- From: Koji Ishii <kojii@chromium.org>
- Date: Fri, 27 Oct 2023 13:57:14 +0900
- To: 木田泰夫 <kida@mac.com>
- Cc: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>, JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
- Message-ID: <CAHe_1dLUiJ_==4ymXMf4iOM9sZP7OrFHasDb29MwKrHMp1j2sg@mail.gmail.com>
> > 私にとってはこれは詰めとは関係なくて、単に期待した揃った位置からインクが始まるかどうか、なんですよ。そういう視点の違いなのかな? 「期待した位置」がそれぞれで違うんじゃないでしょうかね。 行頭開き括弧類の天付きは、特に鉤括弧は縦線も入っていますし、左端に揃っていると、美しさを感じます。 行頭開き括弧類が二分下がりだと、字の送りが一定になって、文字の仮想ボディなのか中心なのかわかりませんが、いわゆる「グリッド」に文字が揃うので、私にとっては、これはこれで「期待する位置」の一つになります。行をまたいだ時、字がそこにあることを目が期待している位置。天付きの場合、両端揃えの時に少し開いちゃいますしね。 行頭開き括弧類は二分下がりがよい、と言っているのではなくて、どちらでもよい。どちらもメリット・デメリットがあり、幸せになる人も、悲しくなる人もいる。最近は、「天付き」がよい、という人が多そうなので、それなら既定値はそれでよい。Webは欧文も多く入るし、両端揃えしないので、グリッドのメリットが書籍よりも薄いから、天付きのデメリットも一つ消える。 それが既存サイトを壊して、既定に採用するのに困難があるなら、行頭二分下がりでもよい。 なので、既定値でこれほど盛り上がるとは思っていませんでした。それだけ個人の信念が強いんでしょう。一般にそういう場合、逆の信念の方も強い可能性が高いので、危うい、安全な選択肢を取った方がいい、と考えるようにしています。WebKitチームがいつどういう結論に至るかわかりませんが、議論を見て、もっと安全に振りたい、という案も出ているようです。連続役物や行末も含めて全部オフとか。これはこれで安全なので、我々も合意できます。小さいグループでの議論が激しい時には、存在するすべてのオプションよりもさらに安全なものを採用する、という原則もありますね。 行取り(line-height-step)は、二名の反対がどうしても収まらず、完全に消えました。しばらくはオフで残していましたが、今はコードからも消え去りました。『オンスクリーン タイポグラフィ』に出てきたので久しぶりに思い出しましたが。 役物の配置は、いつか合意ができるといいですね。 On Fri, Oct 27, 2023 at 7:51 AM 木田泰夫 <kida@mac.com> wrote: > 石井さん、 > > > ありがとうございます。詰めという観点で考えると確かに小説とそれ以外で言われるような差がありますね。読む速度と密度が相反の関係にあって、それをコントロールする。(別の話ですが、速度と密度が相反する場合、読む速度で以って読みやすさを測定する方法は成り立ちませんね) > > 私にとってはこれは詰めとは関係なくて、単に期待した揃った位置からインクが始まるかどうか、なんですよ。そういう視点の違いなのかな? > ただ、そのような美的な観点というのは雑誌などのファーストメディアでより強いのかもしれませんね。 > > 木田 > > 2023/10/27 1:48、Koji Ishii <kojii@chromium.org>のメール: > > On Thu, Oct 26, 2023 at 10:51 PM 木田泰夫 <kida@mac.com> wrote: > >> >> 紙、電子共に、書籍では、敏先生のおすすめが好みですが、PowerPointスライドやWebで見ていると、木田さんに賛成したくなります。これは、スローメディアとファーストメディアの違いではないかと想像しています。 >> >> >> 主に興味なのですが、書籍で括弧の二分空きを好まれる理由はどんなところにあるのでしょう? >> 段落最初の行頭のアキが、それが会話で始まるか、地の文かで違ってくるのは、私は単に作業効率をきっかけとする慣習かと想像していました。