Re: simple-ruby ドキュメント

木田泰夫 様
みなさま

 小林 敏 です.

  木田泰夫 さんwrote

熟語ルビは,熟語のまとまりをできるだけ維持したいということです.
特に,以下の場合(この例は多い),
 咀嚼(そ/しやく) モノルビ的に“咀(そ)+嚼(しやく)”とすると,通常“咀”と“嚼”の字間が四分空いてしまいます(ベタにする処理もあるが,ルビは“咀嚼”の中央に配置されない).熟語ルビの処理では咀(そし)+嚼(やく)とすると,字間はあかない.

つまり,字数が多くなればやむを得ないが,できるだけ熟語内の字間を空けないで,熟語を一つのまとまりとして処理したいということです.ルビをたよりに読む場合もあるが,読める人は親文字を主に読んでいく(ルビは補助的と考える).ですので,熟語ルビといった場合,できるだけ熟語のまとまりを維持したいということです.

なお,熟語のまとまりは重要なので,ルビのあるなしにかかわらず熟語の2行にわたる分割(“泣き別れ”ともいう)は,できれば避けたい,という考え方もあります.ただし,分割禁止にすると,行長の調整処理を行う必要がでてくるので,できれば分割禁止にしたいが,問題もでるので,いいことにしようということです.

ただし,行長の調整処理の問題は,以下の2点です.
 1 活字組版では手間がかかる.
 2 字間を詰めたり,空けたりして,見た目のバランスを壊す.

この点については,組版がコンピュータで処理するようになり,1の問題は少なくなった.また,2の問題も,微細な調整量が可能になり,活字組版よりは,いくらか問題は軽減されていると考えてよい.(ただ,こうした事情を顧慮してきちんと考えた人はいない,といってよい.つまり,これまでの考え方以上に出ていない.)

ですから,以上から言えば,木田さんのいう重要性は1と,私は考えます.

次に熟語ルビの基本的な扱いについてですが,私は,できるだけ残したいと考えている.理由は以下です.

モノルビとも,グループルビとも,熟語ルビは,そのルビの親文字との対応関係は異なる.つまり,配置処理(表現型)が異なるというよりは,その目的や性格は異なる(別のものは別のものとして区別して扱っておいた方がよい).その結果として,配置方法が異なる場合が出てくるということです.また,別の扱いにしておけば,その配置方法でどうするかを考えることができる,ということです.(現状の熟語に付けるルビの配置処理は,いろいろな工夫を行っており,いろいろな処理方法が行われているという事情があります.とにかく熟語ルビとの指定があれば,そうした配置方法の工夫も可能になっていきます.)

ただ,現状のコンピュータ組版では,(自動処理が前提の場合)処理上の問題からグループルビまたはモノルビに似た処理が採用されているということです.現状で可能な表現型が似ているからといって,採用しないのは,よくないのでは,と私は考えています.ですので,残すための妥協はやむをえないと考えている.

次にa案b案について

それぞれの親文字に対応したルビが親文字サイズを超えない場合と,そうでない場合に分けて,JIS X 4051では処理法を書いており,JLReqでも,その処理法を書いている.ただ,これは,あくまで便法であり,ある意味で妥協的な方法です.ですので,その妥協的な方法を元に考えていくことは,どうもすっきりしないというのが,率直な感想.

前のメールでは,グループルビ的な処理の例は分割できないのがつらいと書いたが,モノルビ的にして分割を可能にするのも,できるだけモノルビ的にしないで,なんとかしようというのが熟語ルビなので,どうもしっくりしない.たしかに2字の熟語は問題はでませんが,3字以上になると,他の箇所と違った処理がでてくる.

>敏先生、
>
>熟語ルビは下の二つの長所を持っていると理解しますが、どちらがより重要なんでし
>ょう?
>
>1) 字間の空きを最小限に抑えつつ、字間を空けずに可能な場合にはモノルビのように
>漢字に対する読みを正確に示す(つまり字間を開けないことを重要視するルビ)
>2) 行の折り返しが可能であること
>
>もし 1 のほうがより重要なら、行の折り返しが来てしまうという比較的少数の例外に
>おいて、ある程度妥協が可能ではないでしょうか? そもそも、二文字熟語の場合に
>は本来の熟語ルビと先のメールの a は同等となります。
>
>もし 2 のほうがより重要なら、折り返しの実装を可能にする a / b などの妥協はそ
>う悪くはないのではないでしょうか。
>
>(もちろん、a/b の簡略化で実装が容易にならない場合はこの議論は成り立ちません。
>それは私の宿題として)
>
>
>村田さん曰く:
>> 
>> 私は熟語ルビを落とすか分割不可にするかのどちらか
>> にするのが良いと思います。
>
>そういう落とし所になってしまう気もしますが、グループルビの折り返しの問題もあ
>りますので、分割可能化への道筋をもうちょっとだけ粘って調べたいのです…
>
>木田
>
>> 2023/05/23 15:32、Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>のメール:
>> 
>
>> 
>> 木田泰夫 様
>> みなさま
>> 
>>  小林 敏 です.
>> 
>> 以下の2案ですけれど,いろいろと考えると,両方ともなんらかの問題がでます(ち
>> ょっときつい表現ですが,中途半端なように感じます).ですので,熟語ルビの処
>> 理を簡略にするということであれば,いっそのこと,すべて“分割禁止”としても
>> よい(ただし,注記で“JIS X 4051では分割可としている”という記述を入れた
>> い).熟語ルビは,熟語を単位として,できるだけ扱いたいという考えなので,す
>> べて“分割禁止”という考え方も採用できる.
>> 
>> また,熟語ルビを“分割禁止”とすれば,2段階による処理という考え方が生かされ
>> ます.
>> 
>> 以上,ご検討ください.
>> 
>> > > 木田さんの簡略案の
>> > > a) 全体が入らない場合は、全体をモノルビの列として扱う.
>> > > b) 熟語ルビがグループルビになる場合は折り返さず,モノルビの列になるとき
>> > > には
>> > > 折り返せる.
>> > > 
>> > > いずれも一長一短がある.ただし,熟語ルビは,親文字は2字であることが多い.
>> > > 3
>> > > 字以上は,それほど多くない.3字以上の場合に,aでは2字や3字と分離された
>> > > もの
>> > > が問題となるが,グループルビの処理になる場合に分割できないのもつらい.
>> > > 
>> > > このように考えると,aの方がよいように思われる.
>> > 
>> > 了解です。
>> 

Received on Wednesday, 24 May 2023 03:53:23 UTC