Re: 日本語文脈中のアルファベットや記号類の扱い

矢田さま、
小林龍生です。

打てば響く。
日本の学界における、句読点研究が手薄だということが分かっただけでも、大きな収穫です。
私見ですが、このことって、日本語の正書法が(公的な規準がないために)あいまいなまま来てしまっていることと無関係ではないように思えます。

関心を持っていただけるようであれば、(ほぼ隔週で)オンラインミーティングを持っているので、一度、ゲストで入ってみてください。高田さんもよろしければ。

2020年12月18日(金) 9:49 <yada@boz.c.u-tokyo.ac.jp>:

> 小林様
> cc.高田様
>
> 本当にお久しぶりです。
> もろもろお話ししたいところですが、取り急ぎ本題に。
>
> 日本語に記号類の研究が少ないのは、以前から常々思っていた所で、
> おっしゃる通り、『句読点、記号・符号活用辞典』が出て、漸く一つ
> ちょっとまともなものが現れた、というのが実態だと思います。
>
> 英語圏では伝統的にpunctuationは重視されていて、
> その歴史を扱ったものに、
> Parkes,M. B., Pause and Effect : Punctuation in the West,
> Ashgate,Burlington, 1992.
> という優れたものがあります。
>
> 中国語では2002年に相次いで2つの専書が出ました。
> ・管錫華『中国古代標点符号発展史』巴蜀書社2002
> ・袁暉・管錫華・岳方遂『漢語標点符号流変史』湖北教育出版社2002
>
> 日本語では、
> ・磯西忠吉『国語学新論』東京学友社1938
> は、「国語学」を銘打ちながら、半分ほどは句読点・句読法に割いている特異なもの、
> ・杉本つとむ『日本語講座4 語彙と句読法』桜楓社1979
> ・『アステ』4・1986「特集 句読点」
> あたりが参考になるでしょうか。
> 個別論文では、
>
> (カギカッコについて)
> ・大熊智子「引用符を用いた会話文表記の成立」
> 『東京女子大学日本文学』84・1995
> ※家に帰ればコピーがあるのですが、ずっと関西で仕事していて。すみません。
>
> (くの字点について)
> ・中田祝夫「仮名畳用符号の沿革」
> 『古点本の国語学的研究 総論篇』講談社1954
> ・小林芳規「踊字の沿革続貂」『広島大学文学部紀要』27-1・1967.12
> http://doi.org/10.15027/24915

>
> は必読です。
>
> 以下、頂いた内容について。
> >・《くの字点》は、JIX X 0213にもユニコードにもあるが、そのそも《くの字点》を横組で表記するのは、どうすればいいのだろう。
> >⇒ぼく個人としては、横組でくの字点なんか使うな、繰り返しをそのまま開いて表記しろ!という立場。
> 同感です。古典研究のためのテキストファイルではよく「/\」としますが(「\/」とする人もいたりしてややこしい)、
> それは例外的な必要性として、上記小林論文でも分かるように、縦書きだからこそ生まれてきた記号で、
> どうしても横書き・踊り字表記にしたいなら起源に戻って、「やれゝゝ」か「やゝれゝ」かにするしかありません。
>
> >・縦組み専用の飲用符号と考えられているダブルミュート(〝〟)が、横組で出て来たらどうするか
> 「縦組み専用」でしょうか?
> 「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」1946では、横書き専用の記号としています。
> (参考)
> ・文化庁国語課『国語表記の問題(国語シリーズ56)』1963
> http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/series/56/56.html

>
> >・縦組み柱に、IBMといった固有名詞がでてきたらどうするか
> これは、私にはちょっと判断ができません。国語学よりも、やはり印刷の方面の専権事項でしょう。
>
> >・「わたしはΑでありΩである」といったときの、《Α》や《Ω》は、日本語なの、それともギリシャ語なの
> すみません、よく分かりませんでした。
> >・「ぎゃ〜、助けて」の《〜》って、いったい何なのさ。「ぎゃー、助けて」ではいけないの
> これがいつ頃からある習慣なのか、私には全く知識がありません。
> 自動販売機の「あったか~い」もありますよね。声の抑揚を視覚的に表したのでしょうが...。
>
> これから授業です。まずは、ここまでで失礼します。
> なにか付け加えることを思いついたら続便で。
>
> 矢田 勉
>
>
> 2020年12月18日 08:56, "小林龍生" <tlk@kobysh.com
> <tlk@kobysh.com?to=%22%E5%B0%8F%E6%9E%97%E9%BE%8D%E7%94%9F%22%20%3Ctlk@kobysh.com%3E>>
> wrote:
>
> 矢田さま、高田さま、
> 小林龍生です。
> ※高田さんのアドレスが違っていたので、再送。先のメールは、捨ててください。
> ご無沙汰しています。コロナ禍の中、いろいろ大変なことと拝察します。
> いささか漠然としていますが、ちょっとご教示いただきたいことが。
> 現在、W3Cの国際化活動の一環として進められているJapanese Requirements for Japanese
> Language(JLreq)というタスクフォースに係わっています。このタスクフォースで、長い間懸案となってきた日本語文脈の中での記号類(非漢字)の扱いについて、検討を進めています。その過程で、どうも、日本語文脈の中の記号類を、短兵急に、欧文の(ユニコードの)記号類に当てはめてしまったことが、混乱の根っこにあるのではないか、という疑念に逢着しました。そこで、この際、一度、ユニコードの符号位置との関係を横に置いておいて、日本語文脈の中での記号類の扱い/振る舞いについて、整理してみてはどうか、ということになりました。
> ここからがお願いの段。
> そもそも、記号類(いわゆる約物)の扱い方/振る舞いについて、日本語の表記史といった観点からの研究といったものは存在するのでしょうか。
>
> 実務に近いところでは、小学館の「句読点、記号・符号活用辞典」が大いに参考になっていますが、やはり、実務家(校正・校閲を専門とする編集プロダクションの経営者)の手になるもので、現状の混乱に引きずられているところが散見されます。
>
> https://www.amazon.co.jp/%E5%8F%A5%E8%AA%AD%E7%82%B9%E3%80%81%E8%A8%98%E5%8F%B7%E3%83%BB%E7%AC%A6%E5%8F%B7%E6%B4%BB%E7%94%A8%E8%BE%9E%E5%85%B8%E3%80%82-%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E8%BE%9E%E5%85%B8%E7%B7%A8%E9%9B%86%E9%83%A8/dp/4095041765

> ぼくたちが、直面している具体的な問題点を、いくつか挙げておきます。
> ・《くの字点》は、JIX X
> 0213にもユニコードにもあるが、そのそも《くの字点》を横組で表記するのは、どうすればいいのだろう。⇒ぼく個人としては、横組でくの字点なんか使うな、繰り返しをそのまま開いて表記しろ!という立場。
> ・縦組み専用の飲用符号と考えられているダブルミュート(〝〟)が、横組で出て来たらどうするか
> ・縦組み柱に、IBMといった固有名詞がでてきたらどうするか
> ・「わたしはΑでありΩである」といったときの、《Α》や《Ω》は、日本語なの、それともギリシャ語なの
> ・「ぎゃ〜、助けて」の《〜》って、いったい何なのさ。「ぎゃー、助けて」ではいけないの
> 脈絡もない雑駁な例ですが、ぼくたちの関心の拡がりは、何となくお分かりいただけたかと。
> お忙しいことは重々承知。速答可能な範囲でお返事いただければ幸甚です。
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Received on Friday, 18 December 2020 01:46:07 UTC