そうでなくて、そちらの方がより良いと考える理由が私には理解できていなくて、石井さんなら分析してくださるかなと。 >> > > そんなにお褒めいただきすぎると、調子に乗りそうで、、、気をつけながら書いてみます。長文失礼。 > > 私見ですが、二つの仮説を普段考えています。一つ目は、読むスピードと飛ばし具合の調節です。以前ご紹介した「オンスクリーン > タイポグラフィ」に佐藤好彦さんが「見出しの場合は、ひとかたまりの情報として目に入ってほしいので、本文よりも文字詰めをしたくなることが多い」という一節があります。敏先生が数日前にここに投稿してくださった『日本中世に何が起きたか > 都市と宗教と「資本主義」』の写真でも、見出しは、級数が同じでありながら、隣の本文よりも10%くらい詰まっています。ちょうど同じ文字が並ぶのでわかりやすいですね。マガジンハウスで雑誌デザインの仕事をした時には、本文は、デフォルトで長体(縦書きなら平体)をかけつつ、10%から20%くらい詰める(CSSで言えば > `letter-spacing: -10%` > ですね)実ボディが小さめのフォントだと30%詰めることもある、と習いました。詰めて、アキをなくしていくと、佐藤好彦さんが書かれたように「ひとかたまり」になり、それだけ、斜め読みしやすくなる、読む速度が上がる、ということなのだと理解しています。 > > > 書籍の方には(このMLで書籍の話を私がするのはすごく気が引けますが)読む速度が速くなりすぎないように気をつけている、というお話もお伺いました。斜め読みをする、ということは、一部を読まずに、読者の推測で補ってしまうことなので、作家としてはありがたくない場面もあると。せっかくの伏線を読み飛ばされてしまったりとか。アキをしっかり作り、游明朝やリュウミンなど細めで実ボディも小さめのフォントで、白い部分をたくさん作ると、ゆっくり、じっくり、一字ずつ飛ばさずに読んでもらえる、と聞いて、意識してみると、なるほど、と感じます。 > > > 逆に、雑誌や見出しよりも、もっと「ひとかたまり」にしたいのは広告で、こちらは詰め組が普通ですよね。斜め読み、というより、縦読み(横組の場合)とか、目線をほとんど動かさずに見るだけ、とか。たくさんの文字を詰め込みたいから、という説もありますが、詰めることで、ひとかたまりの図形としての見た目の美しさと、飛ばし読みできる速さを出すのが主眼ではないかと思っています。 > > そう考えると、より忙しく「タムパ」重視の時代に合わせて、より詰めるスタイルが好まれるようになっていく、というのも説明が付きます。25年前にJAGATなどでMS > Wordの行頭の調査をした時には、「行頭開き括弧はすべて二分下がり」を好まれる方が、半分くらいはいたような気がします。 > > > 一方で、これはプラシーボ効果かもしれないとも思います。そう聞いてしまったので、そう思えるだけかもしれない。二つ目の仮説は、木田さんも書かれているように「慣れ」なのかな、と。本を読む時は、きちんと時間を作って、お茶を入れて、ゆったり読む。その時は、いつもこういう組版。Webや雑誌は、ザッピングしながら読む。時間が一分しかないとわかっていても、ちょっと開いて、読んで、終わりにできる。その時は、いつもこういう組版、という慣れですね。ポータルサイトやPowerPointスライドは中吊り広告みたいだし、昔「すべて二分下がり」を好む人が多かったのは、活版組版や原稿用紙に慣れていた人が多かったから、とか。 > > > もっとも、私は組版の大家を目指しているわけではなくて、分析してしてシステムを考えたいだけの人なので、「書籍>雑誌>広告・グラフィックス」の順に「アキを削る」「詰めたくなる」「白い部分が減る」傾向を見て、それぞれ目的があるのだ、優劣があるわけではなくて目的によって使う道具が変わるから、どのパターンも必要なのだ、と理解することが私には重要で、調べていく中で自然に仮説を思いつきはしますが、検証するところまでは行きません。 > > そういう立ち位置なので、この中でどれか一つ、一番推しを決めましょう、という議論になると、Webと書籍では答えが違うのではないか、とか、我々のよく知らない他の分野の組版では、違う答えがあるのではないか? > と検証したくなるんですね。 > > >
Received on Friday, 27 October 2023 04:57:33 UTC