RE: 全角幅送りの議論

(コメントします)

> 写植:文字盤の文字として17級または16級(写研とモリサワで異なった),これを拡大縮小レンズで比例的に拡大・縮小.

いえ、これは機種依存だと思います。写研製の手動写植機は32Q以下と38Q以上とで、レンズの拡大倍率が異なっていました。さらに、以後の写研製の自動写植機等では30Q以上では拡大倍率を選択できるようになったことが、『技術者たちの挑戦 写真植字機技術史』(布施茂 著、創英社/三省堂書店)のp. 18に記述があります。

また、書体デザイナーが作図する原字パターンの大きさは、全角相当のサイズが48mm, 62.5mm, 120mmなど多様な種類があり、その方形内にグリッドを引いた用紙が用いられました。その原字パターンから縮小・拡大される、文字盤やフォント内に収容されている文字の大きさは、主に技術的な条件で定まり、デザイナーの作図のサイズからは独立しています。他方で、フォントや文字盤が利用される際の主たる用途や主に用いられるサイズを考慮して書体をデザインすることは、それらとはまた独立して必要になります。このことは、直接彫刻した父型を用いて母型を作成した、ベントン彫刻機導入以前の(主に欧文)活字と、写真植字やデジタルフォントとが異なる点といえます。

> コンピュータ:私は,わからないが,たぶん写植的と睨んでいる.つまり,ある決まったサイズのフォントデータがあり,あとは比率計算で拡大・縮小しているのでは?

はい、原理的には写植と同じだと思います。フォント内のグリフの形状を記述したプログラム(Type 1ではcharstringと呼び、ISO/IEC 9541的にはglyph procedure)の中では、輪郭線の構成点と曲線の制御点の情報が記述されますが、その各点の座標値は、その座標系において、あらかじめ全角に相当するその座標系での正方形の大きさを決めておくことで(Units Per EM, UPM)、1 / UPMで掛けることで単位正方形に相当する大きさに正規化され、それを指定文字サイズで掛ければ、どのような大きさの文字も生成できる、という原理だったと記憶していますが、これは、レンズで文字盤上のネガ像を拡大・縮小しているのと、効果としては同じだと思います。

山本

Received on Wednesday, 11 October 2023 09:44:19 UTC