行長とマージン

木田 様
みなさま

 小林 敏 です.

行長とマージンの問題点を,すこし整理してみました.

1 以下の問題は関連していますが,分けて考えた方がよい.

1)望ましいマージンとは,どのようなものか

2)日本語組版の行長は,どう設定すべきか.
 日本語組版の行長は,文字サイズの整数倍に設定する必要があるか
 マージンと行長の決め方
  マージンを決め,その結果として行長が決まる
  行長を決め,その結果としてマージンが決まる
 整数倍に設定する場合,行長は,文字サイズ×文字数という設定ができるとよい

2 望ましいマージン
これはむつかしい.字詰め方向のマージンは,配置領域と行長が決まれば,それで決まるということにはならない.例えば,紙の本で考えても,句集,一般の単行本,雑誌では,望ましいマージンは異なる.つまり,配置領域と行長だけでなく,配置される内容の密度(雑誌のように密度の高いものは,余白は小さくてもよい)も関係する.

3 日本語組版の行長は,文字サイズの整数倍の設定
これは,日本語組版のすべての場合に必要とはならないかもしれないが,間違いなく,それが必要になる場合が多い(この問題は,山本さんや私のメールで理由を説明している)

どんな方法が考えられるは,次項でWordの例を示す.

4 マージンが先か,行長が先か
これは,両方とも指定が可能になればよいのだが,実際には困難かもしれない.ここでは,いくつかの問題を指摘することにする.

1)マージンが先か,行長が先かにかかわらず,両者は,同時というか,両方を関連させ決めていく.設定は,どちからを優性しないといけないが,決めるにあたっては,両方を関連させて決めていく.マージンが先であっても,固定レイアウトの場合は,いくつかの方法があり,対応が可能であった.しかし,変動する世界では,それは無理なので,何らかの処理方法が必要になる.

2)変化するデジタルテキストの世界では,マージンが先か,行長が先か,いうこととは関係なく,そもそも字数もマージンも変化するわけだから,何か相対量で指示するなど,別の仕組みが必要になる.

3)日本語組版の立場からは,内側から(行長)が指示できる何らかの方法があるのが望ましい.もしくは,行長は,文字サイズの整数倍にしかならない,という処理方法が選択できるとよい(整数倍にしなくてよい場合もあるので,あくまで選択できるという方法).

4)参考までに,以下は,固定レイアウトでの指定方法

例1 InDesignでは,文字サイズ×字数で設定できるが,設定画面では余白の数値が示されているので,それをにらみながら,最終的に行長を決めることができる.

例2 むかしのQuarkXPress,方法は2つあった.
 a 予め配置字数と配置領域の大きさを元に計算をし,行長が整数倍になるように余白を計算し,設定する
 b 行送り方向のテキストボックスの大きさの設定を,文字サイズ×字数で行う

ところで,Wordでも基本的な配置方法は,マージンを設定することから自動的に行長が決まる方法である.(テキストボックスであればQuarkXPressのbの方法も可能.)

Wordの場合,文字サイズと字数から設定できるように見えるが,基本はQuarkXPressと似ている.余白の設定と字数の設定は連動して動くが,必ずしも行長が文字サイズの整数倍に設定されるわけではない(いくらか誤差というか,半端がでる).ですので,正確に設定したい場合はQuarkXPressのaの方法が必要になる(私は,いつもそうした方法をとっているが,多くの人はそうした方法はしたがらない).そうしないと,行長は,正確に文字サイズの整数倍にならない.

ただ,Wordでは,設定画面で“標準の字送りを使用する”という選択肢が準備されており,これを選ぶと,行長は文字サイズの整数倍になる.ただ,その調整は行の末尾にアキを追加するという方法なので,横組で左右中央になるように余白を設定した場合,正確に左右中央にならない.

でも,少なくとも,Wordでは,行長は文字サイズの整数倍になる方法は用意されているといえる.変動する世界でも,行長は,そこで使用されている文字サイズの整数倍で決まるというか,制限された処理方法が選べるようになっていると,とてもよいのだが,……

4 回り込みの問題
回り込みとは,横組でいえば図表を配置した左右(縦組では上下)に行を配置することである.この配置する行長は,図表の大きさによって変化する.この行長も,日本語組版では,文字サイズの整数倍になることが望ましい.(DTPでも,この処理は結構むつかしい,下手な人では,整数倍になっていなく,行の調整処理で字間が空いた例は,よく見かける.)

なお,回り込みの行が横組でいえば図表を配置した右(縦組では下)になる場合,行末がそろっていることが望ましい.行頭そろえにした場合に,行末がそろわない場合も発生し,見た目に,すこし乱れた印象を与える可能性がある.

Received on Wednesday, 30 August 2023 02:24:51 UTC