- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Mon, 18 Jul 2022 13:32:49 +0900
- To: 木田泰夫 <kida@mac.com>
- Cc: MURATA Makoto <eb2m-mrt@asahi-net.or.jp>, JLReq TF 日本語 <public-i18n-japanese@w3.org>
木田泰夫 様 みなさま 小林 敏 です. 木田泰夫 さんwrote >敏先生、 > >熟語ルビの最も重要な性質だけを取り出すと、一つは分割ができるということ、もう >一つは以下である、という理解は正しいでしょうか? > >親文字一文字一文字に対応するルビの長さが全て対応する親文字の文字列長以下であ >って、かつ、対応する親文字の文字列長より短いものが存在する場合に、ルビを漢字 >の読みに対応させるように配置する。親文字をはみ出るルビが存在する場合は、ルビ >全体をグループルビのように配置する。つまり簡単に言うと、心はモノルビだが、は >み出た場合は自動的にグループルビにしたい、という機能。 JIS X 4051の処理方法またはJLreqの本文の説明の範囲では,上記の理解でよいです.しかし,これは,かなり簡略化したものです. ですので,JLReqの附属書の“F 熟語ルビの配置方法”の方法は,もうすこし親文字一文字一文字に対応する努力をしています. ですから“心はモノルビだが,はみ出た場合は自動的にグループルビにしたい”というのは,いってみれば便法としての方法です. 熟語ルビは,個々の漢字の読み方を示すとともに,熟語としてのまとまりも重視したいということを実現したい,ということです. その処理は,具体的にケースでは,モノルビ的処理もあれば,グループルビ的な処理もあるし,その以外のいろいろな処理方法があるということです.“いろいろな処理方法”は,活字組版では実現できるが,機械的なコンピュータ組版では,個別箇所で個々に決める方法であればよいが,自動処理では,ある程度の妥協なり,便法が必要になるということです.その一つの方法がJIS X 4051の処理方法ということです. “いろいろな処理方法”について,縦組を前提に,コンピュータ組版の自動処理で実現する一つの方法としてまとめたのが,JLReqの附属書の“F 熟語ルビの配置方法”の方法です(横組も含めて一般化した方法は,別のドキュメントにまとめています). >一文字一文字、という制限がありますが、例えば熟語訓を含んだ熟語に対して、これ >を熟語ルビ的に処理したいケースがあるのではと想像します(良い例を思いつきませ >んが)。このような場合はどのように考えられてきたんでしょう? これは熟語ルビではなく,グループルビで処理されます.親文字一文字一文字に読みは対応していないからです.熟字訓とよばれています. 例 飛白:かすり 田舎:いなか もっとも,以下の例は,モノルビでもグループルビでも処理できます.グループルビで処理すると中ツキの形になります.親文字1字,ルビ1字で肩ツキが選択された場合でも熟字訓では中ツキ,つまりグループルビの形にする方法が一般的ですが,肩ツキにする方法もあります. 例 生命力:いのち この問題は,以下の例でも問題となります. 例 遊牧民:ノマド >グループルビを折り返す時にルビの対応を示すため、熟語ルビを援用できないかと考 >えたのですが、実際にこれが有用なケースは少ないかも、という気もしてきました。 >単に分割の考え方を示すだけで良いのかもしれません。 >「基本計画(マスタープラン)」は有用な例ですが、漢語と英語の対応で語順が同じ >とは限りませんし、オブ、など接続詞が入ってくるとお手上げです。この例のように >明確に複数に分けられるなら「基本(マスター)計画(プラン)」と二つのグループ >ルビすれば良いでしょう。もう少し例を見る必要がありそうです。 現在,読んでいる“あの図書館の彼女たち”(ジャネット・スケスリン・チャールズ著,高山祥子訳,東京創元社,2022年4月)では,グループルビがけっこうあり,グループルビルビの分割を大胆に行っています.例をいくつか示します.前が行末,後ろが業容部分,最後が分割していないものを示す. 高級婦:クチユ 人服:ール 高級婦人服:クチユール あ:メ りがとう:ルシー ありがとう:メルシー 驚い:モン・デ た:ユー 驚いた:モン・デユー 赤ん:ペ 坊:ペ 赤ん坊:ペペ アメリカ図書館協:AL 会:A アメリカ図書館協会:ALA ここまで,やるかどうかは問題かもしれませんが,ルビは必ず親文字とルビの対応を記述しないといけないので,その際にどの親文字とどの親文字を組み合わせるかを著者なり編集者が決めればいいことのように思います. さきほどの熟字訓でも,以下のように“煙草”だけをグループルビにする方法と,“煙草盆”と全体をグループルビにする方法があります.これは著者なり編集者の判断で,親文字とルビの対応をどうするかで決まります. 煙草盆 煙草:たばこ+盆:ぼん or 煙草盆:たばこぼん) 熟語ルビでも同様な問題があります. 東京:とうきょう+都:と or 東京都:とうきょうと 鎌田正:かまだ+正:ただし or 鎌田正:かまだただし そして,グループルビの分割を考えないのであれば,まとめて全体の親文字とルビを対応させる,つまり分割できない形で入力すればいいことです. 要は,分割が可能になる仕組みを用意し,その利用はユーザーの判断にまかせる,と考えてはいけないのかな? 熟語ルビのルビの字数の少ないケースを処理できれば,グループルビと合体できます.熟語ルビの親文字1字とルビ1字だけではなく,親文字2字以上とルビの対応を設定できればグループルビを分割が可能にできます(これは,いってみればグループルビの分割可能位置をを示すことです).その際に,以下の内部処理の選択が可能なら,ルビの字数の少ないケースを処理できます.2行に分割された場合も同一の方法で処理するので,問題はでないようになります.そしてデフォルトをaとすれば,こだわりのある人だけが,問題となる箇所だけでbを選べばよいように思います. a すべて全体をグループルビ的に処理 b 親文字とルビの組合せについて,モノルビ的に処理 のいずれにするかが選択できるようにする. なお,グループルビの分割可能位置を示す場合,親文字とルビの組合せの数があわない場合ですが,これは親文字だけ,ルビだけが表示されるという問題がでる.しかし,グループルビの分割可能位置は1箇所しか利用されないで,そのケースはあまり出ないのではないかな.
Received on Monday, 18 July 2022 04:43:59 UTC