Re: 括弧類前後のアキ

木田 様
田嶋 様
みなさま

 小林 敏 です.

本文中の括弧類だけを小さくする例は少ないと思います.ただし,カギ括弧は,フォントによってデザインがよくない例(例えば“ヒラギノ”のデザインはよくないと私は思います)があるので,何か工夫をすることがあるかもしれません.(また,見出し,特に表紙の書名などになると,カギ括弧などが大きすぎるので,小さくする例はあります.小さくしたいということが主です.この場合は,行の調整処理の問題はでません.)

また,見出しに関連し,見出しの句読点や括弧類のアキが目だちすぎるので,アキをツメル処理をしている例は,けっこう見かけます.方法は2つあり,二分アキを四分アキにする,またはベタにします.私は,前者を採用しています.この処理は,目次,あるいは柱などでも行われています.この場合は,一般に行の調整処理の問題は発生しません.あくまでアキ過ぎを直したいという処理です.

次にカギ括弧の中にさらにカギ括弧を使う場合,「『 』」とするのが一般的ですが,元の引用文のカギ括弧が一重か二重か不明になるので,「」の内部のカギ括弧は小カギと呼ばれるカギ,横組でいえば,垂直線を短くしたカギ括弧(OTFでは異体字として小カギがある)を使う方法があり,それを使う例は,けっこう見かけます.ただし,小カギも文字サイズは同じです.外側と内側で,カギ括弧の見た目の大きさを変えて区別を付けたいということです.ですから,小カギにしたからといって,行の調整処理の問題はでません.(この小カギは活字組版時代から使用されていました.)

次にパーレンで補足をする場合は,パーレンとその囲った内容全体の文字サイズを本文より小さくする処理は,今日では,多くの書籍でやっています.活字組版では,行の調整処理も発生し,これはけっこう面倒なので,採用しない例があったが,コンピュータ組版では簡単なので,採用が増えているといえるでしょう.この場合は,パーレンで囲った箇所はすべて小さくする方法と,一部だけを小さくする方法があります.私は後者です.というのは,私は括弧書きの補足が好きで,かぎりなく本文にちかい箇所もあり,そうした箇所は小さくしたくないからです(ただし括弧書き多用は,読者にとって読みやすいとはいえないので,括弧を使わないように工夫しろ,という考え方もあります.)..

また,パーレンと山括弧については,岩波書店の書籍を見るとわかると思いますが,二分の字幅のものを,その前後をベタ組にした処理をしています.この方式は,岩波書店以外の出版社でも一部で採用されています.私も過去にはそうしていましたが,最近はやめています.原則どおりで,あまり例外的な処理は採用しない方がよいだろうと思うからです.これは,パーレンと山括弧は,主に補足的なことを示すので,二分アキがアキ過ぎであると考えての処理です.

この方法は,活字組版時代から採用されていた方法です.とうぜん,行に奇数個しない場合は,行の調整処理の問題は発生しますが,それでも,その方がよいと考えて採用されていたものです.活字組版では,二分台のパーレンと三分台のパーレンがあり,台に応じて二分は円弧が深く,三分は円弧が浅いもので,この円弧の浅い三分のパーレンを二分の台に鋳込んで使用していました.ですので,このパーレンをベタ組にしても,いくらかアキが発生します.

活字組版では,二分台のパーレンのように円弧が深いパーレンは,コンピュータ組版では,あまり見かけません.活字組版の二分台のパーレンよりは一般に円弧が浅くなったともいえます.ですので,活字組版で訓練されたものにとって,最近のパーレンの前後のアキは,ちょっとアキ過ぎかなと思う場合もあります.

コンピュータ組版では,括弧類の前後のアキや句読点のアキは,手数は少しは掛かりますが,けっこ簡単に調整できますので,なかには意図的にベタ組した例や,二分より詰めた例もありますが,けっこうアキがバラバラで,どのような方針か読めない場合もあります.

  田嶋 淳 さんwrote

>木田さま
>
>私がこういったデータを作っているわけではないので推測になりますが、DTPの場合は
>アキ量の細かな調整は後から目視で確認して行うことが想定できますので、括弧など
>特定の文字のサイズを合成フォントの機能で調整している場合の意図は文章内の特定
>の文字のサイズ(バランス)調整が主眼だろうと思います。英数字に従属欧文を使用
>しない場合(書籍の組版ではそれが普通です)に欧文文字のサイズを合成フォントで
>微調整している例などはかなりよく見ます。
>
>> 
>> 2021/08/23 14:44、木田泰夫 <kida@mac.com>のメール:
>> 
>> 
>> 田島さん、
>> 
>> ありがとうございます。サイズを縮小することで、1) アキが小さくなる、2) 括弧
>> 自体が小さくなる、の二つの効果があると思いますが、この処理の場合、どちらが
>> 主眼というのはありますか?
>> 
>> これを行うと括弧の含まれる行全てに行の調整が入りますよね。まさにデジタルで
>> なければできない工夫ですね。
>> 
>> 木田

Received on Monday, 23 August 2021 07:39:07 UTC