Re: UTCへのレターの本体

みなさま

 小林 敏 です.

本体への疑問ではなく,あくまで参考として,問題となった以下文字の用法をまとめておきます.

1 U+2016 双柱 この用法は多くありません.

“句読点、記号・符号活用辞典”では,“事項・見出しとその説明や,性質の異なる記述をくぎる場合,また,文や語句をあるまとまりでくぎり場合などに,くぎりの線として用いる.”とあります(ここの横組の用例では,双柱は水平方向ではなく,垂直方向の例が示されています).この用法は,ある意味で区切りが示されていればよいわけで,必ずしも双柱でなくて,コロンでもいいわけです.

ところで,二本線の記号は,語句の“つなぎ符号”としての用法が代表的な用法です.これは英語の語のつなぎ符号に二分ダーシを使うことからきたのではと推測しています.
Klein–Nishina's formula
これにならい和文でも“クライン–仁科の公式”とする例があります.
ただし,“ワインバーグ–サラム理論”とする方法以外に,“ワインバーグ゠サラム理論”とも表記します.

もっとも用例が多いのは複合姓です.欧文では二分ダーシを使用します.
Jean-Jacques Rousseau
この場合は,和文では,“ジャン゠ジャック・ルソー”とする例が多いでしょう.

ところで,この二本線のつなぎの符号は,横組では,通常,ダブルハイフン(U+30A0)を用い,前後をベタ組にします.縦組では,いくつかの方法があるというか,原則はダブルハイフン(U+30A0)だと思いますが,入力が簡単ではなく,いくつかの方式があります.
 ダブルハイフン(U+30A0)で前後ベタ
 ダブルハイフン(U+30A0)で前後四分アキ
 双柱(U+2016)で前後ベタ
ここで双柱を使った例もあります(なかには等号(U+003D)を使用した例もあります).

2 U+FF1B 全角セミコロン

セミコロンは,和文でも語句の列挙などに用いられています.

ところで,英文のセミコロンは,コンマより区切りの意味が強い場合に用いられています.このへんの事情は,Norris,Mary“Between You & Me: Confessions of a Comma Queen”(W W Norton & Co Inc,2016)(有好宏文訳“カンマの女王 「ニューヨーカー」校正係のここだけの話”,柏書房,2021年)にくわしく書かれています.

この英文でのセミコロンの用法を,日本語でセミコロンを使って表現する用法はありません.で,どするかといえば,読点でがまんするか,2倍ダーシを使います.

そして,石井さんが縦組での用例は見ていない,と指摘されていたように,日本語の横組では見ますが,縦組での用例はないようです.JIS X 4051でも,文字クラスを示す表の“字形”欄では,縦組の欄では示していません.

3 U+3030 WAVY DASH

ここでは,用例ではなく字形についてすこしコメントしておきます.

縦組の縦向きにす場合,横組の字形を単純に90度回転(最初の線が左から右に)させるだけでよいか,反転(最初の線が右から左に)させるかという問題です.この問題は波形(~)と似ています.

波形は,もともとは数学記号(差を示す)であり,戦前の印刷の本では,波形を数学記号としてしか示していない本もあります.これが範囲を示す記号に代用され定着したと思われます.

ですので,1980年代までは,縦組に用いる場合,横組字形を単純に90度回転させて字形(最初の線が左から右に)が使用されていました.(この字形が気になって,1990年前後の本を読む場合は,この字形の常に注意しています.)
 例:下順二「訳」著“木下順二が語る 保元物語”(平凡社(かたりべ草子),1984.1.10,p.56)
   “世界”(1985.5.1,岩波書店,p.91)

ところが,1980年代の中ごろから,90度回転させた字形(最初の線が左から右に)が見られるようになっており,今日では,多くがというか,すべてが反転(最初の線が右から左に)させる字形が使用されています(すくなくとも,2020年以降で刊行された本で,横組字形を単純に回転させた字形は見ていません.).
 例:“アステ vol.3”(1986.11.1,p.13) 
   宇野功芳著“クラシック名曲・名盤”(1989.5.30,講談社現代新書,p.98)

どうも,コンピュータ組版が使用されてきたことが影響されたのではと,推測しています.

ですので,村上さんが指摘されていたように,現状ではU+3030(WAVY DASH)は,反転させていない字形は使用されていないということのようですが,手間を掛けるまではないということでしょう.ただ,波形で変わったように,反転させた字形の要求もでて,それが使用されるということもあるかもしれません(DTPでは文字の反転は処理できますから).

U+2702(ハサミ)についてはコメントはありません.

以上です.

Received on Wednesday, 18 August 2021 05:12:57 UTC