疑問とも関連します。

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>
> さらに,“常用漢字表”の“表の見方及び使い方”の12の(3)には,“*”のついた字の多くは,……通用字体の扱いに字体上の差異があるものである”という説明がある.また,山本さんの引用した“使用することは差し支えない”も,山本さんの引用にもあるように,“情報機器に搭載されている印刷文字字体の関係で”という限定がついている.
>
> ですので,山本さんの資料の“JIS 1990”の字形での表示があった場合,それは,“JIS X
> 0213”では,規定された通りの字形と考えてよいが,“常用漢字表”に規定された通りの字体(“通用字体”)かといえば,“常用漢字表”で“通用字体の扱いに字体上の差異がある”といっているのであるから,“JIS
> 1990”の字形は,“常用漢字表”に規定された通りの字体(通用字体)ではないと言えるのではないか.ただ,“情報機器に搭載されている印刷文字字体の関係で”使えない場合は,それはそれでよい,といっているだけだ,という考え方が出る可能性があるということです.言い換えれば,通用字体ではないが,ない場合は,使ってもいいよ,といっているのではないか,そこに包摂とは意味の違いがあるのではないか,ということです.
>
> これまでの,歴史的ないきさつがあるので,“JIS X
> 0213”と“常用漢字表”で,できるだけ一致させるために苦労しているなあ,と思います.それはそれでやむをえないと思います.ただ,“常用漢字表をJIS
> X 0213の《きれいな》サブセットと見做しえる”かといえば,少し疑問があるよ,ということです.

これ、逆でね。JIS X 0213は、常用漢字表の(美しいとは言い難いかもしれないが)スーパーセットです。
JISの符号化漢字集合は、その最も初期の段階から、国語審議会答申としての当用漢字表や常用漢字表を基本的な典拠として開発されてきたと認識しています。
ぼく的には、先にも触れたように、JIS X
0213:2012で、常用漢字表の明朝体のデザインについての部分を、本文も含めて引用し、常用漢字表のすべての文字について、対応する面区点位置を明記したことで、原案作成委員会としてのゴールは達成したと考えています。
それでも、常用漢字表とJIS X 0213との間に、明確な齟齬があるとしたら、JISを改正するか廃止するしかないでしょうね。
予断ながら、ぼく的には、JIS X 0213を廃止しても、ぜ〜んぜん困らないような手は打っています。これが、Annex A(笑)。

おかげさまで、ぼく自身、ずいぶんと見通しが良くなりました。多謝。

Received on Tuesday, 18 June 2024 23:10:58 UTC