UAX50 への対応に必要なフォントの変更点

UAX50 への対応に必要なフォントの変更点

ざっとまとめてみました。これをベースに話しましょう。


1. 縦書き字形を UAX50 の期待する方向に合わせるために必要な変更

vert を取り除く *1
U+2016	双柱, DOUBLE VERTICAL LINE *3
U+2702 ハサミ *4

90度回転した縦書き字形への vert を加える *1
U+FF1B 全角セミコロン, FULLWIDTH SEMICOLON *2
U+3030 WAVY DASH *5


2. プロポーショナルグリフが望まれる文字  *1
従来正立だったものが回転になるに従い欧文扱いになり、プロポーショナルが期待される文字
ギリシア文字
キリール文字
算術記号(ただし、ヒラギノは現在でもプロポーショナル)
矢印の一部など
このカテゴリの文字のリストは、私がメーリングリストに 7/19 に出したメール 「縦書き字形の問題:アプリケーションの動作」の「まずは InDesign で正立するが、UAX#50 では横転する文字たちです」セクションにあります。


3. 使われない vert
これらの文字はUAX50アプリケーションが横倒しにするので、vert は使われない
U+00B0, U+2010, U+2015, U+2025, U+2026, U+2032, U+2033, U+2190, U+2191, U+2192, U+2193, U+21C4, U+21C5, U+21C6, U+21E6, U+21E7, U+21E8, U+21E9, U+239B, U+239C, U+239D, U+239E, U+239F, U+23A0, U+23A1, U+23A2, U+23A3, U+23A4, U+23A5, U+23A6, U+23A7, U+23A8, U+23A9, U+23AA, U+23AB, U+23AC, U+23AD, U+23B0, U+23B1, U+2500, U+2501, U+2502, U+2503, U+2504, U+2505, U+2506, U+2507, U+2508, U+2509, U+250A, U+250B, U+250C, U+250D, U+250E, U+250F, U+2510, U+2511, U+2512, U+2513, U+2514, U+2515, U+2516, U+2517, U+2518, U+2519, U+251A, U+251B, U+251C, U+251D, U+251E, U+251F, U+2520, U+2521, U+2522, U+2523, U+2524, U+2525, U+2526, U+2527, U+2528, U+2529, U+252A, U+252B, U+252C, U+252D, U+252E, U+252F, U+2530, U+2531, U+2532, U+2533, U+2534, U+2535, U+2536, U+2537, U+2538, U+2539, U+253A, U+253B, U+253D, U+253E, U+253F, U+2540, U+2541, U+2542, U+2543, U+2544, U+2545, U+2546, U+2547, U+2548, U+2549, U+254A, U+261C, U+261D, U+261E, U+261F, U+27A1, U+2B05, U+2B06, U+2B07, U+FF1D


注
*1: 変更に対しては、元のグリフを得るための適切な OpenType テーブルを加える必要があるかもしれない。

*2: UAX50 では全角コロンに合わせて vert を加えて回転にしている。が、縦書きでの確立された用法がなく、中国語、韓国語でも現在成立のまま。よって vert を加えず正立のままも許容

*3: ただし、この文字の使われ方を考えると縦書きで回転するのが適切に思われる。その場合、vert を取り除かないことで回転を達成できる。同時に UAX50 の変更を提案すべきであろう

*4: この文字は絵文字としても使われている。文字名がハサミなため、フォントによって方向が異なる。絵文字的な文字と考えて、正立が合理的だと思われる。同時に、フォントによって方向が異なることの注意をユーザーに伝える必要があるかもしれない。

*5: Dash であるので UAX50 の期待通り回転が合理的だと思われる

———————————————————————————
上記変更を行わない場合の影響

vert を取り除かないと UAX50 の期待に反して回転してしまう文字
U+2016	双柱, DOUBLE VERTICAL LINE *3
U+2702 ハサミ *4

vert を加えないと UAX50 の期待に反して正立してしまう文字
U+FF1B	全角セミコロン, FULLWIDTH SEMICOLON *2
U+3030	WAVY DASH *5


・「プロポーショナルグリフが望まれる文字」に関しては全角のまま横転となるが、それ以外の問題はない
・「使われない vert」は残しておいても単に使われず害なし

———————————————————————————
UAX50 に合わせるメリット、デメリット

メリット
全ての対応が完了すると、どのアプリケーション & フォントの組み合わせでも同一の結果が期待できる
変更の内容の多くは国際化システムから見て合理的に思える

デメリット
メーカーは新しいフォントの開発が必要
ユーザーは新しいフォントへの総入れ替えが必要
一時的に不統一が拡大する。対応/非対応アプリケーション、対応/非対応フォント、の四つの組み合わせができる。

———————————————————————————
メリットを享受して、デメリットを少なくする一つのアイディア

UAX50 の最小限の変更、もしくはUAX50からの最小限の逸脱で、vert に関わる変更を不要とし、対応を不要とする方法

U+2016	双柱, DOUBLE VERTICAL LINE 
現在のアプリケーションの互換性:InDesign は vert を使わず回転。ブラウザはブラウザとフォントの組み合わせで複雑にバラバラ
→ フォントの変更なしで回転を追認 (UAX50: U→R or Tr)

U+2702	ハサミ
現在のアプリケーションの互換性:InDesign は回転? ブラウザとフォントの組み合わせで複雑にバラバラだが U+2016 の方向と同一
→ フォントの変更なしで回転を追認。本来は正立が望ましいが、レガシーとして現状追認(UAX50: U→R or Tr)。もしくはこの文字だけは移行による混乱を許容して、vert を取り除いて正立させる

U+FF1B 全角セミコロン, FULLWIDTH SEMICOLON
現在のアプリケーションの互換性:InDesign 正立。ブラウザはほぼ正立。例外は Firefox。フォントに関わらず回転させる
→ vert なしのまま。正立を追認 (UAX50: Tr→U or Tu)

U+3030	WAVY DASH
現在のアプリケーションの互換性:InDesign 正立。ブラウザはほぼ回転。例外は Chrome。フォントに関わらず正立
→ UAX50 を Tr → R に変更することでフォントに関わらず回転させる。もしくは、vert なしのままで正立を追認

「プロポーショナルグリフが望まれる文字」については対応アプリケーション側で回転にするので、フォントが対応する必要なく回転になる。

長期的には「プロポーショナルグリフが望まれる文字」についてプロポーショナルに移行
———————————————————————————

Received on Monday, 16 August 2021 13:22:35 UTC