RE: web における和欧間スペース

各位

> 一応現場的な対処としては「アキを入れたくなければ全角英文字を使う」というのがありそうですが、それが本来的に正しいのかと言われると違う気もしますね。

これは正しいと思います。なぜなら、文字コードで区別される文字は、グリフが「全角」であるか「半角」であるか「プロポーショナル」であるかを区別しているわけではありません。「全角英文字」に全角グリフを用いる場合が多いのは習慣(あるいは定着していれば慣習)でしかありません。他方で「全角英文字」の文字を選択していることには、文字の種別がローマ字であれ何であれ、日本語であるということを意識して、その部分を区別する意図が働いていると推測できます。この理由から、「アキを入れたくなければ、全角英文字を使う」という方法が、間違っているとは考えません。

>(考えてみれば英語でも数字と単位の間はスペースを入れたり入れなかったりしますね。スタイルブックにはどちらかちゃんと書いてあるんでしょうけれど、実際に両方見ます)

これについては、統一したスタイルは確立していません。また、言語圏によっても異なるようです。ISOはスペースを入れろ、The Chicago Manual of Styleは入れるな、と言っています。この不統一については、以下の議論が参考になります。

https://english.stackexchange.com/questions/3281/should-there-be-a-space-before-a-percent-sign


ここでコメントしている人の一人が、次のように書いていることは教訓的です。The Chicago Manual of Styleはきわめて優れたスタイルブックですが、あくまで一つのスタイルに過ぎないということを示すもう一つの例です。もう一つの例は、昔の版で、標準的な欧文のワードスペースを(限定条件付きとはいえ)1/3 EMとしたことが、しばしば日本で誤読を誘発したことです。

Yet another reason not to trust the Chicago Manual of Style.
(by Onewhaleid, Apr 8, 2017 at 6:32)

また、和欧間のスペースは、単語と単語を区切るために用いられているのではなく、和文と欧文とを区切っているものだと思います。例えば、次のような文(「コンピュータ言語のFORTRANではGOTO文を使わずにプログラムは書けなかった」)があったとき、
[テキスト, 手紙  自動的に生成された説明]
和欧文間のスペースは、以前の議論にもありましたが、「スペース」文字を挿入されていない箇所に自動的に組版段階に行われる、目的としてはグリフ間の位置調整が目的なのであって、文字=テキストのレベルの内容を視覚的に反映することを目的としたものではありません(内部的には、グリフレベルで文字組みが行われない場合には文字のレベルで文字が組まれる場合があるとしても)。

ですから、FORTRANの前後とGOTOの前は欧文と和文の間のスペースだがGOTOの後のスペースは「GOTO文」という単語を「GOTO」と「文」とに和欧間スペースが分断しているから間違いである、と考えることはできないでしょう。なぜなら、和欧間のスペースは、あくまでグリフの種別間に対するスペース調整だからです。もし「GOTO文」は日本語の一語なのだから「GOTO」の前後はスペースを空けるべきでないと考える場合には、文字=テキストレベルで、そのことを明示する必要があります。それには、既に挙がっている「全角英数字」のコードをGOTOに用いる方法があります。この場合でも、そのGOTOのグリフに必ず全角グリフを用いる必要はなく、プロポーショナルのグリフを使うこともできます(上の画像下の例)。

(明示的に分かち書きしない限りワードスペースが存在しない日本語テキストに、特定の語句についてスペースを導入したり、和欧間のスペースをその種のテキストレベルの区別に利用するのは、特殊個別にそれぞれ色々多様なやり方で行われることはあるとしても、そこに一般的な法則はないと思います。私は個人的には、それは、特に必要な場合を除いてやらない方が良いことの一つに感じています。編集者と合意しておくべき事柄を不必要に増やすのではと心配するからです)。

山本太郎
アドビ

Received on Monday, 25 July 2022 07:36:40 UTC